本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「第二音楽室」佐藤多佳子
第二音楽室―School and Music
第二音楽室―School and Music
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,500
  • 発売日: 2010/11
  • 売上ランキング: 8208


佐藤多佳子さんの久々の新作、二冊連続刊行だというのでとても楽しみでした。
いろんな作家さんの本を読んでますが、老若男女誰にでもお勧めできる作家さんって、
いそうであんまりいないんですけど、佐藤さんの本はほんま誰にでも薦められますね。
教科書にも採用されているようだし児童書が多いのもあって若い人にももちろんだし、
私みたいな30代以降の世代にも。若かったころを経験したことのある人なら、
佐藤さんの作品に出てくる少年少女たちに、きっと共感できると思うのです。
となると、誰にでも薦めたくなりますよね。すごい作家さんです。

今回の連続刊行の2作品は、音楽、しかも学校でやっていた音楽、がテーマ。
小学六年生のおちこぼれピアニカチームが集まる「第二音楽室」という短編を皮切りに、
ここでおさめられている4つの短編には、連作短編ではないけれど、共通点があります。
音楽室が舞台なこと、そして、素敵な合奏で締めくくること。
リコーダーだったり、デュエットだったり、ピアニカだったり、ロックだったり、
楽器もジャンルも様々だけれど、誰かと音をあわせるという喜びを、
存分に思い出させてくれる、素敵な短編集でした。

作品タイトルの下に数字が書いてあるんですけど、それがその舞台の年代だと思うのです。
で、すごいなと思ったのが、時代によって一人称の文体が全然違うのよね。
現代が舞台だと今の若い子(とか書いちゃうともう年だけどね)の言葉づかい、
ちょっと昔が舞台だと、私が若いころに思っていたような言葉づかい。全然違う。
その書き分けってすごいなあ、と思うんだけど、それでも、現代でも昔でも、
その物語の本質は変わってないんだよな。いつであっても、音楽室は素敵な場所で、
誰かと音を合わせるというのはすごいことなんだ、と素直に思える。

私は音楽をずっとやっていて、今でもやっている。こんな大人になっても、
音楽を、それもいろんな人と音楽をやれているというのは、本当に幸せだと思う。
でも、数えきれないほど合奏してきたけど、その時その時の合奏は、1回きりなんだよね。
二度と同じ演奏はできない。高校の時のあのメンバーと、中学の時のあのメンバーと。
同じ曲をやったとしても、あのメンバーとやったたった一回の合奏が、どれだけ貴重だったか。
それをこの短編集は思い出させてくれました。
その時その人と合わせる演奏は、毎回奇跡のような演奏なんですよね。
当時の私に教えてあげたかった。今の私がそれに気付けてよかった。そう思います。

どの短編もお気に入りなんだけれど、一番よかったのは「FOUR」かな。
リコーダー四重奏をするために集められた4人組の、恋の話なんかも織り交ぜつつ、
その4人でのたった1回の本番の演奏が忘れられないものとなる物語。
大好きなあの人と、そしてこの仲間と、今この演奏ができる幸せ。その幸せに満ち溢れていました。

「裸樹」という短編は現代が舞台で、引きこもってしまった過去がある少女が主人公で、
高校で友達を作るために無理をし続けている子なんだけど、そんな中でこじれてしまった
友達とでも、音でつながれるんだな、と思う。主人公も自己嫌悪に陥るし、
完全にいい終わり方ではないけれど、大団円じゃないところも、リアルだし、
だからこそ好きだなあと思いました。
裸樹の歌も、一度聞いてみたいなあ。素敵な歌詞です。まっすぐ伸びていけそうな。

「デュエット」の、二人で合わせる声のすがすがしさ、そして「第二音楽室」の
落ちこぼれピアニカ組の演奏。すべてが素敵で、温かくなって、
いろんなことを思い出して、じんわりと涙しました。
いつか合奏した、あの人たちは、元気でやっているのかな。
もうあのころには戻れないけど、そんなことを思いました。

出会いも合奏も、この瞬間も一度きりです。大事にしようと思いました。
音楽をやっていたとかそういうことには関係なく、誰が読んでも、
昔を思い出して、何か温かいものが残ると思います。素敵な短編集でした。
| comments(0) | trackbacks(1) | 02:15 | category: 作家別・さ行(佐藤多佳子) |
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「第二音楽室―School and Music」 佐藤 多佳子
「第二音楽室―School and Music」は、音楽と学校をテーマにした短編小説集。舞台も年代も違う、4つの音楽にまつわるストーリー。 音楽に関する知識はなくても、音の表現や、子供たちの学校生活の描写が楽しくて物語に惹きこまれてい行きます。こうして改めてリコー
| 日々の書付 | 2013/03/02 2:57 AM |
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