本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「放浪記」林芙美子
放浪記 (新潮文庫)
放浪記 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 780
  • 発売日: 1979/09
  • 売上ランキング: 30919


桐野夏生さんの「ナニカアル」を読んで、ああこれは「放浪記」読まないとな、と
「ナニカアル」の世界を深めるつもりで購入。「浮雲」も購入済み。
本をこれだけ読んでても、やっぱり文豪、とか言われてる人の本は敷居が高く、
恥ずかしながら林芙美子氏も初めてだった。夏目漱石はけっこう読んだのに、
私の時代と近い昭和に生きている林芙美子や太宰治や三島由紀夫を
まだまだ読めていないってのは何故だろう。別に時代は関係ないか。

「ナニカアル」では、作家になって有名になってから戦地に出向いた頃の
林芙美子が描かれていたが、この「放浪記」は有名になるまでの極貧生活が
赤裸々に描かれていて、同一人物として想定しづらかった。
もちろん桐野夏生の方はだいぶ創作が入っているのはわかってるんだけど。

人の日記がこんなに読みづらいとは!かなり苦心しました。
文章が苦手なわけではない、むしろ好きな方なのですよね、リズムや潔さがあって、
日記だけど文学。だけど読みづらかったのは、時系列がどうもばらばらのように
思えることがまず要因かなあ。○月○日、のように日付は常に伏せられていて、
読んでいるとどうも前後していたり戻っていたりしていそうだ。
それに、いきなりお友達が登場するけれど前後の説明がないのでだれかわかんない。
いかに自分が普段親切丁寧に解説されている小説を読んで甘やかされてきたかが
よくわかる読書経験だった。2週間くらい読んでたし、他の本の図書館返却期限が迫り、
一旦読むのをやめたほどだ。挫折寸前だった。

で、そんな風に何も特定できないほど、林芙美子さんは放浪している。
ある時は東京でカフェの女給(今のカフェ店員とは違う仕事っぽい)、ある時は心の故郷の
尾道に行き、別れた男のいる島に渡ったりしている。ある時は役者の男に未練があったり、
詩人の男に未練があったり、恋人がDVだったり、恋愛遍歴も様々。
共通してるのは極貧ってこと。常にお金に困ってて、明日からどうしようと思ってる。
で、なんかいつも切羽詰まってる。恋も仕事も。もっともっと有名になりたい、稼ぎたい、
お母さんにいい思いをさせてやりたい、幸せになりたい。
そんな渇望が文章全体から溢れている。
詩はほとんど読まないから彼女の詩がどう、とかはよくわかんないんだけど、
詩からも充実感がみなぎる感じがした。

これだけ貧しくてこれだけどんづまりで、でも林芙美子は絶望しながらも、
いつもはい上がろうとするすさまじい気力を持っている。
とにかくどん底で、死にたいとかいつも思ってるのに、それでいて暗くはないんだよね。
「死にたい・・・」としょんぼりするんじゃなく、「くそ、死んでやるぞ!!」みたいな。
これは例えだけど、そんな感じ。いつもあらがってる。戦ってる。何かと。

井戸の底から叫んでいるような、圧倒的パワーを感じる。
時系列がわからなかったり流れがつかめなくても、その気力を吸い込むだけで、
読む側にもふつふつと、力が沸いてくるのだった。

この極貧時代に鍛え上げた精神力が、彼女を戦争にも行かせたんだろうし、
戦後にたくさんの作品を書かせたんだろう。
彼女のそのパワーがどこまで昇華されていったのか、戦後の作品「浮雲」も読んでみようと思う。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:31 | category: 作家別・は行(その他の作家) |
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