本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ツリーハウス」角田光代
ツリーハウス
ツリーハウス
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,700
  • 発売日: 2010/10/15
  • 売上ランキング: 3295


角田さん久しぶりだなあ、と思って前に読んだ記録を調べたら2007年だった。
読んだのは「八日目の蝉」、そうか、それが傑作すぎて次が読めなかったんだった。
あまりにすごい作品に出会うと、その作家さんの他の本を読みたくなくなることが、
私にはある。「白夜行」読んだあとしばらく東野圭吾を読まなかった気がするし・・

まあそういうわけで久しぶりでしたが、この作品は発売前からツイッターで評判で、
これだったら「八日目の蝉」の素晴らしさを思い出しつつ読めるんじゃないかな、と思って手に取る。
そしてその予感は見事当たりました。「八日目の蝉」と並び立つ傑作。

とはいえ、最初はそこまで思わなかったんだけど。
藤代家の次男の良嗣はふらふらと家にいるのだけど、ある日祖父が目の前で亡くなり、
葬式の場では長男の基樹がふらっと帰ってくる。
藤代家は「翡翠飯店」という中華料理店をしてるけど、家族全員が、
なんだかふらふらとしている印象が、良嗣にはある。
でも、祖父と祖母が戦後に満州から戻ってきたと知り、彼は祖母と叔父と、中国へ行く。
彼らの旅と、戦中からの藤代家の歴史が交差していく、長編小説だ。

ふらふらした良嗣がいかにも現代風だったし、叔父も家にいるし、
確かに藤代家は落ち着きがない感じで、軽い印象を持ちながらも、
なんとなく引き込まれて読んでいった。読んでいくうちに、どうして彼らが
これだけ軽い感じなのか、じわじわと身にしみてくる。そこからが、重い。

日本を捨てて満州に渡り、そして満州から戻ってきた祖父と祖母。
故郷も捨て、日本に戻って見知らぬ土地で一からやり直すしかなかった二人。
祖父と祖母のそんないきさつが、藤代家には根づいているのか。

ショックだったのは、戦争を生き延びたことを「逃げた」と思ってること。
確かに逃げたかもしれない、でも生きて、翡翠飯店を開店させて、
家族もいっぱいできて、一見大家族なのに、でもやっぱり逃げたと思ってる、
そんな祖父母は、戦後を生き延びた日本人の代表ではないのかな。
立ち向かった人たちは死んでいった、でも自分たちは生きている・・・

もしかしてこの時代を生き抜いた人たちには、多かれ少なかれ、
そんな感情が残っていたのではないのか。
そう思うと急にものすごく哀しくなった。私にはそんな気持ちわからないし、
生きてなんぼだと思うけれど、当時の人はそう思えたんだろうか?
そんな風に戦後を見たことはなかったけれど・・・・。
多かれ少なかれ、藤代家が感じているような、根なし草のような感覚、
それを感じて生きていっていたのかな。そう思うと辛すぎるし哀しい。

たかが中華料理屋の家族の話、ではあるんだけど、そんな風には読めないのです。
なんか、私たちの物語を読んでいる気がしたのです。
小説の台詞にありますが、「壮大な貧乏食堂の物語」、小さな一家族の物語なのに、
あらゆる家族の物語のように思えてくるのです。

祖父、そして父、そして良嗣。三世代の人生が描かれていって、
戦後の時代を騒がせた出来事も、この家族には関係していきます。
戦後の波にのまれて、高度成長期で翡翠飯店も繁盛し、バブルがはじけると
客がこなくなり・・・、彼らは時代に巻き込まれていって、
けっこういろんな目に遭います。平凡な家族というには波乱万丈な、
でも、不器用でダメな家族たち。

最後の祖母の台詞で、号泣をこらえました。
三世代がどうしてこうなったのか、祖母は語るけど、
祖母の思いは哀しすぎるし、祖父母のせいとは思えない、それは時代のせいだ、
私はそう言ってあげたかった。

でもね、根っこがなくても、ちゃんと葉もあって、実も結ぶ、
そんな家族でいいと私は思うし、この小説も最後にはそんな家族の在り方を
やさしい目で肯定しているような気がして、それにほっとした。

あとからじわじわとくる(感想書いてて泣きそうになった)、傑作です。
| comments(0) | trackbacks(1) | 00:07 | category: 作家別・か行(角田光代) |
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「ツリーハウス」角田光代
祖父母が知り合った満州で何があったのか。 新宿にある翡翠飯店の年代記。第22回伊藤整文学賞。    【送料無料】ツリーハウス [ 角田光代 ]価格:700円(税込、送料込) 祖父泰造の死後、孫の良嗣は祖母と旧満州を旅することになった。 そこは祖母のヤエを連れて祖
| りゅうちゃん別館 | 2013/12/12 4:33 PM |
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