本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「甘い水」東直子
甘い水 (真夜中BOOKS)
甘い水 (真夜中BOOKS)
  • 発売元: リトル・モア
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2010/03/08
  • 売上ランキング: 243492


東直子さんは歌人です。でも小説も書いています。
歌人だからでしょうか、関係ないのでしょうか、なんか文章がね、
とても好きなんですよね。
この「甘い水」、つかみきれなくて何度か手にとって読んだんだけど、
読むたびに、ほんますうっと引き込まれて、体の中に沁みこんでいくような、
まさに「甘い水」な感じの、文章なんです。
ひらがなが多くて、けして凝った文章でもないし、何がどうってわけでもないけど、
とにかくそういう文章で、なのでいつも自然に、すうっと作品に入って行けます。

物語は、非常に書くのが難しくて、・・・無理だな。
地下の一室に閉じ込められて、甘い水だけを飲んで暮らしている人たちとか、
ちいさいひとが住んでいる島とか、市長の息子と妻が入れ替わっている話とか、
隣同志の椅子に座っていたフランと仲間の話とか、
えーっと、いろんな小さな物語が、交錯していきます。
なにか、全体として、どこかでつながっているような、円環を描いているような、
描いていないような、なんといっていいのか、つながってるような気もする、
でもよくわからない。そんな物語です。説明なんか野暮だな。

共通しているのは甘い水を飲んで人が生きていること。かな・・・
いや、共通しているのは、登場人物たちには、記憶がない、ということかな。
その世界にどうして自分がいるのか、わからないままに、人々は、
役割をこなしている。たとえば市長の妻とか、「十五番目の水」とか。
でも時々、自分自身の記憶が混じる時がある。
その瞬間がなんだかとても切なくて、哀しい。

物語は、すうっと沁みこむ文章で、淡々と続き、それは美しくって、
静かな感じがある。心が静かに哀しくなっていく。
そんな深みにひきこまれるような、とても不思議な物語なのだ。

ちいさいひとたちの生き残りのミトンさんのお話を読んでいると、
甘い水のことが、ちょっとわかる。わかるとまた、それは切ない。
でもね、なくしてしまった記憶や思いは、どこかで残って、
また円を描いてつながっていくのかもしれないなあ、なんてふっと思って、
切ないけど、温かい気持ちにもなれた。

うまく言えないのでとにかく読んで、と言いたいなあ。
けっこう、何度も、ぱらぱらとめくっては、読んでしまう、そんな本です。
東さんの不思議小説は、この文章の吸引力に惹かれて、
また読んでしまうと思います。そして感想に、困るんだけど、いいのです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:13 | category: 作家別・は行(東直子) |
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