本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「パストラリア」ジョージ・ソウンダース/法村里絵訳
パストラリア
パストラリア
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2002/12
  • 売上ランキング: 233558
  • おすすめ度 4.5


岸本佐知子さんの「変愛小説集供廚鯑匹鵑栖響にも書きましたが、
「変愛小説集供廚念貳峭イだった短編「シュワルツさんのために」を書いたのが
このジョージ・ソウンダースさん。ということで、彼の短編集を読んでみました。
岸本さんのおかげで、またいい出会いができました。うれしいです。
「シュワルツさんのために」は、ちょっとSFっぽい近未来、
記憶を切り売りする男が、シュワルツさんというおばあさんのために
してあげることとは・・・といった、ちょっと不思議でシュールで、
でもなんだかすごく哀しくって温かい、そんな短編だったのですが、
この短編集でもその味わいは基本的には変わらなかったです。
ちょっと不思議な不条理な世界で、シュールで突拍子もないけれど、
ぎりぎりコメディにならない、むしろ笑える設定が悲しみを誘ったりする。
でも最後には、温かいものが残るような。そんな短編集でした。

印象深い短編をいくつか。

「パストラリア」
客のこなくなったテーマパークで、原始人として過ごす仕事をする男女。
毎日、ヤギが丸々送られてきて、それを原始人のように食べて、洞窟に壁画を描いて、
一言も話さずに過ごす仕事を、客もいないのにまじめにやっている男と、
家族の問題を抱えて話さずにいられない女。
彼らには男女関係はないけれど、友情はある。でも、パークもリストラが進んでいて、
彼らは監視されていて・・・。

一見、ヤギを丸々食べてたりとすごく不条理な世界なんだけど、
物語の根底は今のサラリーマンの悲哀と変わらない。
そんな中、相棒に感じている友情と自分の都合で揺れ動く男の心理が絶妙で、
ラストは哀しく、でもシュールでもある。

「ウインキー」
新興宗教にはまり、たった一人の妹を排除しようと考える男。
新興宗教の集会がまたシュールで突拍子もないのだけれど、
彼が結局どうするかを読んでいると、哀しくなるけれど、でも人ってやっぱり、
信じていいのかもと思いました。

「シーオーク」
一番不思議な話で、一番身につまされる話でもあった。断然よかった。
ストリップみたいな仕事をして稼ぐ男と、働かない妹やその子供たち。
そしてバーニィおばちゃんは、結婚もせず子も生まず、何も生みださずに、
でも明るく笑って生きてきた。そんなおばちゃんが人生で何を思っていたのか?
おばちゃんの本音が怒涛のように押し寄せるシーンに身につまされた。
私は何も生み出していない、おばちゃんの台詞は私の台詞でもあった。
でもおばちゃんは明るく生きて、最後の最後まで、死んでまでも人のために生きて、
結局とてもいい人だったんじゃないか。それで何が悪いんだろう。
おばちゃんの悲しみが胸に深く突き刺さりながらも、突拍子もない設定が、
どん底になるのを防いでいて、また最後の余韻は、いっそさわやかだった。
不思議な物語だ。

あとは「床屋の不幸」もそうだし他の短編どれもそうだけれど、
人生に負けた人々が主人公。そして彼らは負けているし、弱いところもたくさんあって、
人って弱いなと思わされる。でもその弱さが、結局温かさに転化されていく。
弱くて哀しいし時に滑稽だけれど、最後にはやさしい人たちの姿が身にしみてくる。

派手さはないけれど、じんと胸に沁み入るような、でもシュールな、
不思議な短編集でした。あまり読んだことのない感覚でした。

やっぱり岸本さんの目の付けどころは違うな、素晴らしいなと思います。
これからもついていきます。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:41 | category: 海外・作家別サ行(その他の作家) |
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