本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< June 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 「ナニカアル」桐野夏生 | main | 「へんないきもの」早川いくを 絵・寺西晃 >>
# 「リアル・シンデレラ」姫野カオルコ
リアル・シンデレラ
リアル・シンデレラ
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2010/03/19
  • 売上ランキング: 11394
  • おすすめ度 5.0


さすがにこの本は電車ではカバーをかけて読みました。すごいインパクト。

この本が候補にあがった直木賞、結局受賞はできなかったけど、
その時の選評を林真理子さんがコメントしている報道があって、
他の作品はそこそこ語ってたのに、この作品だけコメントが1行、
「推す人もいたが、賛否両論があった」的なそっけない感想だったので、
「あ、林さん、この本嫌いだな」と勝手に思ったのだけれど、読んでみてわかった。
恋愛至上主義的な印象のある林真理子さんのとは対極にある小説だもんね。
世の中、恋をしよう、結婚しよう、的な恋愛歓迎モードがちょっときつすぎて、
私みたいなおひとりさまは閉口してしまう時がある。
もちろん結婚して子育てするのが人生だと思うし、そりゃ私だって恋愛して楽しくなりたい。
けど、それだけじゃないやん?人生。って思うときもあるわけです。
友達と遊ぶだけでも楽しいし、仕事は楽しくなくても趣味だって楽しいし。
でも、恋愛、結婚はしないといけない、しない奴は不幸、みたいな空気がひしひしと迫り、
なんだか息苦しい世の中だなあと時々思うわけですよ。
でもね、息苦しいとは思いつつ、やっぱり恋もしてみたいし、恋愛なんかいらない、
一人で生きていきますわ、と達観できるほどの覚悟もない。そんな微妙な心境なわけです。

そんな私には姫野カオルコの作品が一番です。
結婚とか、恋愛とか、そういうのじゃない人生、そんな人生を送る女性たちがそこにはいます。
特にこの作品は、姫野さんの哲学というか思いというかが色濃く出ている気がします。
「シンデレラ」から想像するイメージとはかなり違う物語で、このタイトルの
センスとこだわりも、姫野さんだなあと思いました。
人は選ぶと思いますけど。私は、泣きました。

ライターが現代風シンデレラを探す、というテーマに挑戦していたら、
長野県のとある温泉旅館に産まれた倉島泉という一人の女性の姿を書いてみればどうか、と
紹介された。ライターが、彼女の関係者から話を聞きながら、彼女の人生を再構成していく。
そんな風にこの本は綴られている。

倉島泉。いずみと書いて、せん、と読む。旅館「たから」の長女。
妹が産まれ、妹は病弱で美しかった。親も世間もみんな妹をかわいがり、
更に年をとるにつれ数々の不幸が泉には襲いかかるが、
あまりにも自分の不幸を気にしない泉に、泉の不幸を呼んでおきながら不気味がる人がいる。
それで、泉を調べる人も現れる・・・

そこにいるのはあまりにも現実離れした、おひとりさまの私にも理解の範疇を超える女性。
恋愛というものに罪悪感しか持てないような、男性とどう接していいかわからないような、
それに自分の不幸もものともせずに、けろっとして仕事に邁進するような。
いつも農作業をしていて、日焼けした肌で手は皺だらけ。
旅館の女将の立場にもなれるはずなのに、農業のおばちゃんと呼ばれる生活。欲のない生活。

彼女は何を思って生きているのか。他者が語るため、本人が何を思っているのかがわからないのだが、
それが徐々にわかってくるラスト。子どもの頃に、秘密基地で彼女がお祈りしたこと、
お祈りは全て叶ったと彼女は言った、そのお祈りの中身がわかった時に、一気に涙が出てきた。

幸せなんて、人に決められるものじゃない、自分が何を幸せと思うかだよね。
結婚して子ども産んで普通の人生が幸せという人もいるし、そうでない人もいる。
倉島泉もそうじゃなかっただけ。だけど、彼女が両親から普通に愛情を受けて育っていたら、
かわいい妹がいなかったら、・・・そんなことも思ってしまう。
泉が自分なりにつらい気持ちを整理して、前向きに生きようと願った結果、
自分なりの幸せをつかむことができた。そのけなげさを思うと泣けてくるけど、
こんな人生で何が悪いの、誰が泉を不幸だったと言えるの、と強く思った。

幸せって何だろうね。世間一般の人が幸せと思う生活、にたどり着けたら
幸せになれた、っていう感覚って誰でもあると思うけど、自分が何を幸せと思うか、
その信念の通りに幸せを得られるんだったら、それが本当だと思うのです。

私は泉ほど気持ちを強く持てないし、やっぱり世間一般の幸せに引きずられてしまうから、
こんな前向きな人生は叶わないけれど・・・。同じ女として、いろいろ考えさせられました。

姫野さんも、世間一般的に売れる本を書くんじゃなくて(これも万人受けする小説じゃない)、
自分のスタンスを貫いているところがとてもステキだと思います。
この視点は姫野さんだけのものだと思うし、似た作家さんも思いつかない。
女の幸せ、について、いつも独特の視点で教えてくれる人。
女の幸せって、恋愛でも結婚でも子育てでもなく、だからといって、
男に負けまい、とがんばって成功するキャリアウーマンでもない。
どちらにもなりきれない私は、姫野さんの描いてくれるものは、とても安心します。
その分、つらくて痛い部分もあるけれど、それでも読み続けていたいです。
| comments(1) | trackbacks(0) | 01:46 | category: 作家別・は行(姫野カオルコ) |
コメント
はじめまして。
姫野作品の「痛い部分」、分る様な、気がします。
倉島泉はその「痛い部分」を乗り越えてしまった人。
「あぁ、自分も幸せになれるかもしれない」。
密かにそんな希望を抱かせる十五夜のお月様のような人。
| ナナシノ カズタカ | 2011/08/23 6:37 AM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/948680
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links