本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」
ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2008/10/31
  • 売上ランキング: 42203
  • おすすめ度 4.5


源氏物語を新たな解釈で9人の作家が競作した、9つの新しい「ゲンジ」。
島田雅彦氏のツイートで知った本。
「源氏物語」自体、私はあまり通しで読んだことはなく、「あさきゆめみし」を
昔読んだような読んでないような、くらいの認識しかないのだけれど、
先日「千年の黙」も読んだし、最近は少し興味があるので、
ちゃんとした翻訳ではなくて、新解釈のこれを読んでみる。
島田さんのツイートをみたくせにあれなんだけど、町田康目当てで手にとった。
9通りの源氏物語は、原典を知らない私からしても「これはほぼ翻訳?」と
思うのもあり、全く新しいだろうと思われるのもあり、現代に舞台を移したものもあり。
バラエティ豊かで楽しかった。
現代風なのも、はちゃめちゃなのも、めちゃくちゃなようで原作には忠実に、
その「忠実」という縛りの中で存分に作者の個性が出ているような作品ばかりで、
どれだけ同じテーマで書いても、作家の個性というのはこれだけ色濃く出るのだな、と
それがすごく面白かった。

そんな中でも、あまり翻訳めいたものには興味が持てなくて、やっぱり面白かったのは
断然町田康だった。何を書かせても町田康。源氏物語ですら町田康。
しかも選んだのは「末摘花」。これ、原典知らない私が読んでも異色な話で、
それをしっかり茶化しながら、ついでに源氏物語の世界観をほどよく茶化しながら、
案外真面目に書いている(と思う)。なのにどうしてこんなに笑えるのか。
町田康の文章が持つ破壊力はここでも健在であった。
笑って最後に脱力し、無に帰す。残るのは一抹のむなしさ。そんな読後感。
他の誰に書けようか。

他、現代風にアレンジされたなかでも2編、角田光代の「若紫」と小池昌代の「浮舟」も、
女性の濃厚な情愛が込められているようで、ぞっとしつつも堪能した。
源氏物語なんだから、男女の愛憎が描かれてないと嘘だと思うんだけど、
あまり他の作品にはそれを感じなかったような気がする。
ああ、桐野夏生の「柏木」もそういえば感じたような。しかし今回の桐野さんは、
私には端正にうつりました。
そうだ、江國さんのも彼女らしく、それでいて物悲しい物語でした。「夕顔」。

思い出してみるとどの作品もそれなりに印象深かったのだけれど、
町田さんが強烈でちょっと忘れていたふしがある。すいません。
でも、ひねくれものの私は、もうちょっとひねくれた解釈のものが
読みたかったなあと思ったりもして。ここに酒見賢一氏がいれば、
宮廷で歌を詠んで夜に男が忍んでくるようなこんな時代のことを、
けちょんけちょんに突っ込んでくれそうである。

なんか、今思えば次から次へと女へと渡り歩いて、誠実さのかけらもないような
源氏が、どうしてこの時代からずっともてはやされて、日本の名作みたいに
なってるんだろう。よく考えたら不思議な気がしました。
男と女の文化というのは、妖しくて深く、そして時代を超えて永遠に
私たちの共感を呼ぶのでしょうね。
だって私たちはずっと、そんなことに悩んだりしながら、生きていくのだからね。

楽しい企画でした。


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