本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「千年の黙 異本源氏物語」森谷明子
千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)
千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 987
  • 発売日: 2009/06/25
  • 売上ランキング: 190620
  • おすすめ度 4.0


ずいぶん前に読んでうっかり感想をかきそびれていました。
今回ざっと再読していいかげんな感じで感想を書くのだけれど、
やっぱりこれだけ面白かった本の感想は残しておきたいなと思って。
「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」というアンソロジーを読んだ記念に、
この本の感想も書いてみます。

森谷明子さん、恥ずかしながら「七姫幻想」とこれしかまだ読んだことがないのだけれど。
なじみのなかった平安時代を目の前に生き生きと描きだしてくれる、
私の知る中で唯一の作家さんです。
しかもこれがデビュー作とは恐れ入ります・・・。
帝のご寵愛の猫が消えてしまった・・・。その謎を解くのは、まだ幼いあてき。
彼女が仕えるのは、のちに源氏の君の物語という途方もない物語を書いてしまう
式部の家であった。
消えてしまった猫の謎、それから、消えてしまった源氏のある巻の謎に迫る、連作長編。

猫がいなくなる編の方でも、式部の推理はさえているし、
なにより少女あてきと岩丸との恋模様がとてもかわいらしくて素敵なのだけれど。
やはり印象深いのは後半の方で。

源氏物語って、私は系統立ててまだ読んだことがないんだけれど、
どうも、途切れている感じというか、描かれていないところがあるように
思えるんだそうですね。その、描かれていない巻「かかやく日の宮」、
この巻についての真相が作者の紫式部サイドから描かれていきます。

当時はもちろんコピーもないから、一冊一冊、あれだけ長い物語を
みんなはせっせと写本していってて、当時の貴族たちがこぞって物語を写し、
広めていく様子が、なんだかとてもいいなあと思えました。
こんなに不自由な時代でも、いやだからこそかな、こうやってひとつひとつの
素敵な物語を書きうつし、読み、話題にして心ときめく女性たち・・・。
こんな時代からずっと、私たちは物語を欲していたのだなあ、と思えるとうれしい。

大きくなった阿手木と式部は、いろんな人の話から、どうやら、一巻の小説が、
出回っていないことに気づく・・・。もちろんその謎の真相を解いていくのも
醍醐味なのだけれど、不完全な物語が広まっていると知ってしまった作者自身の、
葛藤と覚悟が描かれていて、その結末はなんだか背筋が伸びるというか、
恐れ入るというか、そういう読後感でした。
私は物語を守っていく、式部はそう決意するのです。何があろうと。
そして、源氏物語は、長い年月を経て、いまだに日本人の私たちに、
ロマンを与えてくれる。その物語が経た長い長い歴史こそがロマンであり、
私たちの読書、物語を読むということの長い歴史でもあるんでしょうね。

本読みとしてはぞくぞくするような物語でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:53 | category: 作家別・ま行(その他の作家) |
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