本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「少女外道」皆川博子
少女外道
少女外道
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,950
  • 発売日: 2010/05
  • 売上ランキング: 36213
  • おすすめ度 5.0


Twitterで確か桜庭一樹さんだったと思うが、皆川さんの新作のタイトルが
「少女外道」ってすごい、的なことを書かれていて、一気に興味を持つ。
(最近はTwitterで楽しそうな本情報を知ったり、作家の新刊を知ったりすることが増えた)
確かに「少女外道」はすごいタイトルだと思う。

皆川さんの作品には心引き付けられる何かがあって、でもがつがつ読むには
少し怖い作家さんで(理由はわからないが)、少しずつ読んでいる。
この新刊も、凄味のある短編集だった。一遍一遍に、凄味があって、
少しずつ少しずつ読んでいった。
この短編集の中には、すごく歪んだ、でも切実な愛の形がたくさんあって、
それが短編の中にぎゅっと詰まっていて、息苦しい。
そして、死の影がすぐそこにある。それは登場人物のすぐそばにいて、
息を吹きかけてくるような近さ。戦時中でも現代でも関係なく、
そこに出てくる人たちは、あまりにも簡単にその一歩を踏み出し、
すぐそこにある死の扉を開けてしまう。

その二つのイメージで息苦しくなりながら、全部の短編を読んでいった。
気のせいかもしれないしそれは全然露骨ではないイメージなのだけど、
すごくそのイメージにとらわれた読書だったように思う。

それから、現実からふと一歩先へ、死ではなく幻想の世界へ、
あまりにも簡単に世界は移ろう。
一瞬くらっとくるような、そんな幻想の光景を残して、物語は唐突に終わる。
終わってしまってから、私は息苦しさのなか、ぼんやりと余韻を味わう。
それは息苦しさを超える甘美な余韻、のような気がする。

なんていうか、感覚的な感想しか書けないようなそんな本。
短編集として、ひとつひとつの作品が終わっているような終わっていないような、
そんな余韻がすばらしくて、作品の完成度が非常に高い、とか、
そんなことこの本にとっては当たり前すぎて書くまでもないし、
理屈より感覚でこの余韻を味わっていたいような、そんな本なのでした。

戦時中の物語が多いのも一つの特徴なんだけれど、戦時中や戦後の生活が、
こんな感じだったんじゃないか、と書かれてる感じではなくて、
もうその場にいたかのように書かれている。
まあ、皆川さんが80歳を超えるご高齢なので当然かもしれないけれど、
戦中戦後の空気をこんなところでこんな風に味わえるというのは、
私みたいな戦後生まれには貴重な体験だ。
当時は死すらも日常であった、そんな日常が、さりげなく、でも確かに描かれている。

絵、がモチーフになっている作品が多かったけど、どんな絵か見てみたい。
そして、この作品集も芸術だな、と思う。
読んでて、読み終わって鳥肌がたった気がする小説というのも、なかなかない。

「標本箱」、「巻鶴トサカの一週間」、「隠り沼の」が好きだった。

またこの鳥肌が味わえるのかと思うと、皆川さんの作品は
いくらでも読んでいたいと思うのだけれど、でもやっぱり怖い気もするのでした。
| comments(1) | trackbacks(0) | 01:01 | category: 作家別・ま行(皆川博子) |
コメント
お久しぶりです!いい感じですね♪
これからも応援しています! 頑張って下さい!
| io | 2010/07/18 10:27 AM |

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