本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「道徳という名の少年」桜庭一樹
道徳という名の少年
道徳という名の少年
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2010/05/11
  • 売上ランキング: 12341
  • おすすめ度 4.0


普段、amazonの「なか見検索」とか利用したりしてないけど
この本はぜひ、なか見検索やってみてください。読まれてない方。
いかに美しい本か、ちょっとでもわかってもらえると思います。
本文ページのレースのような繊細な模様と色遣いがすばらしくてうっとり。
時折入る、あやしく美しいモノクロの挿絵にもうっとり。
大人のための、素敵で残酷な絵本、という趣です。素敵。

物語は、小さなおとぎ話のような短編が連なっていく連作短編集で、
どこの国かもわかりづらい世界で、第二次大戦のような戦争が起こっているんだけど、
戦争の生臭い匂いはどこか遠くに、でも確かに漂っているような街で、
ある一人の美しい女が、父が誰かわからないたくさんの子を産むところから、
物語ははじまります。

とても美しい少女たちを産んだ女は出奔し、戻ってきて、また少年を産みます。
少年だけは、バターのような黄色い目をしていましたが、やがて彼の子も産まれ、
少年には、「道徳(ジャングリン)」という名がつけられます。

「ジャングリン・パパの愛撫の手」という第二話がとても好き。
とてもかなしくてさみしい話だと思うけれど、一番官能的でもある物語で、
暗闇でほのかに見える腕の映像がまぶたに残るようでした。

バターのような黄色い目をした少年たちのまたその子供たちが、
バターのような黄色い目をして産まれ、その血脈が綿々と受け継がれていきます。
読者は彼らの祖父やその父がどんな人だったか知ってるわけだけど、
その子たちは知らない、でも彼らには何かすーっとひとつ、
筋が通っているような不思議な感じがして、それがあらがえない血の濃さを
表しているような気がしました。

そういえば私が読んだ桜庭作品は「私の男」も「ファミリー・ポートレイト」も
「赤朽葉家の伝説」も、どれも、親子の血がつながっていく様、を
哀しく切実に痛切に描いていて、それが印象的だったのだけれど、
今回のお伽噺のようなこの物語でも、その印象は変わらず残りました。
そういった感覚といい、この美しさや残酷さや官能といい、
この短い物語集は、桜庭さんのエッセンスが凝縮しているような気がします。

あっというまに読める本ではあるんだけど、なんともいえない不思議な、
ちょっとちくっととげがささるような、でも美しい花を見ているような、
不思議な感覚が残る本でした。

それにしても、男性はバターの目をしてて哀しい目に遭って、
女性は美しかったのにどんどん太っていく、
この血族のこんな風な血の流れは何を象徴してるんだろうか。
美しいものも永遠ではないということでいいんだろうか。
答えなんかないんだろうか。いろいろ思いながら読みました。

太ったお母さん、というモチーフは「ギルバート・グレイプ」の映像を
鮮烈に思い出させました。関係ないけれど。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:06 | category: 作家別・さ行(桜庭一樹) |
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