本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「警官の血」佐々木譲
警官の血〈上〉 (新潮文庫)警官の血〈下〉 (新潮文庫)


最近知り合った人が「俺警官になりたい」とか言い出して、何事かと思ったら、
「「警官の血」を読んだので」という。
え、警官って大変っすよ、っていうか大阪府警の警官ってむちゃむちゃ怖い人いるよね、
みたいな話で話がそれてしまったんだけど、そこまでいう本って、と思って読んでみた。

正直言ってこれ読んだからって警官にはなりたくない(むしろいやだ、大変だし)、
でもこの本はすごく面白かった。
戦後すぐの東京、谷中。働き口を探して警官になった青年、安城清二。
駐在所の巡査になって、妻と幼い子と駐在所で地元に根差して仕事をしたい、
そんな夢を持つ実直な警官。地元の上野公園の浮浪者とも顔なじみになっていくが、
そんな中、上野公園にいた青年が殺された。
その死の謎を少しずつ追っていく清二は、ある時五重の塔の火災で・・・。

その後、清二の息子の民雄、その孫の和也が、三代そろって警官になる。
そこに清二がかかわった事件がのしかかっていく・・・。
父の影響を受けながらも、それぞれの警官である彼らがとった選択は・・・。

父の清二の章は、まじめに警官の地道な仕事に打ち込む清二の姿に
普通の「いいおまわりさん」のイメージがだぶり、違和感なく読み進む。
清二の事件は引き継がれ、そのまま熱い感じで続くのかなと思った矢先、
民雄は過酷な潜入捜査に心をさいなまれていく。意外だった。
幼いころの父の思い出を持って巡査になろうとした民雄は、
実直な巡査とは程遠い、自分をも騙すような過酷な任務に就いている。
なんだろうこの小説、どんな先があるんだろう。と暗い気持ちになる。
どうして民雄は同じ警官なのに、父と同じ道を歩めないんだろう・・・

そうしながら読み進めていくと、民雄の代で歪み、和也の代でさらに歪んだかのような
彼らの「警官」としての道筋が、一本筋が通って行くのに気付く。
世間の正義も悪もない、彼らにとっての「正義」とは何か?
自分が何を正しいと思うのか、何を持って人々を守っていくのか。
その信念は、ちゃんと和也にも受け継がれていた。
ただまっすぐに実直だった祖父から、現代的な和也にも、ちゃんと。
民雄は過酷な任務を経てもなお、ちゃんと自分の正義を貫いていた。
「血」は受け継がれていった。

そんな三代が行きつく先、それは思っていたより苦い結末ではあったし、
現実的でもあったけれど、だからこそ人間臭くて、きれいごとではない手ごたえを感じた。
勧善懲悪が通用する単純な世の中など最初からない、
それでも、人は自分の正義は守らなければならない。
だったらそれでいいじゃないか。どんな手段でも。そう強く思った。

警官でも、どんな仕事でも、ある意味一緒かも。
どれだけ納得いく仕事ができるか。人の評価じゃなくて、自分が納得できるか。
その納得をひとつひとつ重ねていくことって、とても大事だと思う。

なんか、これ、男の人が読んだらとくに熱くなるんだろうなあ、気持ちがわかった。
私が読んでも熱くたぎったもんなあ。なんだか感想も熱いし。

しかし、警官にはなりたくない。本当に大変なんだなあ、警官って。
お疲れ様です。
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警官の血(上・下)
 2008年版『このミステリーがすごい!』の国内作品第1位。 ・上巻内容 昭和23年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。人情味溢れる駐在だった。だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。その長男・安城民雄も父の
| 読書狂日記 | 2010/06/06 8:55 PM |
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