本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「仏陀の鏡への道」ドン・ウインズロウ/東江一紀訳
仏陀の鏡への道 (創元推理文庫)
仏陀の鏡への道 (創元推理文庫)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 1,155
  • 発売日: 1997/03
  • 売上ランキング: 196677


「犬の力」が話題になって、著者の名前が出たとき、「ドン・ウインズロウといえば、
ニール・ケアリーのシリーズをまだ1冊しか読んでないな」と思いつき、
「犬の力」も読みたいけれど、久々にニールに会おう、と思って、数年ぶりに手に取る。
このシリーズといえば数年前、翻訳ものが苦手だった私に翻訳の楽しみを
教えてくれたシリーズでもあり、思い出深いものがある。
設定とかかなり忘れてたけど、読んでるうちになんとなく思い出した。
前回とは違う話なので、忘れてて読んでも充分楽しめた。

1977年。ニール・ケアリーはストリートキッズあがりの探偵。
子どもの頃にグレアムという男に拾われ、探偵のイロハをたたき込まれて、
プロの探偵になった24歳。だけどイギリス文学専攻の大学生でもある。
昨年、「ストリート・キッズ」という本の事件で疲れ果て、田舎で隠棲していたが、
そこにグレアムがやってきて、新しい仕事を持ってきた。ある会社に勤める化学者が、
女に惚れて逃げた。その男を捕まえて欲しい。彼は重要な研究をしている男なのだ・・・。
現場に戻ったニールは、その男と逃げる中国人の女、リ・ランに惚れてしまう。
そして調査を逸脱し、香港へ、そして文化大革命直後の中国へ。
リ・ランとは何者か?その旅の果てに何があるのか?
ニールがやっぱりとってもいいね。24歳、まだまだ青いのです。
探偵なのに、惚れた女のためなら探偵業をせっせと逸脱して依頼されてもない事件に
首をつっこむ。そして命を賭ける。
自分のために犠牲になってくれている人がいても、その犠牲は放っておけない。
ニールは語り口はニヒルでひねくれてていて、斜に構えた雰囲気があるわりに、
とても熱くていい奴だったりするので、その雰囲気がとても好きだった。
若いなあ、って感じ。普通、探偵ってすごく落ち着いているという印象があるので、
こうやって外れていく探偵って面白いと思う。その分話もどこに転ぶかわからず、
ニールの暴走が物語をどんどんひっぱってくれる。

1977年当時、人口が溢れていて治安の悪い香港の九龍とか、文化大革命後の
悲惨な中国の農村の姿、が見てきたかのように描かれていて、
知らない時代のことなのにリアリティがある。
それに、中国の山奥の自然の風景が目に見えるようでもあり、私が行きたくても行けない、
中国の雄大な自然、大きな仏像のある景色を旅するようでもあった。
まあ、この状況で一緒には旅行したくないな、っていう、命がけの旅行だったけど・・。

中国人の通訳の青年、紹伍(ショー・ウー)とニールとが交わす会話がおかしくて、何度も笑った。
ニールが英語でスラングを連発して、それを紹伍がおもしろがるもんだから、
会話はスラングだらけ。「決まり金玉」とか「いかれぽこちん」とか・・・
そんな二人の友情が、文化を超えてだんだん深まっていくのも読んでて嬉しかった。
最後なんか、「決まり金玉」って台詞でちょっと泣けてしまうのだ。ありえないよね普通。
っていうか「決まり金玉」って訳でいいの?日本じゃ言わないけど・・・?

まあそれはともかく、探偵ものというより、苦々しい青春の一ページ、とでもいいたい
物語でした。そして冒険小説でもあり、1977年の往時の歴史を垣間見させる、
スケールのでかいエンターテインメントでした。

ニールは、またこの事件のあと、ひきこもったりするんだろうか・・。
ぼろぼろになりながらも果敢に戦う、ニールの成長も楽しみなシリーズです。
でも、あまりニールには大人になってほしくないな。と思いました。

最後は峨眉山が舞台だったので、ネットで写真を見て、改めてニールの旅を堪能しました。
すごいところでいたんだな・・・。美しすぎる。険しすぎる。
ストリートの探偵が、こんなところにきてるなんて。すごいスケールだ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:58 | category: 海外・作家別ア行(その他の作家) |
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