本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「語り手の事情」酒見賢一
語り手の事情 (文春文庫)
語り手の事情 (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/07
  • 売上ランキング: 292071
  • おすすめ度 4.0


久しぶりの酒見さん。中国ものが多いんだけど、今回はヴィクトリア王朝だ、
しかしなんだかポルノっぽい?ミュシャの表紙にもひかれて読みはじめて、びっくりした。

謎の館。主人公は「語り手」と呼ばれる謎の存在。そこにはいろんな男が訪れる。
童貞を捨てに来る少年アーサー、SMプレイを求める男、
・・・そんな彼らの欲求を聞いていく語り手。
しかし語り手とは何者か。その館はどんな館なのか・・・。
いきなり最初のページからぶっ飛ばしてるのでびっくり。健全な女子ならすぐに本を閉じると思うが、
私は不健全なのでそのまま読む、が、それにしてもすごい飛ばしっぷり。
「年上のメイドに童貞を奪われる」という妄想を少年は熱く語り、
そのとおりのことをメイド姿の「語り手」に求める。
その「妄想」がやたらにベタなポルノっぽい描写なので笑ってしまう。

これってパロディでは?と最初は思って読んでいた。
ハーレクインとか、誰とは言わないけど某直木賞選考委員の小説とかで出てきそうな、
典型的なエロ妄想が次々出てきて、それを冷たくあしらう語り手の対応といい、
いかにも皮肉っている感じがあったので、そういうスタンスでいくのかなあ、と
思った、のだけど、そんな簡単な話でもなさそうだった。

「語り手」とはどんな存在か?これもメタフィクションかなと思って読んだ、つまり
この「小説」を「語っている」人、が前面に出てきてるのかな、というイメージで
読んでいったんだけど、どうもそれも違う、そう簡単に片付けられない感じがしてきて、
その謎は最後まで私をひっぱっていき、読み終わってもしっくりとはこないままだ。
「語り手」がまたけっこう理屈っぽいので、エロ描写満載なのに
全然エロさを感じない時もあり、そこもまた皮肉だなあと思ったり。
それにラスト・・・。結局「語り手」ってどんな人!?みたいな・・・。
それはそれでまた面白かったんだけど。

と、「なんだかよくわからない」というしかないような本であった。
でも、ラストまで読むと、もしかして恋愛小説だったのかなあ、とか思ってしまった。
そう読むと「語り手」は随分とひねくれていて、かわいらしいなあと思う。
でも、ラストのラストで、二人が手を取り合うあたりで、なんだか元気が出てしまって、
光が見えるような気さえして、私もがんばろう(何を?)と思って、その心境が不思議だった。
とにかく、不思議な小説だ。

「妄想を実現するには力がいる」、「語り手」は常々語る。
この本の場合は、妄想=エロ妄想なんだけれど、でも「妄想」とは「夢」とも取れる。
「夢」をかなえるために現実的に力を蓄える、例えば想像力とか、人間力とか、
そんなものを鍛えていって、人は未来に向かって「妄想=夢」をかなえていくのではないか。
「妄想」を叶えようとする彼らの無垢な(?)姿を読むと、そんな、妙な力がわいてくるのだった。
だからって私も妄想を鍛えようとは思わないので、そこは誤解のないようにしてほしいけど。

あとがきが酒見さんらしく、なんともいえず面白い。
あとがきで、「ポルノでもなくメタでもない。」と完全否定されたうえ、
日本の性教育についてなど熱く語っていた。
あとがきを読んで、やっぱりどんな本かわからなくなったけど、まあいい。
佐藤亜紀さんの解説も面白かった。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:07 | category: 作家別・さ行(酒見賢一) |
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