本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「圏外へ」吉田篤弘
圏外へ
圏外へ
  • 発売元: 小学館
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2009/09/16
  • 売上ランキング: 111822


吉田篤弘氏は最近とても好きな作家のおひとり。クラフト・エヴィング商會の装丁も素敵だし、
架空の(らしい)娘の吉田音が著者及び主役となっているミルリトン探偵局のシリーズも好きで、
文庫になった著作はどの名義の分も買って揃えているのだけど、なかなか読めてない。
でも、新刊が出たというと図書館で借りてきたりしてるんだけど。
今回図書館でこれを手に取ったときは迷った。でも、吉田音ちゃんが登場していたので、
借りてきてしまった。円田さんも出てきている。
ミルリトン的な雰囲気かしら?と思ったら、全然違った。
小説がはじまりそうではじまらない。登場人物は配置され、そのままにされ、
吉田氏は円田くんと雲呑を食べている。
吉田氏は娘の音と話したりしながら、小説を書くことについてうんうん考えている。
そのうちに登場人物たちは動きだし、円田くんの手に入れたチラシから
ソボフルという予言者の物語が紡ぎだされ、吉田氏はいつしか、
この世界の「圏外へ」向かっていく・・・。
不思議すぎてあらすじも書けないのだけれど・・・。

私は中学の時にちょっとだけ小説を書いていた。男女二組の探偵が、
学園の殺人事件(しょっちゅう人が死ぬ学校だった)を追いつつ、
恋愛沙汰もいろいろ起こる、という何ともたわいのないものだったが、
物語は、いろんなシーンがつながったものだった。授業中とかにふと思いついた
登場人物たちが引き起こすシーン、そこで話されるセリフ。
いくつものシーンをつないで一つにする。時々つじつま合わせのシーンを
無理やり盛り込みながら、いくつかのシーンが一つの世界になっていく。
そんな風に私は小説を書いた。

だんだん小説を書かなくなり(世の中には私の書く屑小説より面白い小説がわんさかある。
私は読む側に落ち着いたのだった)、それでも時折とあるシーンが浮かぶことがあった。
そのシーンはシーンだけで終わり、その登場人物たちが、そのシーンから
動くことはけっしてなくなったのだった。
でも、彼らはずっと、同じシーンを繰り返していくのだろうか?
書かれなくなった登場人物たちは、どうしてるんだろう。
その世界は、どうなるんだろう。

そんなことを深く考えたことはなかったけど、この小説で吉田氏が考えてるのが、
そんなことなんじゃないかなあ、という気がした。
小説家でもないくせに、勝手に気持ちがわかった気がしたのだった。

この小説が不思議なのは、吉田氏の書く登場人物と吉田氏との物語なんだけど、
私たち読者から見たら、吉田氏も登場人物であり、作中の人間だ。
円田氏だって音ちゃんだってそうだ。なんかそう思うとぐるぐるしてきて、
何とも不思議な気持ちになった。ぐるぐる、ぐるぐる。
作品の中にまた作品があり、さらにまたその中に作品があり・・・・。
言葉にするのは難しい、しかし吉田氏ならではの世界がそこにはあった。

ソボフルの物語がとても好きで、このつかみどころのないこの世界も、
ぐるぐるしながらも結局は夢中で読んでしまっていた。
そしてラストも非常に印象的で、読み終わると納得がいくような終わり方だった。

こんな風に、登場人物たちと考え抜いて、小説とは、という問いに、
何らかの答えを出したかもしれない吉田氏の、次の作品を読むのが大変楽しみだ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:24 | category: 作家別・や行(吉田篤弘・音) |
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