本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「中二階」ニコルソン・ベイカー/岸本佐知子訳
中二階
中二階
  • 発売元: 白水社
  • 発売日: 1994/05
  • 売上ランキング: 594021
  • おすすめ度 5.0


岸本佐知子さんのエッセイでニコルソン・ベイカーって作家さんの
翻訳について書かれていて、ずっと面白そうだと思っていたのです。
だって「中二階」は、主人公がエスカレーターに乗って、中二階に上がるまでの物語、
なんて書かれているので、おどろいちゃって。それで1冊の本になるなんて!
まさかそんなわけないだろう、と読み始めたのだけれど、本当だった。
本当に、エスカレーターに乗って、中二階に上がるまでの物語だったのだ。

エスカレーターに乗っている間の主人公の観察に回想、それが物語のすべて。
回想はその日の午前中に同僚としゃべったことだったり、トイレでの出来事だったり、
切れた靴紐のことだったり、牛乳に関する思い出だったり、エスカレーターのことだったり、
エスカレーターの溝からレコードの溝に想像が及びレコードの話になったり、
あちらこちらに回想が飛んでいく。
そして、本文もそんな調子なのに、注釈が異常に長い。ページをめくったら、
本文がたった3行、注釈が残りのページ(見開きいっぱい)だったこともしばしば。

そんな小説面白いのか、と思う人もいるだろうけど、これが、面白いのです。
私はたまたま忙しかったり体調が悪いときに読んだので、1週間くらい、
少しずつ読んでいたのだけど。このだらだらとひたすら続く主人公の思い入れ、
読んでいると妙に心地よくって、1週間もかかったのに、読み終わるころには、
読み終わるのが惜しいような、一緒にもっとだらだらと主人公の思い出やら薀蓄やらを
読んでいたかった、そう思わせる妙な魅力を持った小説でした。
トイレのくだりとか爆笑してしまった。トイレットペーパーとか、
男子トイレでの葛藤とか、おかしいわー。大変やな男の人って・・・。

主人公は、人に対してよりモノに対しての思い入れがすごいんだけど、
でも、たとえばドアノブから、お父さんがドアノブにかけていたネクタイの
エピソードが出てきたりすると、ネクタイを通じてお父さんと通じ合ってたこととか、
そういう暖かいものも伝わってくるので、けっして寂しい小説ではないのでした。
まあ、主人公は友達いなさそうだし、なんとなくさみしそうなんだけど、
大切な女性と、家族の思い出とを大事にして生きてる、普通の男性なんだなと思う。
普通ってことは、共感もいっぱいできるってことで。

もともと人の思考って、短い間でとんでもないところをさまよっていたりして、
いろんなことを思い出したり脇道にそれたりしながら、なんとなく
一つのことを考えているような気になっている。
エスカレーターに乗ってるときとか、電車でぼうっとしてるときとか、
そんなときにたゆたっている思考を、こんな風に魅力ある小説にしてしまう、
それってすごいなと思う。
ディテールしかない小説だし、書かれてるネタって主人公のこだわりだし、
ものすごくピンポイントなんだけど、それでもなんか、自分の物語のような、
そこらに歩いているすべての人の物語のような、そんな普遍的な魅力を感じた。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:02 | category: 海外・訳者別(岸本佐知子) |
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