本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< July 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「十角館の殺人」綾辻行人 | main | 「中二階」ニコルソン・ベイカー/岸本佐知子訳 >>
# 「老人賭博」松尾スズキ
老人賭博
老人賭博
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,400
  • 発売日: 2010/01/07
  • 売上ランキング: 4587
  • おすすめ度 4.5


今回の芥川賞候補、どれもこれも面白そうなので読もうと思っていたが
結局読めたのは、発表が終わってから。受賞作なしは残念だったなあ。
盛り上がらないよなあ。
でも関係なく、面白そうなので読む。これは一番楽しみにしていたのだった。
ソフトクリームを食べる老人の表紙、怖すぎますがかわいいです。
マッサージ師の僕は、顔にできた腫瘍を整形手術で取り、つぶらな瞳になり、
手術の借金を返そうとマッサージをしすぎてマッチョになる。
喧嘩強い自分に気づいて無茶もやりつつ、ちょっとやけくそな僕は、
ある時海馬という売れない役者兼脚本家の弟子になり、
さびれた商店街で撮影される映画の撮影についていくのだが、
そこはスタッフが博打ばかりしてるとんでもないところなのだった。

つぶらなマッチョの僕はそれだけでかなり個性的なのだが、
やけくそなのか、あまり自己を主張しない。そんな彼が淡々と語るので
周りの人々の変さが際立つ。映画業界、二流ばかりが集まった映画撮影の
哀愁たっぷりの人間模様が、さびれきったシャッター街によく似合う。
松尾スズキさん本人をほうふつとさせる海馬センセイが姑息でかわいい。

スタッフの賭けはエスカレートし、ベテランで初主演の老人俳優、小関が、
とちるかとちらないか、に高いレートで賭ける。
その賭けに勝つために各自がとる姑息過ぎる作戦に大爆笑、
改稿後の脚本なんか笑いすぎてやばい。ラストは絶対電車読書禁止です。
そしてラストシーン、別な意味で息をつめてみんなが見守る中の、
小関老人の演技は・・・・・。それはもう笑えて、笑ってるだけで
姑息な連中の共犯になった気分なんだけれど、笑えれば笑えるほど、
小関老人の、そして彼の付き人で役者としては三流のヤマザキの、
哀しいけど滑稽な人生とか、長い年月を経た目を見張るほどのプロ根性とか、
いろんな人生の苦労や哀しみが見えてきて、なんかすごく哀しいんだけど、
でもやっぱり、だからこそ、笑えちゃう。

こんなに笑えてこんなに哀しい、でも最後にはやっぱり笑える、
これはほんま松尾さんの持ち味で、誰にも真似できない味わいだなあと思う。

たぶん著者自体がダメ人間で(すいません)、でもそのダメさや姑息さを
全然隠そうとしていない、でもだから、なんか、生々しくダメな人たちが、
それでもがんばってる、ていう、応援歌みたいな、そんな力が湧くような、
面白くて頼もしい本でした。
愛がないなんて言わせないぞー。人間愛に満ちてるぞー、と私は思うけどなあ。

そして映画業界のリアリティはやっぱり業界人ならではですね。
スタッフたちにも全員モデルがいそうで、気になりました。

つぶらなマッチョのわりには最後まで自己主張がすくなかった僕が、
この出来事でどう成長していくのか、楽しみな、そしてもどかしさが
いい感じのラスト。いやあ面白かった。

海ちゃんがいう偽善の話も、なんかわかる気がしました。
偽善を売りにしてた海ちゃんが、老人相手に素になって応援するくだりとか、
賭けなんか関係なく応援しちゃいそうになるスタッフ達とか、
ダメだけど、全然ダメなわけじゃない人たち。
みんなかわいい、愛すべきお話でした。私は好きです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:37 | category: 作家別・ま行(松尾スズキ) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/923903
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links