本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「パンドラの匣」太宰治
パンドラの匣 (新潮文庫)
パンドラの匣 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 540
  • 発売日: 1973/10
  • 売上ランキング: 21909
  • おすすめ度 5.0


生誕100周年を記念して読んだつもりが、あと1日で生誕100周年が
終わってしまうので、慌てて感想を書いています。
松本清張の本の感想も今日中に書かなくっちゃ。
それにしても太宰治と松本清張が同い年っていまだに不思議・・・。

それはともかく、この新潮文庫版の「パンドラの匣」には、
表題作と「正義と微笑」が収録されてます。
確か角川文庫版の「ヴィヨンの妻」には「パンドラの匣」も収録されてたと思うので、
映画化作品をまとめて読んでみようという人には角川版がオススメかもしれない。

でもこの新潮文庫版、「正義と微笑」と「パンドラの匣」、
どちらも似たようなにおいがして、この2作品を並べて読めたのはよかったです。
太宰作品には珍しく、明るい青春のにおいがするのです。
「正義と微笑」は、将来に悩む若者が少しずつ成長していく様子を、
彼の日記を通して描いています。自分とは何者だろう、何ができるだろうと悩む
彼の姿は、今の私たち(の若い頃)にも通じるものがあって、
こんな時代もあったなと共感しながら読めました。
なぜか自信はたっぷりなんだけど不安もたっぷり。ちょっと自意識過剰な、
青臭い若者、がすごく活き活きと描かれていて、素直に頑張れと思えます。
お兄さんが作家を志していてちょっと浮世離れしてるんだけど、
そこに少し太宰の姿が重なったりしました。

ラスト、主人公が地に足の着く生活を始めて、兄との距離を感じ始める。
自分は生活人になってしまった、と。なんだかそこでちょっと切なかった。
彼の、青臭くてひたむきな若さがなくなってしまった気がしたから。
そして兄は、ずっとひたむきなまま何かを目指している。そのギャップが寂しい。
年を取って安定していくということは、確固たることだけれど、
なんだか少し寂しいのだな。この中篇を読んで頼もしくも切なくもなった。

そして表題作。結核療養所なのに「健康道場」なんて名前のついた変な場所で、
変な闘病生活を送っている青年「ひばり」が友にあてた手紙で構成されている。
毎日女の助手さんが摩擦をしてくれ、隣近所のベッドにはおかしな人たちが寝ていて、
ひばりは彼らの様子を面白おかしく手紙に書く。助手さんの、竹さんとマア坊、
そして隣のベッドのつくし殿についての恋愛模様なども書いていく。
つくしがマア坊へ書いた手紙なんかは滑稽すぎて爆笑もので、
読みながらくすくすと笑いをこらえてしまった。面白いのだよ健康道場。
結核療養所なのに、「やっとるか」「やっとるぞ」「がんばれよ」「よしきた」って、
元気な挨拶を交わすような場所。うっかり、こんな場所なら入院してもいいような
気がしてしまうのだ。

手紙ではしかし、自分自身のことはなかなか素直に書けないのか、
ひばり本人の周辺のことがなんとももどかしい。自分の恋は、わからないものだ。
最後の方のなにげない台詞が、本当に何気ないのだけれど、
私はすごく切なくなってしまって。太宰治の描く恋は、激しいとかいうんではないけど
いつもすごく切ないのだった。でも、なんだか粋なのだ。粋だからこそ切ない。

このなんともいえない若さと切なさに溢れた表題作、とてもステキで好きだった。
「正義と微笑」も好きだけれど、やっぱり「パンドラの匣」だなあ。

映画は気になっていたけれど劇場では観れず。DVDを待つこととする。
しかし、竹さんに川上未映子さんをキャスティングした人というのは、
本当によくわかってるなあ、と感心してしまった。ぴったりだ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 04:05 | category: 作家別・た行(太宰治) |
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