本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「一夢庵風流記」隆慶一郎
一夢庵風流記 (新潮文庫)
一夢庵風流記 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 780
  • 発売日: 1991/09
  • 売上ランキング: 5730
  • おすすめ度 5.0


前田慶次郎。傾奇者。前田利家から国を追い出されて流浪の身になる。
派手な衣装を着て風流を愛ししかし武芸の達人である彼が、
戦国の世を自分の思うままに好き勝手に生き抜いた男の生き様を描く長編小説。

「天地人」は終わったけれども相変わらず私は戦国に飢えていて、
結局直江兼続が出てくる小説を今年は3作品も読んだ。「密謀」「真田太平記」、
そして今回の「一夢庵風流記」。大河を見れば見るほど直江兼続について
本当のところが知りたくなるというおかしな現象が起こっちゃったので。
どれもそれぞれその作家さんなりの解釈で描かれていて、興味深かった。
まあつまりは「詳しいことはわかっていない」類の武将なんだけど、だからこそ
作家の想像の余地が広がって書く方も面白いだろうし、
読む方も同じ時代が続いても飽きないし、いろんな作家の解釈を読むのが面白い。
歴史小説の醍醐味はそこだと思う。
それは今回の主役、前田慶次郎にも言えることで、前田慶次郎の人生についても
ほとんどわかっていないようだ。世間が思う前田慶次郎像は、
漫画原作になったこともあって、この隆慶一郎のこの小説でのイメージが
なんとなく定着しているようだ(wikipediaより)。
創作も多いようなんだけどもね。明らかにこれは史実じゃないだろう、って
エピソードもたんまりあった。
この小説を読んでいたら、傾奇者の慶次郎はいつも派手な服を着ていて暴れ馬を乗りこなし、
永遠に若武者というイメージなのだが、実際は長生きしたようである。

史実云々よりも、その歴史上の人物がどんな人物だったかを、架空のエピソードも交えて
その作家なりの解釈を描ききる。それでその小説が面白いかが決まると思う。
隆慶一郎氏はそのツボをよく心得ていて、この本もとってもおもしろかった。
読み終わりたくなかったです。

慶次郎が暴れ馬を自分の馬にする冒頭のシーンから引き込まれました。
結局馬は松風と名付けられ、慶次郎だけが乗りこなせる愛馬になるんだけれど、
準主役は松風だよ、と思わせるくらいの存在感。
そして、馬も桜も対等に扱う慶次郎の心意気もすばらしい。

それから前田家を出る羽目になるのだけれど。
ここでは愛すべき小心者として描かれている前田利家をぎゃふんと言わせる
(死語だけど、この語彙しか思いつかない)シーンとか、痛快で笑ってしまう。
そこからも痛快エピソードの連続なんだけど、慶次郎はいたずら好きだけど卑怯じゃない、
そして卑怯な男をすごく嫌う、その精神が一貫していて、彼の悪戯や行動自体が
すごく魅力的なのでした。

彼はそんな男なので男に惚れられる(変な意味じゃなく)ことが多いんだけど、
彼を狙ったはずの殺し屋たちまで味方に付け、彼ら手練の者と行った朝鮮の珍道中は
本当におかしかった。みんな強すぎるんだもん。
そして恋愛模様も素敵。登場人物の台詞で「好色というのはただの女好きと違う、
女にほれ抜いて恋愛を楽しみ尽くす、それが本当の好色だ」みたいな台詞があるんだが
まさにその通りで、女も惚れてしまう魅力があるのでした。

そんな彼が、激動の時代をかけめぐる。小田原の合戦、朝鮮戦争、そして関ヶ原。
こんな時代だからこそ、自由に自分の好きなように生きるというのはすごく難しいことで、
でもそれを飄々とやってしまう前田慶次郎がいる。
直江兼続との友情のために、上杉に仕えてなくてもふらっと戦線に参加するような、そんな身軽さがある。
みんなそんな彼がうらやましくて、彼に惹かれてしまうのだろうなあ。
私もうらやましいな。でも、完全に自由にしていい、好きなように生きていい、って言われて、
私は好きなように生きられるだろうか。やはり何かのしがらみがあって
でもそれで安心しているようなところもある。私は傾奇者にはなれないなあ。

傾奇者というのはそういう徹底した自由な精神の持ち主のことで、
派手な服を着ているからかぶき者ってわけではなくて、例えば些細な男の意地とか、
友情とかで、あっさり命を捨てられる、そしてどんなしがらみからも自由である、
そんな人たちを言うんだなあと今回思いました。それって簡単そうで大変なことだよなあ。
だからこそ、この物語の前田慶次郎はかっこいいのだな、と思いました。

余談。石田三成が少し出てくるんだけど、彼の人物像が斬新で驚いた。
おかしかったけど、三成って不器用な人だったんだろうなあ。ちょっと哀しいな。
「天地人」のおかげで、ちょっと今三成ファンです。小栗旬かっこよかったわ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 20:20 | category: 作家別・ら、わ行(その他の作家) |
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