本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「女中譚」中島京子
女中譚
女中譚
  • 発売元: 朝日新聞出版
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2009/08/07
  • 売上ランキング: 100552


老婆のおスミさんは秋葉原のメイド喫茶の常連だ。
堂々と出入りしては若者たちをおびえさせ、そして若者を捕まえては昔話をする。
昔、私は女中だった・・・。

「ヒモの手紙」「すみの話」「文士のはなし」、いずれも昭和の初め頃の女中の
印象的な物語が綴られた連作短編集。
林芙美子の「女中の手紙」、吉屋信子の「たまの話」、永井荷風の「女中のはなし」、
これら3編の短編をモチーフに書かれたものだそう。全部元の話を知らないので、
どう絡んでいるのかはよくわからなくて残念だった。
知っていたらもっと面白いんだろうなあ。
でも何も知らなくても面白く読みました。
「ヒモの手紙」では、昭和初期にカフェの女給として働いていた澄子が男と出会う。
この男が最低で、田舎から女を上京させて女中として働かせているうえ、
その女中からの手紙の返事を澄子に書かせるのだった。
澄子はその女中の書いていることに苛立ち、
そのうち手紙を書くのを楽しむようになるが・・・・。

最低な男だけど愛してしまう、そんなどうしようもない女の想いの強さが
一瞬ほとばしるようなシーンがあって、ぐっと切なくなってしまった。
手紙のやりとりの妙もドラマチックで面白いけどこれは恋愛小説だと私は思った。

「すみの話」は、おスミさんが今度は女中としてハーフの娘のいる豪邸に入って、
その娘との濃厚なやりとり、そしてその家で過去に女中だったおたまとの出会いが綴られる。
美しく奔放な少女に翻弄される女たちの姿がなまめかしい。

中島さんの作品はいつもどこか国際的だけれど、今回もこの「すみの話」に出てくる
外国人の奥さんの逸話なんかがそうだった。戦争に巻き込まれる奥さんの運命は
多くは語られなかったけれど、すみが見かけた奥さんがたくましかったのは印象的だった。

「文士のはなし」は、ある文士のところに女中に行ったすみさんが、仕事がないのをいいことに
ダンサーを目指して教室に通い、それを見守る文士との物語を描いている。
私は永井荷風という人をあまり知らないのだけれど、この文士の、静かな好色ともいいたい
なんともいえない味わいが、永井荷風のイメージなんだろうなあと想った。
これは元の話がどんななのか、読んでみたい気がしたなあ。

すみさんの人間的魅力がすばらしくて、キップがよくてかっこいい姉御って雰囲気で、
語りも潔くてとにかくかっこいい。
「女中」と文字だけ見ると、そして戦前の女中の物語って何となく暗いイメージがあるし、
実際暗い話もあるけれど、すみさんの語りが潔いので、小気味よく読み終えて、
じんわりと寂しくなったり楽しくなったりするような、味わい深い短編集。
全体の構成もすごくいいし、やっぱり中島さんはうまいなあ、
そして技巧的にうまいだけじゃなくて素敵な物語を書くなあ、と改めて思ったのでした。

老婆のすみさんが、秋葉原のメイド喫茶で語ったり、すごく若い友達
(秋葉原で働いているかわいい女の子)と対等につきあっていたり、と、
現代と当時が交互に現れて、時間を超越してるような不思議な感覚がある。
秋葉原という、ある意味現代の象徴みたいな場所で、メイド喫茶のメイドさんと
当時の「女中」を比べてしまうと、時代は本当に変わったなあとか思うし、
国際色も豊かだし。なんていうのか・・・。
中島さんの本を読んでいると、視野が広がる気がするのだ。
思いもつかない視点からものを見ていて、それが伝わってくるような。
だから読んでいてとても楽しいし魅力的だなと思う。
| comments(0) | trackbacks(0) | 20:05 | category: 作家別・な行(中島京子) |
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