本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「激しく、速やかな死」佐藤亜紀
激しく、速やかな死
激しく、速やかな死
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,400
  • 発売日: 2009/06
  • 売上ランキング: 52671
  • おすすめ度 4.0


短編集は初めて読むような気がします。佐藤亜紀さん。
読む前にどなたかの感想を読んで、「時代背景がわからず知識不足で」
あまり理解できなかったようなことが書かれていたので、
ちらっとネットで、例えば「サド伯爵」とか検索してはだらだら読んで、
それから読んでみたのだけれど、そんなにわか勉強でとても理解できる
レベルではなく、私も時代背景とかさっぱりわかりませんでした。
日本史専攻の私は、世界史は全く門外漢で、一般的な知識もあるかないかで、
もうここまでわからないといっそ清々しいね、と開き直れるくらいで。

それでも面白く読みました。わかんない話もあったけど、
すんごく面白いのもあって、全体的にはやっぱりすごい本だった。
この著者は読者にまるで媚びない。歴史小説とか読んでいると、
さりげなく解説が入ったり、登場人物がさりげなく説明してくれたりするもんだが、
そういうのが全くない。
そりゃ、知っててついていけたらものすごく楽しいんだろうけど、
何も知らない私が読んでも面白い物語になってるんだからそれでいいし。

むしろ、私はその姿勢が好きだなあ、と今回改めて思った。
どうせにわか知識しこまれたってわかんないものはわかんないし、
それに、どれだけ歴史的な人物だろうが名を残そうが、一人の人間には変わりなくて、
どの時代のどんな立場の人たちも、ただ生きていて、それはある意味、
今日本に生きている私が生きてるのと、変わらないのだ。
人間の営みの普遍性というというと大袈裟だけど、そんなことを思った。

正直時代背景や出典がわかってないと厳しいなと思う作品もあって、
私にとっては「荒地」がそうだった。フランス革命後の激動の時代から、
アメリカの開拓地に流れてくる人々の心情、に共感しろと言っても無理だ。
でもそれでも最後の展開には瞠目した。流れゆく運命の皮肉を感じた。

あと「漂着物」は散文的で、やはり理解が難しかった。作者による解題を読むと、
ふむ、とは思ったが・・・。

でも他の作品は全部面白かったし、強烈な印象を残すものもあった。
「金の象眼のある白檀の小箱」は傑作だったなあ。妻が夫にあてた手紙に書かれた
ゴシップと痛烈すぎる皮肉はもう強烈過ぎて、笑っていいのかもわかんないくらい。
こんな妻怖すぎます。

表題作「激しく、速やかな死」は、フランス革命のころにあったあの処刑器具を
テーマに、人々の問答が描かれます。ひんやりした部屋にいるかのような
冷たさを感じつつも、これを読んでいると本当に、人間って所詮は一緒だなあ、という
妙な諦めと開き直りが生まれるような、これは印象的なお話でした。

「アナトーリとぼく」、出典は「戦争と平和」だそうで、残念ながら私は
読んでませんが、その大作を側面から描いた作品になってるみたいで、
(あとは諦めているんだけど)唯一原典に触れてみたいと思いました。
もし「戦争と平和」が読めたらこれをまた読み返したいな。
だいぶ、感想が違ってくるだろうし、もっと面白くなるはずなので。

「フリードリヒ・Sのドナウへの旅」も印象深い。ナポレオンを暗殺しようとした
少年が出てくるのだけれど、ここで描かれてるナポレオンの動揺は興味深かった。
ナポレオンくらいさすがに知っているから、さらに興味深かったのだった。

つらつらと感想は書いたけれど、まあそりゃ、わかってる人からしてみたら、
私は全く読めてないに等しいと思うのだ。
それでもいい、何も知らなくて無知だからこそ、私は楽しく読んだのだと思う。
読書ってそんなもんだよね(と開き直る)。面白かったです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:45 | category: 作家別・さ行(佐藤亜紀) |
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