本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ヘヴン」川上未映子
ヘヴン
ヘヴン
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2009/09/02
  • 売上ランキング: 1009
  • おすすめ度 4.0


今回手に取った川上さんの作品は、大阪弁を封印していたので、随分と文体が違い、
そのひんやりした感じに戸惑いながら読み始めたのだけれど、
すぐに大阪弁のことなど忘れてのめりこんだ。
読み終わって情緒不安定になってしまった。これだけ精神的ダメージを受ける本は、久しぶりだ。

「乳と卵」との共通点でもあるんだけど、川上さんの本は私にダイレクトに訴えてくる。
共感、とか、わかる気がする、とか生易しい感じではなくって、本質的なところを突いてくるのだ。
今回の物語に共感はないが、自分の世界が変わってしまうような感覚があった。
中学生の僕は斜視で、強烈ないじめに遭ってて、それでも毎日通っている。
机の中にあるとき手紙が入っていた。同級生の女の子、コジマからだとわかった。
コジマもいじめられていた。彼らの文通が、そして交流が始まる。

揺さぶられたのはイジメ描写の凄まじさではなく(それはそれは凄まじいのだが)、
いじめる側の言い分。愕然とした。
自分の見えている世界と、人の見えている世界が同じはずがない。
だから、理解なんてありえない。彼はそういった。
そんなことよくよく考えたら当たり前なんだけれど、その事実が私に感覚としてどんと襲ってきて、
私の世界を見る目が変わってしまった。

そんなことを自覚してしまったら、それは絶対的な孤独で、どこで誰といても私は、
誰ともわかりあえていなくて、どうしようもない。
そんなことに「感覚として」気づきたくなかった。
私はそんなことには鈍感に、世界をみんなと共有していると思って生きていたかった。

そんな動揺をこらえながら読んだもんだから、そりゃ情緒不安定にもなるのだった。

コジマが思う世界、そして僕が思う世界、それはやっぱり違っていて、
コジマは自分が人と同じでないこと、いじめる側に回らない心を持っていることを誇りにし、
弱くあることの強さを説く。でもそれも、「僕」が一緒にいてこその「強さ」であり、とても脆い。
そのコジマの「世界」はひどく痛々しく、そしてやはり世界と相容れないのか。
それがまた私を動揺させた。
コジマが、「僕」の朗報を全然喜べなかったのが、私にはとても哀しかった。
友達、じゃないよね、それって。自分を守るために、僕といただけじゃないの?
最後のシーンは本当に、読むのがつらかった。

でも最後に「僕」が見た光景が私をも救った。世界がうまく見えるようになった僕のその光景は、
まさしくヘヴンなんだろう。
これが解決だなんて全然思わないけれど、私の動揺も、少し収まったのだ。

なんか全然感想になっていないのだけれど、ぐらぐらと感情が揺さぶられる本というのは、
すごいんだと思う。とても怖くて怖くてたまらなかったけれど、読んでよかった。

これを読んでから未映子名義のアルバム、「頭の中と世界の結婚」を聴いた。
まずはこのアルバムタイトルがすとんと私の腑に落ちた。
そして1曲目「夜の果ての旅」を聴いて、またいろいろと腑に落ちた気がした。
今までちゃんと聴けてなかったなと思った。

世界が変わって見えると、川上さんの歌がまた沁みるのでした。
川上さんの「世界」がほんの少し垣間見えた気はするけれど、
私なんかよりはるかに繊細で住みづらい「世界」にいながら、
作品を作り続けているんだろうと勝手に思いました。
これからもどんどんその「世界」を読んでいきたいです。

※ちなみにセリーヌの「夜の果てへの旅」からの言葉が、冒頭に引用されています。
「夜の果てへの旅」はセリーヌの自伝的小説だそうですが、
読むと更にとんでもなく動揺しそうだなあ。
| comments(2) | trackbacks(4) | 22:07 | category: 作家別・か行(川上未映子) |
コメント
TBさせていただきました。
(前から拝読いたしておりました)
世界観そのものにこだわるスケールこそが、彼女らしさなんでしょうか。作風が変わっても、底に流れてるものは変わらない、と言われると、ああ、そうなのかと思います。
| 時折 | 2009/11/02 5:44 PM |

はじめまして。

> でも最後に「僕」が見た光景が私をも救った。
ここスゴイ共感できます。
こんなに解決しないテーマで気持ちの折り合いがつかないまま完結されてしまったら、救われません。

最後の2,3ページで大分救われたな-って思いました。

- - - - -

それから、「このブログについて」っていうのを読んで、勝手にリンク貼らせて頂きました。それからTBも。
読書ブログとしてのポリシーがすごくスキです。

こういうあらすじじゃない読書ブログを見つけると凄く嬉しいです。
自分のブログもこんな感じにしていきたいなーと思いました。
| iNee | 2009/12/26 12:48 PM |

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川上未映子『ヘヴン』
内容(「BOOK」データベースより) 「僕とコジマの友情は永遠に続くはずだった。もし彼らが僕たちを放っておいてくれたなら―」驚愕と衝撃、圧倒的感動。涙がとめどなく流れる―。善悪の根源を問う、著者初の長篇小説。 善悪の根源を問う、か。  ううむ、印象はちょ
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ヘヴン – 川上未映子
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