本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「神の守り人 来訪編、帰還編」上橋菜穂子
神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫)神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)

文庫になるのを楽しみに待っている「守り人」シリーズ。
今回は、前回「虚空の旅人」では出てこなかったバルサとタンダに久しぶりに会えて嬉しい。
そういえばタンダは「花の守り人」で負傷してたな、と
随分前に読んだ本を思い出したりしていた。

草市に行ったバルサとタンダは、人買いに連れられた美しい兄妹を見かける。
彼らに注意を払っていたバルサは、ある時すさまじい力が人買いを襲い、
彼ら兄妹だけが助かるのを目撃する。「タルの民」としてひっそり暮らしていた彼ら兄妹の、
妹アスラの方は、恐ろしい神に魅入られて、人を軽々と殺戮できる力を持つようになっていた。
兄妹が呪術師のスファルとその娘シハナに狙われていると知ったバルサは、
とっさにアスラを助けて逃げる。しかしタンダとチキサはとらわれの身になってしまう・・・
上下巻というのもありましたが、読み応えがありました。
バルサの、不死身としかいいようがない活躍も堪能でき、
エンタメとしてももちろん面白いのですが、
なんか、テーマが重くて、いろいろ考えちゃいました。

子ども向けのファンタジーとは思えないほど、悪者も善人もいない。
こちらはやはりバルサ側視点で読むけれど、敵方だって、
バルサと利害が一致してないだけで彼らは彼らの信念で動いていて、
それが間違っているとかいう話ではない。
バルサだって迷いながら行動していて、それが正しいとも限らない。
善悪の判断を超えて、生身の人間の苦悩がさらけ出されてるようなシリーズで、
大人が読んでもどっしりと重いし、私がバルサだったらどうするだろうか、
なんて思いながらいろいろなことを考えて読んでしまう。
随分心揺るがされました。
ま、私がバルサだったら、最初の1章であっさり死んでるとは思うけど(バルサ強すぎ)。

そして、力を持つことについて考えこんでしまった。
アスラは最初は自分の力に無自覚なんだけど、だんだんそれに目覚めて、
そしてそれをコントロールできなくなっていく。
無自覚にでも、自ら進んで使うようになっていく。
人を圧倒する力を持つ者が垣間見せる残酷さをアスラはバルサに見せつける。
バルサにも覚えがある。圧倒的に強いバルサが制御しているその残酷さを見せつけられ、
昔の自分を見るようで彼女も悩み苦しむ。

バルサが強いのは、武闘が強いというだけじゃない。自分の弱さを知っていて
それに立ち向かって打ち勝とうという心の強さが、バルサをより強くしている。
そして、苦しむバルサを見守るタンダの包容力の広さと言ったら。タンダは力は強くないけど
こういう人が実は一番強いのかも知れないなと思った。
いいなあ、タンダみたいな人が近くにいてくれたら楽だろうなあ、と、
バルサをうらやましく思う。

本当の強さとは何か。そんなことをじっくり考えた。

自分にはもてあましてしまう力を持ってしまったアスラの行動と結末は切なくつらいけど、
そこから希望が生まれてくるような、ほのかな光が射すような終わりだった。
これからもまだまだ精神的に強くなっていくだろうバルサと、タンダの行く末を、
ずっと読んでいきたいなと思った。

このシリーズは、国を統べる国王や王子が主人公になるってこともあるけれど、
国を治めるにはどんなことが必要か。そんなことまで考えてしまう。
力だけでは国は治まらない、ではどうしたら・・・。とか、一介の市民である私が
うっかりまじめに考えちゃうんだから、ものすごくスケールの大きな作品群なのは間違いない。
子どもも大人もみんな読んだらいいけれど、政治家も読んだらどうかと思う。
| comments(3) | trackbacks(1) | 23:52 | category: 作家別・あ行(上橋菜穂子) |
コメント
こんにちは、時折、私の読んだ本と同じものの記事があれば、TBさせていただいております。
この「守り人」も、「虚空の旅人」までは読んで、この「神の守り人」も手に入れていますが、なにぶんにも、目の前には100冊を超える積読連合艦隊の姿。しかも敵の勢いは日に日に増しているという状況です。
読めるのは、しばらく先になりそうです。

ところで、相互リンクどうでしょうか。当方「本の宇宙」のLINKS欄にリンクさせていただいています。
| 風竜胆 | 2009/10/25 1:10 PM |

風竜胆さん
リンクしていただきありがとうございます。しかし当方相互リンクはやっておりませんで、申し訳ありません。

「守り人」シリーズ面白いですよね。でも積読の山も私も大変なことになっております。積読を掘り起こして読書、もまた楽しいですよね。
「神の守り人」も楽しんでください。私はまた次の文庫化を待っています。
| ざれこ | 2009/10/26 9:46 PM |

こんにちは、何か面白い本はないかなと、いつも楽しく拝見させていただいております。
守り人シリーズは、最初の「精霊の守り人」以来、毎年新作が出されるのを楽しみにしながら読んできました。
個人的には、闇の守り人と、蒼路の旅人から天と地の守り人にかけて、まさに怒涛の展開となるところが大好きです。
さて話は変わりますが、上橋さんのもう一つの大河小説である「獣の奏者」も素晴らしい作品です。今年、文庫化されたの気に読んでみたのですが、こんなに読みやすく、深い内容を持つ小説を初めて読んだ気がします。本作の書評に「圧倒的な筆力で、・・・」というくだりがありましたが、まさに上橋さんの筆力を感じさせる作品だと思います。是非読んでみてください。
| toshi | 2009/12/02 9:07 PM |

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神の守り人
 このシリーズは、進むほどに良くなる。 ・上巻内容 女用心棒バルサは逡巡の末、人買いの手から幼い兄妹を助けてしまう。ふたりには恐ろしい秘密が隠されていた。ロタ王国を揺るがす力を秘めた少女アスラを巡り、“猟犬”と呼ばれる呪術師たちが動き出す。タンダの
| 読書狂日記 | 2009/11/03 11:55 PM |
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