本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「茗荷谷の猫」木内昇
茗荷谷の猫
茗荷谷の猫
  • 発売元: 平凡社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2008/09/06
  • 売上ランキング: 53723
  • おすすめ度 4.5


本好きが集まるSNSにて、どなたかが読んで良かったと日記に書いていて、
だから何気なく図書館で見つけて借りてきて、たいした期待も前知識もなく読んだんだけど、
これがすごく良かったのです。いい出会いでしたー。

江戸の終わりから東京オリンピックくらいまでの「東京」の物語。
短篇がずっと時系列に並んでいて、東京に住むちょっと変わった人々が
織りなすドラマが続いていって、それぞれの短篇も少しずつリンクされていて
時の流れを感じさせる。一つ一つの短篇は独立していながら、全体を読み通して
「東京」の人々が主役の、一続きの物語を読んだような気持ちになった。
最初の短編、桜のお話がまずじんわりと切ない。
武士から植木屋に仕事を変え、交配して桜を作り江戸に広めたが
いっこうに自分が作ったと名乗らない男と、武士から転職したらとたんに
黙って針仕事をするようになる妻。短い短編だが胸にしみた。

つかみはOKと思って次を読んだら、蝮などの黒焼きの「効用」にとりつかれた男が出てきて、
なんとも不思議な展開。これ、ちょっとラストに笑えた。
ほか、借金取りに行った先の豪快な大入道など、一癖もふた癖もある個性的な人たちが
主人公だったりして、さらりとした文章ながらも、さらりと読めない味がある。

絵を描いて孤独に過ごす女性といなくなった夫を主役にした表題作「茗荷谷の猫」は
何も解決していないのが逆に余韻となりしんみりとした。
わりとどの作品も唐突に終わるのだが、それがまたいいのだ。

そのあとに続く「隠れる」が個人的には傑作。一資産もらって、世の中から隠れようと
寂れた一軒家に移り住んだ男、だけど近所の人は放っておいてくれず、彼が策を講じても
ことごとく裏目に出る。町田康の小説が上品になったみたいなシュールな展開で、
かなり大笑いしてしまった。ラストもむちゃくちゃでいい。

と思ったら、次の「庄助さん」で泣かされる。戦争に突入する時代の映画館の物語。
「庄助さん」ってあだ名の青年と支配人とのやりとりが泣ける。
青年は笑いも涙もある映画を撮りたい。そして支配人の人生を、「既に笑いも涙も入っとる」
と評する。映画もすばらしいけど人生もすばらしい。一見何事もないかのような人生でも、
笑いも涙も詰まっているのだ。
なんか、庄助さんの何気ない言葉に、自分の人生さえも肯定されている気がしたのだった。
そしてこの短編集が、いろんな人の平凡な、でも個性的な人生をすごく肯定している気がして、
そのやさしさがまたとても好きになったのだった。

物語は微妙にリンクしているので、放りっぱなしで終わっている物語のその後が、
あとの物語でほんの少し知れたりする。最初の方の物語の一こまが別の物語になにげに出てきて、
それが涙を誘ったりするから、油断ならないのだった。

いい短編集でした。本当、読んでよかったです。
木内さんは大河ドラマ「新撰組!」をやっていた時に読んだ「新撰組幕末の青嵐」以来で、
久々でした。あの時もいい短編集だと思ったんだけど、今回ほどではなかった。
それは作品がどうの、というより、私自身が、こういう短編集を読んで
しんみりできるようになったのかな、と思う。
歳をとるのは寂しいけれど、こういう味わいがわかるようになるってのは、
悪くないなと思いました。

内田百寮萓犬塙掌誉醉霾發、最近読んだ作品によく出てきます。
ここにもかなり印象的に登場してきました。縁があるんでしょうし、
そろそろ私も百寮萓犬簍霾眄萓犬鯑匹瓩襪茲Δ丙个砲覆辰討たということかも。
(歳は関係ないんだろうけど、なんとなく)読んでみようと思う。
| comments(0) | trackbacks(1) | 23:05 | category: 作家別・か行(木内昇) |
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「茗荷谷の猫」
せっかくこの町に来たのだ。一粒でもいい、変化を欲していた。 「茗荷谷の猫」木内昇
| COCO2のバスタイム読書 | 2009/10/17 1:01 AM |
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