本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「玻璃の天」北村薫
玻璃の天
玻璃の天
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,250
  • 発売日: 2007/04
  • 売上ランキング: 2361
  • おすすめ度 4.5


直木賞受賞おめでとうございます!ということで、
ベッキーさんシリーズを集中して読んでます。こちらシリーズ2作目です。
私はこれ、単行本で読みましたけど、9月初旬に文春から文庫が出るようです。

「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3編が収録された短編集。
英子お嬢様とベッキーさんが、昭和8年頃という、抑圧に向かう不穏な時代のなか、
遭遇する日常の謎や、大きな事件を解決していく物語。
私、正直申しますと、1作目から違和感はあったんですけども、
なんかどうも英子様が微妙に好きになれないのです。理由はわからないんだけれど、
彼女の気の強さとか、自負心のあり方とか、そういうところがなんかダメなのかなあ。
なのでこのシリーズは円紫シリーズほどはまれない(まああちらはあちらで、
心の美しすぎる主人公に別の違和感はあるのだけど)。

でもベッキーさんの存在が、今回ほんま出番が少ないけど凛として際だっているのと、
英子様の時代に対する考え方についてはうなずくことも多いというのもあって、
主人公にどうも共感できないまま物語にはどっぷりはまるという、不思議な体験をしました。

「幻の橋」はとある浮世絵と「ロミオとジュリエット」な物語。
長年のいさかいがほぐれていく様、そして一方的な愛もあって。
情緒豊かな物語でした。
この短篇か次のかちょっとうろ覚えなんですが、英子さんが軍人の人と
時世について話すシーンが印象に残っています。
時代について発言しづらい時代に、英子さんがはっきりものを言う姿は、
あまり好きになれないといいつつも、りりしさを覚えました。
そしてお相手の軍人さんにどうしてそこまで打ち解けるのか、
彼と英子さんのその先を知りたいと思ってしまったり・・・(邪推)

この時代について、いろいろ語っているのが印象に残るこの作品、
例えば与謝野晶子の詩についての解釈には目から鱗というか、うなりました。
君死に給う事なかれ、と歌われた「君」、つまり与謝野晶子の弟は、
軍隊でどんな風に言われながら過ごしたのか・・・・。
そんな発想は私にはないものでした。
身内を犠牲にしてまで自分の主張をする、それがいかに困難か。
その場で生きている人にしかわからないような抑圧された空気を、
そのエピソードを読むことで感じました。

そして「想夫恋」。この短編集は表題作が一番ストーリーの主題に沿っていて
印象深いですが、私はこちらも印象に残りました。
ラストの余韻がいいのです。本当にいい。ある意味北村さんらしいです。
隅々まで読み逃せない、味わいたい、美しく切ない短篇。

最後に「玻璃の天」。日常の謎、とはいえないような、個性的な館を舞台にした、
ちょっとした本格ミステリです。英子さんの推理が冴えるのですが、
その事件により明るみに出るベッキーさんの過去が哀しくて寒々として、
それでもベッキーさんはそんなときでも凛としていて美しい。
あっけないくらいの幕切れが、逆にぴりっと短篇を引き締めている気がしました。

やっぱりベッキーさんがとても好きです。けして目立たないけど強い、
一本筋の通った女性です。ステキです。

そんな彼女達はこれからこの時代をどう生きていくのか、
ますます目が離せなくなりました。最終の「鷺と雪」ももうすぐ読みます。

そして、北村薫の作品を読むと、いつも読書欲がうずきます。
前作から出てくる「虚栄の市」は文庫で4巻もあるのでちょっと遠慮して、
今回は「あしながおじさん」がとっても読みたくなりました。
で、読んでみたんですけど、そこにも「虚栄の市」が出てきて、
また読みたくなって困ってます。いつか読みます、本家ベッキーさんの小説も。

| comments(1) | trackbacks(1) | 00:29 | category: 作家別・か行(北村薫) |
コメント
ども。
シリーズの中で、この本が一番好きです。
「よく負けるくには滅びず」でしたっけ。
| kochi | 2009/09/05 11:50 PM |

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玻璃の天
『玻璃の天』。玻璃とは、水晶、透明ガラスのことだそうである。美しいタイトルだ。 ・内容 昭和初期の帝都を舞台に、令嬢と女性運転手が不思議に挑むベッキーさんシリーズ第2弾。犬猿の仲の両家手打ちの場で起きた絵画消失の謎を解く「幻の橋」、手紙の暗号を手がか
| 読書狂日記 | 2009/09/08 11:42 PM |
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