本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「光」三浦しをん
光
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2008/11/26
  • 売上ランキング: 145589
  • おすすめ度 3.5


津波で故郷の島を失った3人の少年少女。信之と同級生の美花、そして輔。
圧倒的なものに押し流されてしまった彼らのその後を描く。

しをんさんはエッセイで親しんでいて勝手に友達だと思っているだけに、
こういう暗いのを書かれてしまうと「大丈夫ですか?」とか
メールしたくなってしまう(もちろんメルアドは知らないが)。
この物語は本当に暗くて、私には光は見えなかった。
東野圭吾「白夜行」を思い出した。
輔は父に虐待されていて島中がそれを知っていた。津波に皆流されて、
輔は思わず笑うのだが、輔の父は生きていた。
そして、美花に興味を持っていた旅のカメラマンも生き残っている。
そして事件は起こる・・・

彼らは島が流される前から荒廃している感じがした。島が流される前は爽やかに生きていて、
急に絶望したわけでもない。まだ中学生の信之は美花の体に夢中だったし、
弟分の輔のことも愛情かけて見守っていたわけでもない。
島という閉鎖的な、誰もが誰ものことを知っている環境が、彼らを荒廃させたのだろうかと思う。
そのどうしようもない閉塞感が最初からあって息苦しかった。

後半になって彼らが大人になってからの彼らの感情は、赤裸々にはほとんど語られない。
第三者である妻の視点で語られたりはするのだが。
しかしほとんど語られないのに、あまりに生々しい負の感情が読む側に押し寄せてきて、
読んでいて本当につらい。

圧倒的な破壊を経験してしまったら、人はそこから逃れられないのか。
普通の幸せを手に入れたようでも、それがいつ足下から崩れ落ちるかわからない、
だから、逆にいつ崩れ落ちてもいいと思っている。そんな投げやりな雰囲気を感じてしまう。
自分の人生を信じられない。そんな彼らの生き方がつらくて、暗くて、哀しかった。
深く語られないことで、その虚無感が逆にぽっかり穴をあけていたように思う。

後半は輔と信之についての物語になっていて、美花についてはあまり語られていない気がした。
彼女の数奇な物語と、どう考えてそういう心境に至ったのか、もっと読みたい気がした。

希望の光なんて見えないと思ったけれど、今思えばラストシーンはほんの少し、
彼らの人生にも光が差していたのかな?そう思えなくもないし、そう思いたい気もする。
今の人生を、どんなかたちであれ、受け止めたということで。

ただ巻き込まれていく妻が気の毒だと思った。
でも第三者の、計算高い普通の主婦にすぎない彼女が、現実と彼らとを
なんとかつないでいるような気がした。

とてもつらい小説。こういうのを読むと作家として幅もあるしうまいなーと思うけど。
しをんさんには明るい小説書いて欲しいな。となんとなく思う。
まあ、暗い小説が多いのは知ってるんですが。また「格闘する者に○」みたいな、
軽快なのも読みたいな。と思う。それかBL?案外BLものってあるようでないような。
| comments(1) | trackbacks(2) | 22:30 | category: 作家別・ま行(三浦しをん) |
コメント
いつも書評を楽しく読んでいます。
「風が強く吹いている」とはイメージがまったく異なった作品で、読み終わった後は「はあ」と暗いため息をついてしまったほどです。
美花の女としてのしたたかさが、まだ中学生の私にとっちゃ「女って怖いねえ…」と思い知らされたようでした。
そんな美花の罠にまんまと騙されていた信之…哀れですね、すごく。

なんかまともな人が全然出てこないじゃん、と思うほど、暗くて黒い小説でした。
| 典子 | 2010/05/19 7:15 PM |

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光<三浦しをん>−(本:2009年)−
光クチコミを見る # 出版社: 集英社 (2008/11/26) # ISBN-10: 4087712729 評価:69点 津波という圧倒的な自然の暴力の前に、島の住民は中学生の3人と2人の大人を残してみんな一瞬で死んでしまった。 そんな体験の中で、さらに黒い秘密を共有した子供達が、東
| デコ親父はいつも減量中 | 2009/09/16 11:11 PM |
「光」三浦しをん
この作家には珍しい作品。 意欲は買うが、粗さの目立つ作品。ネタばれあり。   物語は東京都に属する美浜島から始まる。 中学生の信之は、同級生の美花と体の関係があった。 年下の輔は、父親の洋一から虐待を受けており、いつも傷だらけ。 信之のことを兄のように
| りゅうちゃん別館 | 2014/12/13 4:47 PM |
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