本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「空中スキップ」ジュディ・バドニッツ/岸本佐知子訳
空中スキップ
空中スキップ
  • 発売元: マガジンハウス
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2007/02/22
  • 売上ランキング: 188886
  • おすすめ度 5.0


大好きな岸本佐知子さんの訳だし、好みだった「変愛小説集」にも
出てきた作家さんだし、これは読まねばと手にとってみた。
かわいらしい表紙だけど可愛らしい物語を想像したら裏切られるけど、
一癖も二癖もある短編たちがぎゅっと詰まった宝箱みたいなこの本、
とっても好きになりました。
「空中スキップ」ってタイトルの物語はないのだけれど、
例えば電車に乗っている人たちの人生を妄想してみたり、
ファッションカタログからドラマを産み出したり・・・
この作家の妄想はスキップしているかのように軽やかで、そして突拍子もなくて、
どこに連れて行かれるのかわからない、わくわくした感覚がある。

すごく短い短編が多いのに、一つ一つの世界がきっちりと出来上がっているので、
じっくりと世界にはまりこみ、たった数ページがすごい充実感だった。
なんて贅沢な読書をしてるんだろうと思える。

最初の「犬の日」は、戦争で何もかもがなくなってしまった町の話で、
いきなり底なしの荒廃が待っているし、かと思えば、
平均的な人間に選ばれてしまった男の喜劇「アベレージ・ジョー」では
くすくすと笑いがもれる。完全な平均値って特別なんだな!
同じく「イェルヴェル」ではとあるへんてこな町の話が延々続いて
文化のギャップが笑いや寂しさを呼んできたり、
姉妹の愛の物語「スキン・ケア」で切なくなったり、
短い短編「道案内」で人生について考えたり、「チア魂」でぞっとしたり、と、
いろんな感情がよぎっていく読書。
短編なので、最後のひねりがぴりっと効いているのがまた嬉しい。

そこにあるのは痛烈な皮肉だったりブラックジョークだったりもするけれど、
基本的には人への愛に溢れているというか、嫌な気持ちにたださせられる、と
いうようなものではなくて、全編どこか温かい。それも好きだ。

赤ちゃんが産まれなくなった世界を描く「産まれない世界」や
赤ん坊屋の職人「ハーシェル」の物語、「百ポンドの赤ん坊」など、
赤ちゃんにこだわった作品が多いんだなあ、とも思った。
確か「変愛小説集」に収録されてる作品も似たような物語だった。
生まれなかったり、職人に作られたりしている赤ん坊の話を読んでいても、
不思議とそこからは絶望は産まれない。やっぱり赤ん坊には未来がある。
それがちゃんとわかるのがいいなあと、思う。

岸本さんの訳も今風ではあるんだけど作品の軽やかで幻想的な雰囲気を
壊してなくって、ぴったり合ってる。
とても読みやすかったけど、軽すぎなかった。名訳だと思います。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:25 | category: 海外・訳者別(岸本佐知子) |
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