本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「アレグリアとは仕事はできない」津村記久子
アレグリアとは仕事はできない
アレグリアとは仕事はできない
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2008/12
  • 売上ランキング: 94635
  • おすすめ度 3.5


複合印刷機のアレグリアは高度なことはできるけどコピーをするとすぐにスタンバイになったり
原因不明に止まったりして、修理を呼んだら直ってしまう。
そんな気まぐれな女王様みたいなコピー機と戦うOLミノベの物語。
他、地下鉄に乗った人々の群像劇「地下鉄の叙情詩」も収録。

女性がキャリアアップしようともがく小説はけっこう出てるし、警察ネタでは特に
男社会でままならないながら仕事がんばるみたいなのはほんま定番みたいにある。
そういうのあんまり好きじゃないんだけどね。なんか痛々しいって言うか。
でも、コピー機と格闘しているOLの話は初めて読んだ。こっちの方がよほどリアルなのに、
あまり読んだことがないってのが不思議だ。
アレグリアのいかれっぷりはむかつく女のようだ。男たちには機嫌をとって、
女には無視をする(とミノベは感じている)。
確かにこんなコピー機むかつくわ。
けどミノベのキレっぷりが半端ではないので最初はちょっと違和感って言うか、
これはこれで痛々しいよなミノベ、と思いながら読んでたんだけど。
コピー機に文句一つ言わずミノベに共感してくれない、まじめな良い子ちゃんの先輩と
わかりあえないことにいらだち孤独感を募らせる、そんな様子にだんだん共感してきた。
ラストは寂しかったけど温かいものも感じた。

仕事ってこういうもんだと思うんだわ。大きなプロジェクト任されて華々しく仕事するとかいうより、
印刷機と戦ったり、人間関係にいらだったり、消しゴムかけたり、そういう些細なことに満ちている。
コピーや資料作りを一つ一つ丁寧にやって、人ともめないようににこやかに過ごす、
会社では目立たない人が実は一番仕事できてたりする。一生懸命やってたりする。
そういう人にスポットを当てたこの小説には共感もし反省もしながら自分のことのように読めた。
まあ、私はコピーも綺麗にとれないけどね。
津村さんの書く人々はとても、ちょっといやんなっちゃうくらいリアルだ。

「地下鉄の叙情詩」では、同じ車輌に乗り合わせた複数の人間の視点で、
一つの出来事を描いている。毎朝同じ満員電車で揺られているけれど
かかわりはなくて、でも互いに互いを観察しては、自分と比べている。
そんな電車内の個々の様子がリアルで、その満ち満ちたマイナスの空気に、
電車に乗るのが軽く怖くなるくらい。
ちょっと笑えるシーンとかなくて、淡々と続く群像劇は鋭く冷たい。

会社内でも、電車内でも、人がどれだけいっぱいいても、それでも一人一人は
圧倒的に孤独なんだな、というのがひりひりと伝わってくる。
むしろ人がいればいるほど人は孤独になるのかもしれない。

でもこの物語、「アレグリア・・・」もそうだが、孤独なだけでは終わってない。
圧倒的に一人なんだけど、それでも誰かと共感できる瞬間が一瞬でもあって、
孤独が深いだけに、ささやかなことでもそれは本当に救いになる。
そんな物語だったと私は思った。どちらも、ほんの少しだけだけど、
私の背中を押してくれるようだった。
そんな救いでさえ、リアルだと思った。

私はどっちも好きだし、津村さんの作品の中でも一番好きな本になったと思う。

そして津村さんの作品はいい意味で女が戦う小説だと思う。
わりと全部が、そうだと思う。その戦い方、負け方、そこまでもがリアルで、
きっちり負けてくれる冷たさもあり、でもそれでも負けない女達の強さも感じる。
| comments(0) | trackbacks(1) | 10:35 | category: 作家別・た行(津村記久子) |
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コピー機にイライラと
小説「アレグリアとは仕事できない」を読みました。 著者は 津村 記久子 お気に入りに作家さんの1人の津村作品 今作は設定がユニークというか コピー機に対するイライラを募らせるという! もちろん それだけではないのだけど 笑 コピー機と主人公の関係 そこから
| 笑う社会人の生活 | 2015/04/05 9:51 PM |
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