本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< July 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「極北クレイマー」海堂尊 | main | 「カラスの親指」道尾秀介 >>
# 「f植物園の巣穴」梨木香歩
f植物園の巣穴
f植物園の巣穴
  • 発売元: 朝日新聞出版
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2009/05/07
  • 売上ランキング: 1577
  • おすすめ度 3.5


ずいぶん久しぶりの梨木さんの新作。出ると聞いて嬉しかった。
「家守綺譚」を読んでから梨木さんは私にとって特別な作家さんになり、
「家守・・」と「村田エフェンディ・・」は、文庫を買って人に無理矢理貸しまくっています。

この本も、ちらっとみたら台詞にかぎかっこがついていなくて、文体も似ていたので、
今回も「家守・・」っぽい感じなのかなと思ってたら、結局まるで違う感想を持ちました。
「沼地のある森を抜けて」も思い出すような、梨木さんの今までの作品の系列につながる、
でも読んだことのないような新しい物語。また1冊大切な本ができました。
こちらは万人にお薦めするのは難しいような気もしますが、でも薦めまくります。
少し体調が思わしくない時期に読んだもので、少しずつ読み進めて、
長い間この作品世界にいるような感覚で、それはそれでよかったんですが、
時間を作って一気に読んでどっぷり作品世界にはまりたいような作品でもあります。

今より少し古い時代。f植物園に赴任してきた「私」は水辺の植物を育てようとしている。
歯が痛くなって歯医者に行ったら、歯医者の奥さんは犬になっている。どうやら前世は犬だったらしい。
そういや大家さんも時々雌鶏に見える。歩くたびに道が変わっていたりと不思議なことばかり起こる。
いや、そういえば「私」は、先日植物園の巣穴に落ちたのではなかったか・・・・?

夢なのか現なのかわからない幻想世界が立ち現れる。その世界は「私」の思い出の中に
沈んでいくようでもある。植物や空気の匂いが伝わってくるようなしっとりとした
美しい文体で、どんどんと不思議な世界に引き込まれていく。
それは幻想世界でもあり、でも「私」の過去へと戻る旅でもある。
幼い頃に面倒をみてくれたねえやの千代、いなくなってしまった妻の千代、
「私」の過去にはたくさんの千代がいて、そして「千代」たるものを探しに「私」は
どんどんと潜っていく。坊と呼ぶ相棒とともに。

どういう展開になるか全然読めないままずぶずぶと作品に入っていって
最後まで読んでいろいろと腑に落ちたら、じーんと深い感動に包まれた。
いや、感動とかいう陳腐な言葉ではちょっと語れないくらいだな。なんだか。

過去に戻っていく不思議な世界で、「私」は家族の温かさに触れる。
忘れていたことや気づかなかったことに気づいていく。
それは、これから子どもを産む(かもしれない)女の私が読むと、なんだかとても、
大切なことのように思う。家族ができあがっていくということの尊さのようなもの。
うまく言えないけれど、これを読んで思ったことをずっと覚えていたいと思った。
そういう本だった。

歯が印象的な比喩として出てくるのが面白い。乳歯が抜けたら、新しい歯が生えてくる。
そして「私」の人生も、あの出来事に出会うのと出会わないのとでは、確実に違う。
確実に新しくなっている。

私も気づかなかった大事なことに気づいていかないといけない。これを読むと、
見えているようで見えてないことが人生には本当にたくさんあるような気がするのだ。
そしてそれが見えたら、世界はとても素敵になるんだろう、そんな気もするのだった。

何度でも読み返そうと思う。
| comments(1) | trackbacks(1) | 04:26 | category: 作家別・な行(梨木香歩) |
コメント
ざれこさん、こんばんはー。
御無沙汰していますー。

私もこの本、図書館の新入庫でみかけましたー。
梨木さんらしい!?タイトルだなーって思って、
きっと、また植物が沢山出てくる!?って思ったけれど、
それだけじゃぁなさそうですねー。

何だか面白そう。幻想的で。

しかも、何度でも読み返そうって思う作品っていうのがいいじゃないですかー。
気になります。私も読んでみようっと♪
ざれこさんの感想、読めてよかったです。
| えびすけ | 2009/06/07 12:38 AM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/858322
トラックバック
「f植物園の巣穴」梨木香歩
「f植物園の巣穴」梨木香歩(2009)☆☆☆★★[2009079] ※[913]、国内、現代、小説、不可思議、植物、怪異、幻想 ※少しネタばれあり、未読者は注意願います。 昨年、旅先で痛み、応急処置をしたまま放っておいた歯が痛み始めた。f郷のf植物園の園丁たる主人公
| 図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜 | 2009/07/26 5:30 PM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links