本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< June 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 2009年05月に読んだ本 | main | 「極北クレイマー」海堂尊 >>
# 「模倣犯」宮部みゆき
模倣犯1 (新潮文庫)模倣犯2 (新潮文庫)模倣犯3 (新潮文庫)模倣犯〈4〉 (新潮文庫)模倣犯〈5〉 (新潮文庫)

宮部みゆきを久しぶりに読みました。数年ぶりでした。
ある時期、宮部みゆきの描写のくどさにちょっとしんどくなった時があって、
特に現代小説からちょっと離れてたんです。時代小説はあまりくどさが気にならずに
好きなので読んでたんだけど。この「模倣犯」も5冊もあるし、
くどい作品の代表作なんだろうと思ってたんですが、最近ふと手にとって読んでみて、
そして結局一気にむさぼり読みました。

やっぱり宮部みゆきは面白い。改めて思いました。
すごく読みやすくてすうっと頭に情景が入ってくるし、引っかかりが全然ない。
これは売れるわけだわと思います。サービス精神があって万人受けする。
くどいと言ってしまえば短所だけど丁寧だといえば長所なんだよね。
今回は久しぶりに読んだということもあり、前向きに読めたので面白く感じました。
でもテーマは重い。女性を狙う連続殺人事件に加え、腕を公園に捨てたり
マスコミに電話したりする愉快犯の物語。被害者が多いうえに犯人が軽々しい分
不気味さや深刻さは否応なく増す。その事件を、被害者側、加害者側、被害者の家族や
加害者の家族、そして目撃者、警察、更にマスコミやライター、一般人といった第三者まで、
複合的な視点で追っていく。丁寧な筆致で、特に被害者家族の苦しみが胸にしみいる。

事件を追うルポライターの前畑滋子と、一家全員殺された少年塚田真一の視点が入るのが興味深い。
真一は今回の事件では、被害者家族の心情がわかる第三者でもあり、彼が前畑に絡むことで
前畑滋子にも変化が現れてくる。事件を伝えるものとして
いくら真実を見極めて報道したり、事件を外から見ようとしても、当事者以外は本質には気づけない。
加害者視点からも事件は描かれるので、まるで違う解釈をしている世間や警察の様子が、
読者にはもどかしく映し出される。

様々な残虐な事件を報道で興味本位できき、大騒ぎして、すぐに忘れてしまう私たちに対しても、
この小説は警告を発している気がした。
事件は風化しない。特に当事者にとっては。それを忘れてはいけない。

読みながらそんなことを漠然と思っていて、解説に至って中井英夫の「虚無への供物」の
一節が引用されていたので、私の中で何か納得ができて、今みたいな感想が言葉になってきた。
観客としての「自分」を強烈に意識する作品だった。

2、3巻で盛り上がる物語は4巻では少し停滞するし、私はそこにきてちょっと退屈しちゃったんだけど、
4巻はそういうテーマが全面に出てくる章なので、これは書かずにいられなかったんだな、
とあとで思った。

主犯の、ある意味残酷な無邪気さは恐ろしくもあるが、頭の良さを鼻にかけたり
すぐに怒ったりしてしまう幼稚さに人間くささもあって、そういう犯人像というのも興味深かった。
ハンニバル・レクターみたいなとんでもない人ではなくて、そこらへんにいそうなのが逆に怖い。
重厚な物語のわりにラストは案外あっけなかったが、主犯の人間性が綿密に描かれていたから
納得できるものだった。積み上げられてきたものが爆発した感じかな。

くどいくらいの綿密、丁寧な描写で、いろんな立場の人々がひとつの事件を深く見据える。
宮部みゆき作品を読んでいると、いろんな人の想いが伝わってきて、
世の中をいろんな視点で見ることができるようになる気がする。
とても手応えのある作品だった。読んでよかった。
ちょっと離れていたけれど、また宮部作品もどんどん読もうと思った。

映画はまだ見ていないが、絶句ものらしい。けなす人が多いので逆に気になってきた・・・
| comments(1) | trackbacks(0) | 03:53 | category: 作家別・ま行(宮部みゆき) |
コメント
こんにちは。のんです。
宮部さんのって怖いですよね。そして面白い。
あたし、もうくるってるんですかねー。
宮部狂い(ホリック)。(笑)
この模倣犯は、わかるって思ってしまった。
ヒトにはこういうところが、だれにもある。
それがいじめとか、ささいなことにつながって・・・・・・。
それが、怖い。
宮部さんの作品はすごく考えさせられると思う。
それがすごいと思った。
| のん | 2011/10/23 11:04 AM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/858320
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links