本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「モダンタイムス」伊坂幸太郎
モダンタイムス (Morning NOVELS)
モダンタイムス (Morning NOVELS)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2008/10/15
  • 売上ランキング: 1986
  • おすすめ度 3.5


家に帰った私はいきなり拷問にかけられる。どうやら妻の佳代子が私の浮気を疑ったらしい。
会社に行ったら五反田先輩がいなくなっていて、彼の仕事を引き継ぐように言われる。
システムエンジニアの仕事を引き継ぎ、なぞの会社「ゴッシュ」とやりとりするも
会社も仕事も正体不明。いや、どうやら、ある言葉を検索すると何かが起こるらしい。

「考えろマクガイバー」と言い続けた「魔王」の続編らしい。と聞いていたので、
気軽に読めるタイプの物語じゃないんだろうなと思って読みはじめた。
「魔王」の50年後の世界はやっぱり気軽には読めなかったし、いろんなことを考えたけれど、
エンターテイメント的な演出はさすが伊坂さんというべきか、思ったよりは楽しく読めた。
しかし連載だからなのかわかんないけど、いつもだったらいろいろな伏線がまとまってきて
最後には複雑に交錯したなぞも解けて、ああすっきり、っていう終わり方なのに、
今回は投げ出された伏線がたくさんあって、そういう意味ではちょっと寂しかった。
そっか、ミステリだと思って読んだからだめなんだろうなー。ミステリのつもりじゃないんだろうなー。
と、今気づく私。いや、どうなんだろう。

国家や組織、人間の集まりであるだけのはずのものが、意志を持つことがある。
巨大な意志を。それは個人の自由をいつのまにか縛っていく。
それに気づかないと、考えないといけない。そして立ち向かう勇気が必要なのだ。
「魔王」そして今回の小説から伝わってくるこんなメッセージは、たかが検索ですら
監視されているという物語の展開もあって、じわじわとした恐れを持ってこちらに伝わってくる。
くるんだけど、まだ私にはここまでの危機感はないので、伊坂さんとの温度差を感じる読書だった。
「魔王」のときはほんま迫ってきたのになあ。あれから政権が交代したからかなあ。
今の日本国家にそこまで強いものや恐れをまるで感じないんだけど・・・。
これも「国家」の意思ですか・・・。

でも伊坂さんの話が、国だけの話じゃないのはわかってる。会社組織だってそう、
単に私たちがいる社会、と置き換えてもいい。
周りのみんなが是といってるからといって本当に是なのか疑っていかなきゃならないし、
ただ何も考えず歯車のひとつとしてくるくる回ってるんじゃなくてさ、
小さくても自分の足ですっくと立っていないといけないんだなと思う。
そして危機感のあまりない私は、いつのまにか歯車のひとつになっちゃってるのかもしれないな。
と、あとからじわじわとまた怖くなってきたのでした。

物語は一応解決はみるんだけど、結局、何かものすごく大きな敵の存在を示唆して
終わってしまった気がして、私はちょっと途方にくれたんだけども。
それでも、たとえば大事な人を守るとか、そういうちょっとした勇気があれば、
めぐりめぐって世界を変えられるんじゃなかろうか?なんて風に思えて、
元気が出るラストだったのがやっぱり伊坂さんらしいと思った。すがすがしい。

暴妻(って言葉あるのかな)佳代子さんのキャラはいくらなんでもありえなくて
最初は違和感ありまくりだったんだけど、読めば読むほど好きになるんだよなあ不思議と。
そして最後には、ちょっと情けない「私」と佳代子さんの夫婦がとても素敵に思えるのだった。

五反田先輩といい、拷問担当のお兄さんといい、個性的なキャラも面白かったけど、
井坂好太郎という作家が出てくるのが興味深い。
女遊びばっかりしている最低なキャラなんだけど、彼のせりふはいちいち印象深い。

「人生は要約できないんだよ」
って言葉にかなり勇気をもらえた。こんな雑然としたことこそが人生なんだよな。
そう思ったら毎日がんばりたくなるじゃないですか。

「小説は人を動かすわけじゃない。 ただ、沁みて、溶ける」
作家伊坂幸太郎の意志表示ともいえる言葉。いいね、沁みて溶ける小説。
私にも今まで読んだ小説たちが沁みているだろうか。そう思うとうれしい。
小説にそんなだいそれたことなんかできないけど、それでもたった一人にでも、
何かを伝えられたらいい。そんな風に小説を書いている伊坂さんを
私はやっぱり好きだなあと思いました。

そうそう!これを読んだ方は、この作品で「一緒に検索するとえらい目に遭う」という言葉を
3つくらい並べて実際に検索してみたらいいですよ。
ちょっと面白いもんがひっかかりました。ああいう悪戯好きだなあ私。

| comments(0) | trackbacks(0) | 23:33 | category: 作家別・あ行(伊坂幸太郎) |
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