本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「鼓笛隊の襲来」三崎亜記
鼓笛隊の襲来
鼓笛隊の襲来
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2008/03/20
  • 売上ランキング: 78119
  • おすすめ度 4.5


久しぶりの三崎さん、好きだった「バスジャック」と同じ短編集。
やっぱりこの作家さんは短編集の方が私は好きだなあ、と改めて思いました。
やはり突拍子もない短編ばかり集まってるのだけれど、
全体として一つのまとまりがある、個性的な短編集です。
表紙もシンプルで好きだし、裏表紙に楽譜がちょっとだけ書いてあるのもいい。
この作家さんの発想というのは、私がどんなに考えてもまるで思いもつかない
とんでもないところからやってくる。
SFとか読んでると、まるで異世界でもすんなりなじめる世界もあるけれど、
三崎さんのは私にとっては明らかに違って、だから最初は違和感との戦いになる。
短編だから余計その感覚は強い。

今から最初の短編を例に挙げるけれど、
だって鼓笛隊が襲来するんですよ?鼓笛隊よ?台風みたいによ?
そんなのいくらなんでもどう考えても思いつかないから、読み始めても
なんだよそれって思ってしまうんだけど、その違和感と戦いながら読んでいると、
ふとすとんとなじめる時がある。鼓笛隊は襲来するんだけど、主人公たちは
普通の家族で、懐かしい、どこにでもいそうな豪快なおばあちゃんが
仕切ってたりして、とんでもないことと日常が普通に同居している。
奇抜さが結局浮かない。
そんな短編たちなので、不思議でしょうがないんだけど、
何となく引き込まれて読んでしまう。

読み終わると、すごーく奇抜だった鼓笛隊が、何か、私たちが忘れている、
でもそこらへんにあるようなものの例えとしか思えなくなってきて、
何か大事なものに気づかずにいるような、すごく居心地の悪い気分にさせられる。
その、最初とは違う違和感はまたどの短編にもあって、一番わかりやすかったのは
「覆面社員」だろうか。いきなり同僚が覆面をして出勤してくるという
奇抜な始まり方をするその短編を、私は読み終わったあとも何度も思い出す。
今自分は覆面を被っているんじゃないか?今正面にいるこの人はどうか?
仕事をしていると時々思い出すのだ。
誰だって覆面被って生きてるんじゃないのか?
そんな居心地の悪さに、ふと包まれる、そんな読後感をもたらす短編が多いのだった。

最初に感じたすごい奇抜さが、わかりやすい例えにすとんと
まとめられているような気がして、まとまった感じがちょっと残念だなあ、と
少し思ったのだけれど(放りっぱなしの方が面白い余韻が残ったような)、
でもわかりやすく書いてもらわないと正直私にはわかんなかっただろうから、
これでいいような気もする。

「象さんすべり台のある街」では「象さんすべり台ってそれか!すべらないだろ!」と
最初衝撃を受けたものの、しみじみとしたノスタルジーときりきりとする
切なさが良かったし、
「彼女の痕跡展」も記憶というブラックボックスに一抹の恐ろしさも感じつつ
静かな余韻が残る作品で、「校庭」はなんとも言えず不気味だったし
自分に見えていることが全てなのかとちょっと考えてしまった。
ああ、あと「『欠陥』住宅」もインパクトあったなあ。

と、ぱらぱらとめくっただけでいろんな余韻が甦ってくる。
どれもインパクトは強烈なのだがなんとも味わい深く、
全体的にセピア色な、温かい懐かしさに溢れる、そんな短編たちだった。

| comments(0) | trackbacks(2) | 00:02 | category: 作家別・ま行(三崎亜記) |
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「鼓笛隊の襲来」 三崎 亜紀
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| 日々の書付 | 2009/06/09 1:55 AM |
奇妙な文学
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| 笑う学生の生活 | 2011/09/05 11:24 PM |
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