本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「宿屋めぐり」町田康
宿屋めぐり
宿屋めぐり
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2008/08/07
  • 売上ランキング: 39221
  • おすすめ度 4.0


「告白」といえば私の中では湊かなえじゃなくて町田康ですけどもね、その「告白」を上回りそうなページ数、子どもが泣いちゃう怖い表紙をひっさげて「宿屋めぐり」が今度出た。出たら読まねばならぬ。読まねばならぬ。何故二回言うのか私は。なんてことで図書館からえっちらおっちらと運んできたわけでありまして、こんな分厚いのに4日で読み終わって頭の中がまた町田節。町田さんの本を読んだらなんかこんな風にしか感想書けなくってすんません。地元が近いせいなのかむっちゃ移るんすわ。驚異の伝染力なんすわ。まあこの作品は全編河内弁なんてことはない、んだけど相変わらず言葉はむちゃくちゃ、時々おねえ言葉もでてきちゃうわよみたいな感じでね。でもリズムがいいのねすばらしいのね。なんつうかもう音楽?本を読んでいると言うよりは音楽聞いてるみたいなのは相変わらずで、音楽って歌詞の内容とかとりあえず関係なく聴いてるじゃないすか、で、いいもんはいいじゃないすか、だからまあこれもそうで、内容がむちゃくちゃだろうがわけわからなかろうがとりあえずはがんがん読んでしまうようなところがあって。あっというまに100ページいっちゃったよみたいな。いやすごい威力。
物語はですね、あれ、これって筋書きみたいなのあったっけ、えっと。男はいきなり妙な町にいてお参りして顔に印をもらわないといけない、みたいなことになって顔に印をもらいにいくわけ、するといきなり法師が襲いかかってきてぎゃーって逃げてたらくにゅくにゅが出てきてくにゅくにゅの中の世界に放り込まれてですな、そしたらみんなが男を見てへりくだるもんだからあれ、俺って王様?なんて調子こいてしまってたらえらい目にあって、気がついたら学校のころいじめられていた性悪の石ヌに会ってえらい目にあって、次は花に水をやっている優しそうな男に泊めてもらったらまたえらい目にあって、いつのまにか男が使った変名和泉大太郎とやらが極悪人として追われてたりしてね。そしていつのまにやら奇術師になったりしている。火噴いたり。どないやねん。意味わからへん。でもおもろいねんなこいつの旅。とほほでくほほなんやけどもなんか読んでしまう。
この世界がまたいつの時代?みたいな感じで刀持ってたり武士やら任侠やらがいたりするから日本の昔を想像するけれどipodとか普通に話に出てくるし時代設定とかもうどうでもいいよねって感じぃ?って、なんで語尾あがってんの私。

でも結局この男なんなわけぇ?ってどうやら男は主の命令で大刀を奉納しに旅してるわけね、でも違う世界にきちゃったらしいわ、と、まあそういうわけで目的見失いまくりの男なんだけれどもそれでもああだこうだ言い訳しながら旅は続けてると。
男はほんまあかん奴で、多少酷い目にあっても自業自得、嘘ついたり言い訳したり自分はさんざんしておいて、嘘ついたり言い訳してる奴らをぼろかすに言ってる。
この世界、主人公の男、えっと本名は鋤名彦名だっけな、何それ変な名前、まあその彦名も含めてみんな見事にあかん奴ばっかり。彦名目線でいくとあかん奴なだけで実は彦名だけが悪者であとの人らはみんなええ奴か?とちょっと思ってみたけどそうでもなさそうやし。みんな悪い。たまにいい奴もいるみたいやけどだいたいがあかん。

それでまあ、みんなあかんよなあ情けないよなあ、わははくははと笑いながら読んでるわけやけどもこの本の怖いところはそれを他人事として眺めてられないこと。彦名のあかんところはそのまま自分のあかんところやと気づいてそれがぐさりと刺さるし、彦名がやってる他者批判もそのまま自分を批判されてるようでぐさりと刺さる。ぐさりぐさり。

例えばあれよ、ユウコちゃん(仮名)からCD借りてそのまま借りパチしてしまったりするとしますやん、借りパチって借りたまんまうっかり返しそびれる、あるいはわざと返さないことやけども、ユウコちゃんにはもう滅多にあわへんのにCDだけが家にあって「あ、しまったこのユニコーンはユウコちゃんのんや、つうかいつ借りたっけ、あれ、5年前?」ってことがあるじゃないですか、でもそこで私はこれを謝って返せばいいのに「ユウコちゃんもきっと忘れてるわ」とか「ユウコちゃんはいい子やしそんなん気にする子ちゃうわ」とか思って結局なかったことにしちゃったりするわけよね、でもその場合の「忘れっぽくていい子」なユウコちゃんは私の中にいるユウコちゃんなわけでモノホンのユウコちゃんは激怒してたりするかもしれないわけだけど私の言い訳としてそう思ってるだけなわけ。
まあ私の普段の思考回路といえばわりとそんなんで、悪いことしてても自分のなかで言い訳したり正当化したりしてしまってる。のをこの本で彦名がぐだぐだと言い訳してるのを読んでると自分もそうだよなあと気づいちゃう。そうなると彦名が他人に見えない。見えないと読んでるとつらくなる。笑えなくなってくるんだよな。
彦名は悪い奴ではなくてただあかんのね。器用に生きられてない。で、器用にいい顔して生きてる悪人たちをこきおろしてるんだけども、そんな気持ちはうっかりわかっちゃうわけで、わかって「そうそう私って馬鹿正直だから不器用にしか生きられないよね」とか思ってるあたりがもうあかんというか、彦名と同レベルというかさ。なんか自己反省のぐるぐるスパイラルに陥ってへこんでしまったわ。話があまりに荒唐無稽だからまだ笑っては読めるもののこれが純文学みたいな悩める青年の話だったりしたらこりゃへこんだだろうと思うわけです。そう思うと笑いもすごく哀しい笑いというか、寂しくなるっつうかね。

彦名はここが偽の世界で「主」が自分を見てると思ってる。で、こんなことをしたら主は怒るだろうか?と主の価値判断で考えてる。大事なことは自分で決めないで主のせいにして楽ばかりしてそれも主のせいにしてる。主って何だ?誰だ?本当にいるのか?まるで宗教だ。でもそうやって圧倒的な存在に自己を任せてしまってやりたい放題してるのって某新興宗教とか第二次大戦時の日本とかドイツとかそんなものまで想像が広がってそう思うとすごい怖いんですけど、それは深読みしすぎなのか違うのか。そもそも主って何だ。

とかぐるぐると思っていたら最後には答えが出たような出てないようなすさまじいまとめ方で私はそこまで読んでずっと考えこむことになってしまう。へこむ。あんなに笑って読んでいたのになんですのこれは。なんでこんなにむなしくなるんだろう私。
自分って何。人生って何。

どこにいたって自分は自分で、仮の世界だのなんだの言い訳しないで自分で決めて自分で生きていくしかないのだろうなあ。ふうう人生とは疲れることよ。
ごっつ考えさせられた。笑いながらもすこんと落とされる、深い深い読後感も含めてとにかく傑作だと思った。なんやわからんけどがつんとやられる、すこーんとむなしくなる、頭からっぽになるそういう本。この威力はすごいのだった。忘れられない本になりそうだ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 21:35 | category: 作家別・ま行(町田康) |
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