本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「香水―ある人殺しの物語」パトリック・ジュースキント/ 池内紀訳
香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)
香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 770
  • 発売日: 2003/06
  • 売上ランキング: 56016
  • おすすめ度 4.5


フランス革命以前のパリ。生まれつきにおいがなかったグルヌイユは、においがないせいで
小さい頃から疎まれて育つ。しかし彼の嗅覚は異様に発達し、あらゆるにおいを嗅ぎ分ける。
処女のにおいに魅せられた彼は、香水調香師の下で修行を積むが・・・
究極のにおいを求めた男の一代記。

文庫の帯には「羊たちの沈黙」を引き合いに出して紹介が書かれていたので
サイコスリラー的な読み物を期待していたんだけど、読んでみたら、
怖いというより、普通にすごく面白かった。案外派手なエンターテイメントで、
長編なんだけど各章ごとにまとまりがあって、構成がすごくうまいしひきこまれる。
勝手に読みづらいと思ってたけど、すいすい読めました。
そして映画化しましたね。すごいシーンがあると話題になってましたが。
でも、テーマは「におい」なのよね。だから映像化しようが小説読もうが、
「結局どんなにおいなのよ」と思ってしまうのが哀しい。
映画館で上映中ににおうような演出したら楽しいのに。
まあ、あんなにおい流れたら阿鼻叫喚だろうけどさ・・・

本というのは想像力で読むものだけど、私は脳内でなんとなく映像化して読んでる。
誰かが喋ってたり動いてたりするのを画面で見るような感覚。
でもにおいとかまで想像して読んでないし、においの描写ばっかりあるような
作品ってあまり見かけないよなーと読みながら思っていた。新鮮な読書だった。
いやしかしにおいに関しては私の想像力は全く及ばずじまいでした。
においっていつもあちこちでかいでいるはずで、それで思い出す記憶というのも多くて、
原始的なものなんだけど、だからこそ言葉で表すのも想像するのも難しいなと思う。
グルヌイユの求めるにおいってどんなんなんだろう・・・。
彼にしか嗅げないんだろうけどね、気になる。

しかし人間ってくさいんですね。これ読んで自分のにおいがとっても気になったわ・・・・
だからグルヌイユにはにおいがないのかなと思う。いちいち自分のにおいを
その異様な嗅覚で嗅いでいたらたまんないんだろうなと思うし。
そういえばフランス革命当時は世の中すんごいくさかったらしいですね。
ベルサイユ宮殿とか華やかだけどにおいはひどくって、だから香水が発展したみたいなのを
どこかで読んだことがある。そんな時代に鼻がきくというのは・・・想像を絶する。
グルヌイユが人間の匂いを避けて避けて洞窟に到達するシーンがあるけど、
気持ちがわかる気がした。においがなくて、人の匂いを嫌って、そして孤独なグルヌイユ。
でも、自分で作った人間らしい匂いをまとって、人の世に戻るグルヌイユ。
排除されていた世界に自然ととけ込んでいく彼のささやかな喜びに、
ああ彼は本当に孤独だったんだなと思った。

グルヌイユが、昔はヒットする香水を作っていた老人の香水調香師のもとにやってきて、
まんまと弟子に入り込む。中盤の盛り上がりだけど、この老人とのコンビは面白かった。
老人はライバルに負けじと匂いを作ってみるんだけどダメで、
だからグルヌイユの才能を利用してライバルをしのぎ、また一稼ぎする。
ただの俗物だけどなんとなく憎めないんだよね、その老人が。

でも、そんな人間の欲には関係なく、グルヌイユはただ究極の匂いを求める。
そのやり方は壮絶だし倫理的におかしいしそれこそ狂気とかサイコとかいう表現が
ぴったりだろうけど、彼がただひたすらにおいを求めているだけというのがわかるので、
異常な感じはしなかったのです。
職人が、究極の何かを手段を選ばず作り出したり、芸術家が素晴らしい作品を
生み出す時にはまりこむ、そんな一途な狂気というか、そういうものを感じた。
倫理とかどうでもいいんですよね、グルヌイユには。そもそも人間嫌いだし、
女のにおいを求めたといっても女はいらないのですよ。においだけ。
それが怖いといえば怖いんだけど、怖さを超越した一途さがあった。
天命とか、天職とか、運命とか、考えてしまった。
においにとりつかれてしまったグルヌイユは人の幸せを得られなくて
不幸だったかもしれない、でも究極のにおいを作り出すことが、
彼の幸せをも作っていくんだろうな、何が幸せかは本人にしかわからない。
そんなことを思いました。なんかこの本の感想にはそぐわない気もしますが。

問題の映像化困難なシーンは圧巻、そのあと何事もなかったかのようになる
世の中には人の都合のよさが皮肉られていて笑わせてもらいました。
しかしラストシーンがまた凄かった。壮絶と言っていい。
しかしえげつないシーンが多発するわりに「面白かった!」と満足して本を置ける、
ある意味不思議な本です。読者を楽しませようという著者のサービス精神が満載な、
エンターテイメントでした。ってそんな読み方してる私が異常です、と
言われたら返す言葉は無いけど。
| comments(0) | trackbacks(1) | 11:55 | category: 海外・作家別サ行(その他の作家) |
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練り香水は きつい感じはしなくて優しい匂いで、量出しすぎることもなく!で素敵です。
練り香水は結構好きで、よく使ってるのです。 液体のものに比べたら、まだまだ珍しい
| 練り香水は きつい感じはしなくて優しい匂いで、量出しすぎることもなく!で素敵です。 | 女性につけてほし | 2009/05/30 10:36 PM |
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