本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< May 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「ハーモニー」伊藤計劃 | main | 「魔法」クリストファー・プリースト/古沢嘉通訳 >>
# 「わがままなやつら」エイミー・ベンダー/管啓次郎訳
わがままなやつら
わがままなやつら
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2008/03
  • 売上ランキング: 69747
  • おすすめ度 4.5


「燃えるスカートの少女」がとても印象的だった、エイミー・ベンダーの
数年ぶりの短編集。
最近、こういう、雰囲気のある不思議な短編集を何となく手に取っている。
昔はあまり読まないタイプの本。本の趣味が少し変わってきたのかなあ、とも思う。
まだこういう不思議な短編集のよさをはっきりとは説明できないんだけど、
何となくいいなあ、って思うようになってきた。
ちょっと大人になった気がする、けど、気のせいだろうか。
寂しくて、静かな短編集、という印象が強かった前作「燃えるスカートの少女」は
不思議な設定がとても多くて、例えば戦地から帰ってきた夫に唇がなくなっていて
哀しくなる妻とか、氷の手を持つ少女とか、恋人がある日人間をやめたりとか、
そういう不思議な物語が多かった。
官能的で、恋しい気持ちを思い出すその物語集は、どこか、寂しかった。

今度の短編集は、突飛な設定は減ったけれどやっぱりちょっと不思議で、
何となく前作より騒々しく、饒舌な感じがして、やっぱり官能的で、
やっぱり恋しい気持ちを思い出す。
でも、ブラック度は明らかに前作より増していたように思う。
前よりもバラエティ豊かな短編が揃っていて、意味不明のものも正直あったし、
すごくぐっとくるのもあった、でも意味不明なものを読んでも、
ページを繰る手は止まらなくて、次、次、と読んでしまう。
次はどんな世界を見せてくれるのか、気になって読んでしまう。
不思議な魅力を、読み終わるまでずっと感じていた。
読み終わってちょっと寂しかった。

好きだなあって思った短編をいくつか紹介して、何とかこの説明しがたい
魅力を伝えられたらいいな、と思う。難しいけど。

「死を見守る」
2週間以内に死ぬと言われた10人の男。そのうち数人が誤診で、
だけど自殺願望のある男はギリシャに旅立ち、最後の時を過ごす。
死ぬはずだったけど生きている男がだんだん幸せでなくなるようで、
先が見えたからこそ輝く一瞬もあるのだなあ、と思う。
最初の短編がこれで、つかみは万全だなと思った。

「終点」
小さい男をペットとして飼っていた男の話。
一番、読んでて落ち着かなかった話。ブラックだったし、ラストで哀しくなった。

「マザーファッカー」
本当の愛を知ったマザーファッカーがとった行動・・・。
なんかしんみりと寂しく、人を好きになりたくなりました。
恋愛小説ばっかりじゃないのに、すごく恋愛小説ばかり読んでいるような
気持ちになる、そういう意味でも不思議な短編集なんだなあ。

「アイロン頭」
かぼちゃ頭の夫婦からアイロン頭の子どもが産まれる。
アイロンの頭って・・・って想像するとおかしい気もするけど、
物語はちっともおかしくはなく、寂しい。家電のアイロンの売り場で
一緒に座っているアイロン頭の少年は、静かで優しい少年・・・
彼の静かな孤独が染みてくるようだった。

「おまえのあばら肉を取り除く(私の歯から)」
すごいタイトルなんだけどこれも切ないのです。
自殺未遂ばっかりしている女性と、でも彼女とずっと一緒にいる男の話でした。
温かい諦めがそこにはこめられていて、こういう愛もあるなあ、と思う。

「ジョブの仕事」
神様に生きがいを取り上げられていく男の話。
こんな短い話なのに、生きるってなんだろうって考えてしまった。

「飢饉」
7つのじゃがいもと過ごす女性の物語。捨てても捨てても戻ってきて、
大きくなっていくじゃがいもと、いつのまにか家族みたいになってる女性。
じゃがいもをね、食べちゃったら、戻ってこなかったのがとても寂しかったの。

「塩胡椒シェイカー殺人事件」
なんかバカミスみたいなタイトルに度肝抜かれましたが。
塩と胡椒、なるほど、と腑に落ちるとなんか切ないんだよなあこれが。
ある意味奇跡的に相性のよかった夫婦のお話。

「主役」
指が鍵になっている少年が、人生で自分の指に合う扉を探していく話。
これが一番好きだったなあ。わかりやすかったってのもあるけれど、
それぞれの人が、こういう風に、大事な鍵を持って、扉を開けながら、
人生を切り開いていくようなイメージが広がって、すごく希望がある物語。
ラストの締めかたもしんみりと、とてもいい。

| comments(0) | trackbacks(0) | 00:19 | category: 海外・作家別ハ行(その他の作家) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/820927
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links