本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「フィンガーボウルの話のつづき」吉田篤弘
フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)
フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 460
  • 発売日: 2007/07
  • 売上ランキング: 46734
  • おすすめ度 4.5


「世界の果ての食堂」について話を書きたいと思っている吉田くん。
でも物語は見えてこない。ゴンベン先生に相談したりもするけれど、まだ話のしっぽはつかめない。
でもある時みつけた小さな博物館で、ジュールズ・バーンという人を知る。
その人は小さなメモに大量にお話を綴っている人だった。
いつしか物語は、バーンの世界に、そしてビートルズのホワイトアルバムを巡る
物語へと動いていく・・・

わあ好きだわあこれ。すごい好き。筋道だった物語はなくて、本当に入り口みたいな
短編がつらつらとあるんだけど、ゆるーくリンクもしているし、
それぞれの世界観がとってもキュートで素敵。
何度も読み返したいような素敵な本です。

吉田篤弘氏はほんの少ししか読んだことないけどいいなあと思っていた作家さんで、
そして最近では娘さんの吉田音ちゃんのミルリトン探偵局のシリーズに
はまったところだったんだけど、その不思議な雰囲気とよく似ていて、
やっぱり好きだなあと思う。
そういえば、スパイス屋さんもまた出てきたしね。ミルリトンとも微妙に
リンクしてあるところがいい感じだ。

ビートルズのホワイトアルバムってのがあって、正式名はそうじゃないんだけど、
真っ白なアルバムで、2枚組で、通し番号が振ってある。
そのアルバムを持っている人たちの物語のほんの一コマが綴られていく。
アルバムの曲にあわせて作られた物語、ってわけではなくって、それを持ってる人たちの物語。
それぞれ、そのアルバムにまつわる思い出やら出来事やらが、物語となっていく。
持っているアルバムに振られている番号が物語の始めに振ってあることもあり、
通し番号があるからこそ同じアルバムでも「同じもの」ではなくなってそれぞれの物語に
なるような雰囲気があってそれが興味深いし、それにアルバムが物語に出て来ていなくても
番号が振ってある物語もあり、何故だか気になったりもした。
それにホワイトアルバムが本当に聞きたくなります。

そんな、たくさんの物語たちが、一見無造作に綴られていくのだけれど。
しわしわの白シャツを着ている作曲家さんのお話や、ピザを水平に持つお話や、
素敵な物語が多かったけれど、特に気に入ったのはレインコート博物館っていうモチーフだった。
レインコートをずっと着ていて、着古したら博物館に寄贈する。そして博物館では、
それをきっちり補修してプレスして保管していく。
人々の人生に降った雨が、そのレインコートには残っている。

思えば、無数の人々の無数の人生、物語が彩られている「もの」たちが語りかけてくる
物語だった気がします。レインコートしかり、ホワイトアルバムしかり。
そして、吉田くんがずっと物語を書こうとしていて書けないでいる、どこかに、大きな物語があるけれども
そのしっぽをつかむことができない、そんな思いが綴られていくうちに、
世の中には語られるべき物語があふれていて、そして人々の些細な人生の出来事も
全てが物語で、世界は物語で満ちている。そんな気持ちが徐々にこみ上げてきて、
自分の周りも物語だらけな気がして、それがすごく私に幸せな気分をくれました。
私だってたくさんの物語を生きているし、それはみんな一緒なんだなと。
そしてそれはすごく素敵なことだなと思います。

映画の予告編みたいな、物語のイントロのような、小さな物語が多かったのもあり、
終わることのない物語達のほんのしっぽをずらっと見せてもらったような、
そんな贅沢な気持ちを味わえました。
そして、こういう気持ちを持って物語を作っている(というか、どこかの世界から
語られるべき「物語」を捕まえてきている)吉田さんの書くものを
もっとたくさん味わいたいな、とすごく思いました。
| comments(1) | trackbacks(1) | 00:54 | category: 作家別・や行(吉田篤弘・音) |
コメント
こんにちは☆
はじめまして!

なんだかこれもよさそうなお話ですね〜

実は先日恩田睦の『ドミノ』で調べていてお邪魔したのですが・・
私が大好きな江国さんとかいしいしんじさんとか・・・
感想を読んでて「深いな〜」と思っていました。
好きな本の傾向が似ている?ように思えるので
今後の参考にさせてもらいます!!

ついでに・・差し支えなければお気に入りに追加させてください!!

| atsuko | 2009/01/17 2:29 PM |

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フィンガーボウルの話のつづき
 僕の好きなクラフト・エヴィング商會の吉田篤弘氏の連作?短編集。  例によって少し奇妙で、ほんわかで、お洒落。  例によって作品同士が微妙にリンクしたり、入れ子構造になったり。 「世界の果てにある食堂」を舞台にした物語を書きあぐねる吉田君は、奇妙な
| 読書狂日記 | 2009/01/18 8:01 PM |
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