本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「海に住む少女」シュペルヴィエル/永田千奈訳
海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 500
  • 発売日: 2006/10/12
  • 売上ランキング: 163568
  • おすすめ度 4.0


評判を聞いて手に取った古典新訳文庫。作家の名前すら知らなかったんだけど、
フランスの宮沢賢治、といった趣の作家らしい。
私が宮沢賢治を熟読しているわけではないのでその比喩が正しいかどうかは不明だが、
不思議な味わいの短い短編がいくつか収められている。

表題作は、海の上にたった1人で、年もとらないでずっと住んでいる少女の物語。
永遠に生きる少女の寂しさが胸にしみいってくる作品だが、ラスト1ページにはまた
別の強烈な哀しみが襲って胸を締め付けられた。
不思議な設定、趣を醸し出しながらも、人の本質的な寂しさをぐっとついてくる作品で、
この最初の短編ですっかりこの作品集に魅了されてしまう。
そして、イエスの誕生の時にそばにいた牛とロバを主役にした
「飼葉桶を囲む牛とロバ」に続き、そちらも、献身的な牛の姿が印象的だった。
でも、なんだか寂しい。やっぱり寂しい。

「セーヌ河の名なし娘」「空のふたり」はともに、死後の世界をテーマにしたものだけれど、
前者はとても哀しい気持ちにさせられ、後者は少し幸せになる。

なんか、どれもこれも私の感覚に訴えかけてくる物語たちで、
だからとても哀しくなったり、寂しくなったり。
幸せになる作品は上の例外を除いてはあまりなかったので、
ずっと寂しくなりながら読んでいた。でもなんとなく世界は透明で美しく、
寂しさの中にもほんのりと光があるような、そういう物語。

「足跡と沼」や「競馬の続き」などに見える、人の底なしの悪意も印象的だった。
そこは決して、美しくは描かれておらず、突き放されたような感覚があった。

そして短編が特にうまい。短ければ短いほど、情感が際だっている。
私は短い作品ほど好きだった。こんな見事な短編はなかなか読めない。
「海に住む少女」のラスト1ページの転換が見事だったのはさっき書いたとおりだが、
「バイオリンの声の少女」がすごく短いのに一つの時代を感じさせる重みがあったりとか、
「牛乳のお椀」なんて一番短いのに、一番哀しくなった。

なかなかうまく感想を書けない、幻想的で透明で美しい作品群なので、
感覚で味わって欲しいなと思う。

ひとつだけ、古典新訳だったから手に取ったのにこんなことをいうのはなんだけど、
読みやすいのはいいけれど、ちょっと現代語っぽすぎたのが、残念だった。
ら抜き言葉とかで喋ったりして欲しくないなあ、ここに出てくる人々(や牛やロバ)には。
この作品の雰囲気だったら、ちょっと堅苦しい厳かなくらいの日本語のほうが、
馴染むと思ったので、そこが残念だった。原文で読めないので、別訳で読んでみたい。

| comments(3) | trackbacks(0) | 00:36 | category: 海外・シリーズ別(古典新訳文庫) |
コメント
私もこれは原文で読みましたが、浮遊感のある透明な文体と、夢遊病者を思わせる日常乖離的な詩情は、本を閉じてからさらに喚起力を増してゆく不思議なものです。最後にとってから数年経つので、細部の記憶が怪しいのですが、あの幻視の世界が、すでに自分の血肉の一部と化していることを改めて感じさせる、個人的に決定的な作品でした。
| let-the-right-one-in | 2009/01/23 9:59 AM |

童貞好きはエロい女の子
| エッチ | 2009/03/20 1:29 PM |

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| エロ | 2009/05/31 11:29 AM |

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