本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「蟋蟀」栗田有起
蟋蟀(こおろぎ)
蟋蟀(こおろぎ)
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2008/09
  • 売上ランキング: 125239
  • おすすめ度 4.5


2009年初めて読んだ本。いい年になりそうです。
栗田さんは普通と夢との境界をたゆたっているような作家さんですが
がちがちのファンタジーというような感じでもなく、あくまで普通に生きてたらある日突然
おかしなことが起こって、でもそれが当然のように受け容れられているというか、そんな世界。
主人公の女性達がゆるくって共感できるところも含め、全体的にゆるくって、
ちょっと哀しくってちょっと温かくて、そのさじ加減がとても好きな作家さん。
ああ、そういえばこれで「お縫い子テルミー」を読むと栗田さん作品を読破してしまう。
それは寂しいなあ。早速新作希望です。

動物がタイトルに入った、不思議な味わいに満ちた短編集。
タイトルに動物が入っていても動物が出てこない話もあるのだけれど。「蛇口」とか。
なんかそういうのうまいなあ。

最初の短編「サラブレッド」では、手相占い師が主人公。
人の手を触るとその人の現在、過去、未来の記憶が見える彼女はそれで占いをしていたが、
ある時恋をして、その男性の手を触ってしまう。

最後の短編「ユニコーン」では、妹と喧嘩してたら突然妹の中に象がいることに気づき、
以来誰をみてもその人の中にある動物がみえるようになった女性が主人公。
自らの中にも馬がいて、馬はいつも荒野に住んでいるのだった。
そして女性の中にはだいたい強そうな動物が見えるらしい、男性のときは動物じゃなくて
車とかの時もある、みたいな、そういう細かい設定も面白い。

そんな風にのっけから不思議な設定の物語もあるし、
いきなり女性がバーでミニスカートで側転し、それを見て「僕の彼女への恋は決定的となった」
なんてイントロではじまる話(「アホロートル」)もある。かなりびっくりした。

そして結末がぷっつりと切れる。起承転結の転までで終わり、みたいな。
そしてまた「転」がとんでもない「転」なので、わけのわからない場所につれて行かれて
そこでぽつーんと放ったらかされるような終わり方に呆然とする。
最初の「サラブレッド」からしてそうで、だんだん読むうちに「こういうもんか」と
こちらも開き直り、どこにつれて行かれるのか、物語を読みながら楽しみになってきていた。
これで最後まで描かれていたらそれはそれでまとまりのある面白い短編になっただろうなと
言う気もするんで続きを読みたいと思いながらも、ないならないで先を想像したり、という
別の楽しみも残るので私はこういうの好きだなと思った。
あまりにも綺麗に完結した小説って「うまい」と思いながらも、閉じている印象があるんだよね。
想像の余地がないって言うか、ほんまにそこで終わっちゃうっていうか。
曖昧さが残る小説だと、開いている感じがして、余韻をたくさん味わえる気がする。
だから一つ一つ読むたびにいったん本を置いていたので、けっこう時間がかかった。

好きな短編は「ユニコーン」とか「さるのこしかけ」とか。
「さるのこしかけ」は、二股されて傷ついた女性が、雷に打たれて死のうと思い立つ、
悲惨な状況だけどなぜかちょっと滑稽なんだけれど。更に滑稽な展開がやってきて、
そんななかで女性の傷が雨で洗い流されていくようで、こちらもほほえみながらも
なんだか心地よくなってしまった。
「ユニコーン」も、突飛な設定ながらも仕事やら恋やらに悩む女性の日常がなんだかリアルで、
応援したくなってしまった。
あと「アリクイ」もおもしろかったわ。幼なじみの女の子が出産するからって
すごくテンションがあがる母に辟易しながら、帰省した幼なじみとお茶をする男性。
お茶の席でさらりと秘密が語られる。何事もなかったかのように。
人生の重みを抱えているはずの幼なじみはさらりと自然に過ごしている。

出てくる人たちはそれぞれ悩みながらもなんとなく日々を生きていて、
その姿はけっこうリアルで共感もできるところがあって、そういう人たちが
突飛な出来事に呑まれながらも「まあいっか」って受け容れているようなところに、
妙に元気をもらえた気がした。悩みとか別にたいしたことないよね、みたいな。
人生、何が起こるかわからないもんね。ここまで不思議ではないにしても。
| comments(1) | trackbacks(0) | 22:57 | category: 作家別・か行(栗田有起) |
コメント
こんにちは。
私は「猫語教室」で思わず声を出して笑ってしまいました。
「アホロートル」も破壊力のある話でした。
ちょっと川上弘美さんを思わせるところがありますが、
さらにアッケラカンとしている印象でした。
| 木曽のあばら屋 | 2009/01/17 9:05 PM |

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