本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「時計じかけのオレンジ 完全版」アントニイ・バージェス/乾信一郎訳
時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1) (ハヤカワepi文庫)
時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1) (ハヤカワepi文庫)
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 777
  • 発売日: 2008/09/05
  • 売上ランキング: 9823
  • おすすめ度 4.0


5年ほど前かな、映画を観ました。細かいストーリーは忘れてたけど
昔に作られたとは思えないサイケな映像が強烈な印象を残していました。
で、原作。「完全版」ってなんだろうと思いながら、最近出たのを買ってみました。

完全版って何かと言うと、小説と映画では結末が違うそうです。
アメリカで発売された版は最終章がカットされてて、それを元にキューブリックが
映画を作ったのもあり、キューブリック自体が最終章は要らないと
思っていたような感じもあり、まあそういうわけでずっと最終章抜きの分が
出回っていたようなのですが、今回読んだのは最終章がある方です。


少年アレックスは仲間とともに、夜な夜な町へ繰り出しては狼藉を繰り返している。
強姦、強盗、そして結局人を殺しても平気。家ではいい子にしているアレックス、
人生はバラ色に見えた。しかしアレックスは仲間の裏切りに遭い、
一人だけ警察に捕まってしまう。そして刑務所から、とある施設に入れられ、
ひたすら映画を見せられる。

文体はアレックスの一人称。これがすごいの。ハラショーでナイスなんですよ。
あまりに強烈なので最初読むの無理かと思いました。
翻訳なのにカタカナ書いてあってルビがふってある。
英語じゃないのよね。その部分は、意味不明の彼ら仲間だけに通じる言葉。
そんなカタカナが容赦なく混じりこむ文体(訳者もすごいわ)に最初は混乱しましたが、
慣れてきたらなんか頭の中がその文体に侵されてきて違う意味で混乱しました。
頭の中がハラショー!になってた。
ハラショーってさ、英語のveryみたいな感じの意味なんだけど、
ハラショーって言われたらなんだかすごいような気にならないですか?

まあそんな一人称でぐいぐいと話は進み、慣れたらすぐに読めてしまいます。
驚くほどあっさり。
暴力描写も刑務所の描写もえげつなさ極まりないですが、
私は出所してからのアレックスの描写が逆にえげつなく感じました。
暴力行為が無くなるのはある意味自業自得としても、
彼が好きなクラシック音楽が聞けなくなった、それがえげつなく思った。
音楽を楽しむというような行為は人生の楽しみとしてずっととっておくべき
ものであって、誰かにコントロールされるようなものではないと思う。
例え極悪人であってもだ。

何かを選択する自由が人間にはあって、極悪人になろうが善人になろうが
それは本人が決めること。矯正されるもされないも本人が決めること。
そういうことを強烈に伝えたいのかなあ、と思いながら読んでいった。
最終章直前まではそうだった。でも最終章でがらりと趣が変わった。

暴力も悪も、無理やり終わらせなくても、いつか終わるのだ。
熱病みたいなものなのだ。時はたつのだ。・・・そうなんだな・・・

最終章があるかないかで賛否両論あった話を解説で読んだ。
最終章を書きたい著者の気持ちもわかるし、切りたくなったキューブリックの
気持ちもわかった。ある意味テーマが変わってしまうのだ。
最終章が無いほうが、テーマとしての一貫性はあると思う。
でも最終章がある方が、小説としては終わった感じがして、完成度は上がっている。
あの強烈な文体が本当に威力を発揮するのはこの最終章、その言葉を使わなくなった
友達が出てきたあたりだと思うし、主人公がずっと読者に語りかけていた
独特な調子の意味も、やっと最終章ではっきりするから。

でも、私はこの作品は終わらないでいて欲しかった気がした。
暴力行為が終わるのが哀しい、暴力推奨ってわけではもちろんないけれど、
何か、一つの時代が終わるのをみたくなかったな、っていう、そんな気持ち。
やってることは本当に酷いけど、アレックスが一番輝いていたであろう時代、
それが終わるのがちょっと寂しかったんだと思う。

描かれてる行為がひどいもんだから、賛成か反対かとか倫理的な問題を
つい考えてしまいがちだけど、アレックスの若かりしころの物語と思って読むと、
そういう風に思ってしまうのだった。

強烈にもう一回映画を観たくなったので、近いうちに見ると思います。
みたらまた感想が変わってきそうだなあ。

| comments(0) | trackbacks(0) | 02:37 | category: 海外・作家別ハ行(その他の作家) |
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