本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< January 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「聖女の救済」東野圭吾 | main | 「蝶々の纏足・風葬の教室」山田詠美 >>
# 「贖罪」イアン・マキューアン/小山太一訳
贖罪〈上〉 (新潮文庫)贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)

最愛の兄が帰ってくる日、13歳の少女ブライオニーは、自ら脚本を書いた劇を上映して
兄を喜ばせようと考えていた。でも、従姉弟がやってきて、思うようにいかなくなる。
そんな日、大学を出たがそのまま家にいる姉のセシーリアと、使用人の息子の青年、
ロビーが庭園の噴水で争っているのを見て、そこから感受性が刺激されて、
自らが作家として目覚めていくのを徐々に自覚していく。
セシーリアはロビーに対して複雑な反抗心を持っていて、その苛立ちを説明できない。
父が多忙で不在の中、病弱な母、戻ってきた奔放な兄とその友人のチョコレートバー工場の御曹司、
そしてセシーリア、ロビー、いとこたち、そしてブライオニー。
すべての運命が変わるこの一日を濃密に繊細に描く第一章、そして・・・
家族それぞれの視点で描かれた第一章はたった一日の出来事で上巻まるまるを費やす。
退屈なある一日が劇的な一日に変わっていくのを、密度の濃い精緻な心理描写で描いていく。
本当にたいしたことのない出来事のはずなのに、私はすっとのめりこみながら読んでいて、
まるで退屈を感じなかったし、徐々に気持ちが盛り上がっていった。
小さなことの積み重ねが大きなうねりになっていく展開は圧巻だった。

セシーリアとロビーの心理描写は見事のほかないが、少女ブライオニーの
少女特有の痛々しい感じがなんともリアルで。
ああ、あったなこういう時期、と思わされるとともに、著者が男性なことにも
驚いたりしつつ、読んでいた。

官能的で濃密、酔いしれてしまう上質なラブストーリーでもあり、
少女が大人になる瞬間を切り取って描いたような物語でもあり、
たった一日のこととは思えない第一章。
独特の美しい文章で紡がれた、運命の一日。

そして上巻の一日を受けて、下巻でドラマはぐんと動く。

波乱含みな展開に動揺したり安堵したりしつつ読んでいて、普通に読んでいたつもりが、
最後まで読んで呆然とした。がつんと何かがぶちあたった感じがした。
感動というか空しさというかいろんな感情が一気に襲ってきて、動揺した。
そして、タイトル「贖罪」の意味がずしんと迫ってきた。
贖罪とは何なのか、考えさせられる。本を読んでだいぶ経ってからでも、
ふと思い起こすと、そこにとらわれてしまう。
小説は終わったのに、自分の中ではまだ終わらないというか、
いつまでも残り続けるだろう小説となったのだった。
この余韻は他では味わったことがない。

小説の力を思い知らされる、と帯にあった。
そのままの意味でとらえて読んでいたのだが、それ以上の意味だった。
フィクションの力をまざまざと感じた。

作家としてこれを書ききったマキューアンは何を思ったのだろう、
そんなことを思った。そして私はどうして小説を読み続けてるのだろう、とも。

うーん、また考え込んでしまってこれ以上感想書けないので、あとは読んで、
ひたすら体感してください。
小説としての引力というか、素晴らしさというか、それは間違いないので。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:09 | category: 海外・作家別マ行(イアン・マキューアン) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/814731
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links