本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ガリレオの苦悩」東野圭吾
ガリレオの苦悩
ガリレオの苦悩
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,600
  • 発売日: 2008/10/23
  • 売上ランキング: 118
  • おすすめ度 4.0


ドラマ「ガリレオ」がえらい人気でしたね。
「湯川って佐野史郎のイメージのはずが、福山?ありえない」と開始前には思ってたくせに、
結局毎週みてしまって、更に公開初日に「容疑者Xの献身」まで見に行ってしまった。
福山ファンみたいだ。でもドラマは案外面白くって、本を読んだだけじゃあまりぴんときてなかった
物理的トリックが映像化されてわかりやすくなってそれがおもしろかったし、
福山の作った湯川学像も、あれはあれでありだろうと思ったし。
草薙が脇に徹していて内海薫と湯川との恋愛っぽい雰囲気が微妙に漂ってたのは
ちょっとなあと思っていたけど。
映画も良かった。何がいいって堤真一が。これも「石神が堤真一ってかっこよすぎ」と
思っていたけど、これが見事にはまっていて、すばらしい演技だったと思う。

ま、流行にこうやって踊らされているので、映画と同時に2冊同時刊行された新刊、
「ガリレオの苦悩」と「聖女の救済」も、早速図書館に予約していたら、早速届いた。
東野さんもどれだけ稼ぐつもりだよ、と思いながらも結局早々に読んでしまったのだった。
「ガリレオの苦悩」は、内海薫が登場。雑誌掲載分には既に登場していたらしいが
私は雑誌は読んでいないので、初めて活字で読むことになった。
やっぱりドラマのイメージにひっぱられちゃうけど、原作の内海はよくある女性刑事で、
女だからと馬鹿にされたくないとちょっと肩肘はってるところもありながらも、
でも無能ではなく、女性独自の生活感あふれる観点から事件を見ることができる、
観察眼に長けた、有能な刑事だ。あまりドラマにはそういう感じはなかったので、新鮮だった。
湯川のいいつけをまじめに守って実験につきあったりしているあたりもかわいい。

で、湯川は思ったより変人でもないのは前作までのとおり。前から湯川学って
もっと変人でもいいのにな、と思っていたら、福山が独自の「変」さを出してくれたので、
そういう意味ではドラマには満足している。
草薙は今回の短編集では内海にしてやられていた。後輩ができたからか何か知らないが、
前はもっと気弱で普通の青年だったと思うけど、ちょっとふてぶてしくなっていた。
出世したのかなあ。ちょっと寂しい。

で、湯川も草薙も、石神の事件が苦い記憶として残っているようで、特に湯川は、
もう捜査に協力はしないと言っていた。しかし内海と出会い、再び事件に関わっていく。
内海の懸命な存在があの湯川を動かした、新たなシリーズの序章となる短編集だった。

「落下る」
女性が部屋から落ちて死亡した。容疑者の男性は女性の落下時に、その真下にいたことが
わかっている・・・。内海は、時間差で人を落下させる方法はないかと、
草薙の紹介で湯川学のもとへ行く。
「私が女性だからですか」という息巻く内海に、そういう態度がいけないとさらっと諭す湯川。
内海にとっても、湯川との出会いで何かを得たのだろうなと思える事件だった。
オチがまた少し意外でもあった。

「操縦る」
湯川の恩師の友永氏の離れで、息子が火事で死んだ。友永氏は息子が死んでせいせいしたというが、
彼は車いす生活で簡単には動けない。現場に居合わせた湯川はまた捜査に協力するが。

トリックも「え、そんなできるの」という驚きのもので(テレビでやってたようですが
私は見ていなかったので)、びっくりしてしまった。こういうのがあるからやめられない。
「操縦る(あやつる)」の言葉が指す本当の意味がわかるラストは秀逸。
また湯川達が最後にかける言葉もしみた。
確かに、湯川には以前より人間らしさが出てきたかも知れない。

「密室る」
友人のペンションを訪れた湯川。脱サラした友人は若い嫁をもらい、夢のペンションを経営していたが、
ある時奇妙なことが起こった。自殺した客がいた部屋が、一瞬密室になっていたというのだ。
調べ始めた湯川だったが、友人は頼んでおいて、湯川が調べるのを快く思っていない・・
密室だった意味があったのか、いまいちわからなかったが、湯川はある意味容赦はないんだな、と思った。
あ、そういやこの短編には草薙も内海も出てこなかったな。

「指標す」
水晶の振り子で、男性とつきあうかどうかも決める中学生の少女。老女が殺され、
保険外交員の母が疑われた。彼女は振り子を使って証拠を探す・・・

どんなに非科学的でも、自分が迷ったときに道しるべになる何か、それがある人は幸せだ、
というような湯川の台詞を、何度か読み返し、姿勢を正したくなった。ほんまにそうだ。
地味だし小品だったが、一番好きな作品かもしれない。
湯川は普通だし変人でもないけど、嫌いじゃないなあ、とこういうとき思う。

「攪乱す」
湯川に「悪魔の手」からの挑戦状が。自分は事故に見せかけて人を殺せる、
そして密かに殺してみせる、と豪語し、そして実際に人が死んだ・・・
「悪魔の手」はどんな手段を使ったのか、そしてなぜ湯川に挑むのか。

劇場型犯罪といい、湯川への挑戦状といい、ちょっと倒叙ミステリっぽい
雰囲気といい、
派手な作品で、普通長編だよなこの題材、と思うけど、
それをあっさり短編で仕上げてしまう東野氏に脱帽。
しかしドラマでやるなら二時間スペシャルか?映像受けしそうな短編だった。

トリックもほほうと思わせるものだったし、
湯川が内海に平然と意地悪をするあたりはにんまり笑ってしまった。
普通に面白かったなあ。
| comments(0) | trackbacks(2) | 12:51 | category: 作家別・は行(東野圭吾) |
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東野圭吾 2作
「ガリレオの苦悩」 「聖女の救済」 
| Akira's VOICE | 2008/12/10 4:11 PM |
ガリレオの苦悩<東野圭吾>−(本:2009年46冊目)−
ガリレオの苦悩クチコミを見る # 出版社: 文藝春秋 (2008/10/23) # ISBN-10: 4163276203 評価:86点 さすがにうまい。 物理学者による謎解きという少々マニアックな内容が本格推理小説好きの(特に理系の人間の)心を微妙にくすぐり、一方で、人間臭いスト
| デコ親父はいつも減量中 | 2009/05/30 9:26 PM |
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