本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「婚礼、葬礼、その他」津村記久子
婚礼、葬礼、その他
婚礼、葬礼、その他
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,200
  • 発売日: 2008/07
  • 売上ランキング: 279564
  • おすすめ度 2.5


私はよく結婚式やら披露宴やら二次会に呼ばれ、よく受付とか頼まれる。
仲のいい人ならいそいそとやるんだが、時々、「え、なんで私を披露宴に
呼んでくれたの?」って思うくらいの縁の薄い知り合いが、
「受付もお願い」と言ってきて更に「なんで?」って時もある。
元彼の結婚二次会に呼ばれ、おとなしくしてようと思ったら、
幹事の人からこき使われて、結局走り回ってたときもあったし。
ただでさえ立場上目立ってるのに、更に目立ってどうするみたいな。
まあ、いいんだけど。

あまり頼りがいがないわりになんやかんやと役をやらされ、
で、引き受けたからにはそればっかり気になってしまう、
なんかそういうちょっと損なタイプの私と、今回の「婚礼、葬礼、その他」の
主人公はかなり一致していて、共感という以上に、哀しくなるというか、
そういう感じでしたよ。もう。私のことですかみたいな。
だいたいそういう日は食いっぱぐれて腹減らしてますよ。私も。

それにしても「婚礼、葬礼、その他」ってあまりにもそのままなタイトル・・・。
芸の無さが逆に芸になってるようなタイトルですね。
友達の結婚披露宴でスピーチ、二次会で幹事を頼まれ、準備万端で行ってみたら、
いきなり会社の課長のお父さんが死んだから通夜に来いといわれる。
スピーチの代役を先輩に頼もうにも酔っ払ってえらいことだし、
幹事のもう一人は頼りにならないし・・・。
食い物にはずっとありつけないし、もう踏んだり蹴ったりな、
そんなヨシノの一日を描いたコメディ、といって差し支えないと思う。
絶妙なテンポで彼女が陥るトラブルを描いていって、質の高い映画を見ているよう。

会社の人の家族が亡くなったからと社員が勢ぞろいするのも小さい会社ならではで、
私の職場でもわりとそういうところがあるので、ああわかるわかると。
こんな時に死ぬなよ、とつい思ってしまうヨシノの気持ちも、ブラックだけど
わかってしまう。妙なリアルさにくすくすと笑いながらも読んでしまう。

でも通夜の席で、ふと死について思うヨシノの想いが、これをただの
シチュエーションコメディにしていない。
祖父母に何も出来なかった、そんなことを思いながら過ごすヨシノに、
こちらも少しずんとした重さを感じた。

で、「その他」部分がまたステキで、こういうのもいいなあと。
私みたいな人が共感しまくりで、ちょっと幸せになれる、そんな物語。

そしてまるで違うイメージの「冷たい十字路」という短編も収録されている。
高校生達が自転車で飛ばしまくる道で、小さな衝突事故が起こる。
その事故の目撃者や関係者の複数の人の視点で、その事故の彼らへの影響が
描かれていく。
通行人、という赤の他人たちのそれぞれの想いが展開していくわけではあるけど、
それが交錯されてなにかが生まれるというものではなく、ただ通り過ぎていくだけ。
結局は人は他者には興味がない、他者と出会ったからといって
交われるわけではない、そんな容赦ない現実がつきつけられていくような気がした。
しかし、それぞれの視点から、ある特定の人への恨みや憎しみが垣間見えて、
それでぞっとさせられるときもあって。
復讐。という強いものじゃなくても、人は、自分が受けた傷を忘れない、
という、これも哀しい現実がつきつけられる。

私にとっては衝撃作だった「君は永遠にそいつらより若い」を思い起こすような作品。
うまくいえないなあ。この著者のざらざら感は、表現できない。
一見、負け犬女の冴えない現実を描いたような、今時の女性作家みたいな
作風かと思いきや、根底にとても冷たい現実認識というか、そういうのを持ってて、
どうしようもない救いのない世の中、救いのない人間達、をじわりと描いてくる。
それでもしなやかに強い。そんな作品を書いているような気がする。

津村さん、今年になって3作品読んでますが、ますますつかみ所がなくなって、
ますます目が離せない。

| comments(0) | trackbacks(1) | 23:24 | category: 作家別・た行(津村記久子) |
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結婚式やら葬式やら・・・
小説「婚礼、葬礼、その他」を読みました。 著者は 津村 記久子 まさに題名通り、結婚式に葬式に振り回される主人公 そこに見える人間模様、礼式というもの・・・ 文学らしいさもありつつ 読みやすく ユニークさ 楽しく読めて 著者らしい味わいを感じられて やはり
| 笑う社会人の生活 | 2013/07/06 8:24 PM |
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