本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「航路」コニー・ウイリス/大森望訳
航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)航路〈下〉 (ヴィレッジブックス)

私の今年のベスト1は長いこと「鳥類学者のファンタジア」だったのですが、
この作品を読んで「超えた」と思いました。
今年の個人的ベスト1(12月1日現在)です。
文庫を買ってみて驚くほどの長編でしたが、あっという間に、夢中で読めました。
すごくすごく面白く、エンタメとして最高の出来、
そしてじんわりとした深い感動を最後にはもらえました。これぞ読書の醍醐味。


マーシー・ジェネラル病院で臨死体験を調査しているジョアンナ。
迷路みたいな病院で、心臓が止まって蘇生した者へのインタビューを行おうとするが、
いつもマンドレイクに先を越されている。
マンドレイクは臨死体験で天使だの光だのが見えるというような胡散臭い本を出版していて、
彼がインタビューした臨死体験者はこぞって天使だの光だのが見えたと言い出すのだ。
ジョアンナは神秘体験ではない、臨死体験が持つ意味を調べようとしている。
リチャードというキュートな医師が見つけた、とある方法によって、
臨死体験が安全に行えることを知る。被験者を募り、彼と研究を進めていくが、
マンドレイクの妨害に遭い被験者が足りなくなってきた。
ジョアンナは自ら臨死体験をする決意をする・・・

病院がほんまに迷路みたいで、マンドレイクを出し抜いて臨死体験者に会おうとしても
あっちこっちが工事中やらペンキ塗り立てやらでたどり着けない。
そしてしょっちゅうマンドレイクに出くわしては「2,3分で済む話だよ」と
言われながらも延々とむかつく話を繰り返される。
「障害物を避けていかに早く目的地にたどり着けるかゲーム」をずっと
繰り広げてるかのごときコミカルな展開、ぐいぐいと引き込まれる。
そして追い詰められて腹が減っても、リチャードのポケットからは食べ物が
わらわらと出てきて、おまえはドラえもんかとつっこみながら読んでしまう。
更にポケベルはしょっちゅう鳴り響き、なじみの患者のメイジーがしょっちゅう
ジョアンナを呼びつけては世界の災害について話をする。
メイジーはまだ幼いけど心臓病で、死の危険がある。
でも彼女は災害についての話を聞いてはわかったことをジョアンナに興味津々で訴える。
そして多忙な彼女を(他の誰もを)引き留める天才的話術を持っている。
死が近くにあるのにそれに立ち向かう強さを持ったメイジーはとっても魅力的な少女で、
私も大好きになったし、ジョアンナだって当然大好きで、愛しいと思っている。

そしてジョアンナは多忙なのに、親友の看護師ヴィエルとともに、
ディッシュナイトっていうイベントをよくやってる。
夜に集まって映画を見る会なんだけど、「タイタニック禁止」だったり、
見る映画のセレクトとかが忙しくて年頃の女性のちょっとやさぐれた感が出ていて、
私も入りたいなあって思える雰囲気。ヴィエルもしっかり者でとてもいい感じの友達。
なんていうか女性的なノリが性に合ったのかな。やっぱりコニー・ウイリスは
女性だなあ、女の楽しさをわかってるなあ、って思えた。

でも、キュートなリチャードももちろん一途でステキな男性だし、
あからさまにリチャードを狙っているお色気看護師のティッシュ、
おじさんの介護をしながらジョアンナの力になってくれるお友達のキットもステキ。
悪役のマンドレイクの典型的な悪役ぶりも逆にいい感じだ。なんでそんなに話が長いんだよ。

と、とにかく魅力あふれるキャラクター達がてんこもり。どの人もベタなキャラなのに、
活き活きとそこに息づいていて、そのおかげでワンパターンに陥りがちな物語でも、
全く飽きさせない。
ああ、あの人もよかったな、戦争体験ばっかり語るじいさん!最高だった。

その中でも特にピカイチの魅力を放つ少女、メイジーが、重い心臓疾患に冒されており、
ジョアンナはいつも心配している。
メイジーのためにも早く臨死体験の謎を解かなければと焦っている。
急病で担ぎ込まれた男性が死ぬ間際に言った「58」の数字、それが何を意味するのか、
思い出せそうで思い出せない。ジョアンナは自ら臨死体験をし、
臨死体験者がとりあえずたどり着く暗いトンネルを探り、ここはどこかを果敢に調べる。
そして彼女は自分が超有名な歴史上のとある場所にいることに気づくのだが・・・・

その場所がわかったときは、まさかタイムスリップSFだったのか?といぶかしんだが、
さすがコニー・ウイリス、とんでもない展開をまっとうな展開に持ち込んでいく。
その場所が臨死体験を解く鍵になる、とジョアンナはリチャードの制止も聞かずに躍起になるが、
そこでまたとんでもないことが起こり・・・。
それはいくらなんでもルール違反でしょう!と私は著者に一瞬キレたが、
しかしやっぱりコニー・ウイリスはすごいのだった。
ある種の絶望に裏打ちされた、だからこそ美しい希望が見えてくる。

仰天の展開を何度も経ながらも、すごくまっとうな終着点に持って行くその手腕は圧巻。
今までネタだと思っていた迷路みたいな病院や、じゃまをしてくるマンドレイクや、
携帯じゃなくてポケットベルだから意思がちゃんと通じないところとか
(携帯があったらこの物語は全然違っただろうなあ)、
その他諸々いろんなことが実は伏線だったことに私たちはだんだんと気づいていく。
そしてメイジーの大冒険があって、とても感動的なラストへとつながっていく。
見事な終着に、私は目を潤ませながら拍手喝采した。ジョアンナ最高よ。

「死」をテーマにしているから、ほろ苦いラストでもある。
でも、生きるっていうのはこれだけすごい力なんだ、と、その裏側にある「死」を見ることで、
逆に生きる力を見せつけられた気がしたのだった。

各章の最初に、偉人達の臨終の台詞が書かれている。
彼らはなにを見たのだろう?
どれだけ話が面白くなってても、それはいちいち手をとめて読んだ。
いろんな死に様があって、それは彼らの生き様をあらわしているようでもあった。
見苦しい人、潔い人、「天国では耳も聞こえるよ」とはベートーベンの最期の言葉・・・
考えさせられた。
死はやっぱり怖いけど、それまではしっかり生きようと思った。
人には生きる力が満ちているのだし、大丈夫だ。
そう思える本。読んで本当によかった。

「死ぬっていうのはすごい大冒険だろうな」

| comments(1) | trackbacks(3) | 00:28 | category: 海外・作家別ア行(コニー・ウイリス) |
コメント
本当に素敵な本ですよね!
私の中でも人に薦めたいNO.1の本です。
こんな世界を見せてくれるなんて!まさに読書の醍醐味ですね〜
コニー・ウィルス素敵すぎます!
| momo | 2008/12/07 11:46 PM |

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