本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「七瀬ふたたび」筒井康隆
七瀬ふたたび (新潮文庫)
七瀬ふたたび (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 540
  • 発売日: 1978/12
  • 売上ランキング: 5040
  • おすすめ度 4.5


旅に出た七瀬、電車に乗っていたら崖崩れに遭うリアルな夢を見て、
目覚めると、近くに座っている3歳の男の子が同じ映像を見て泣いているのがわかる。
彼が予知したのか?電車はどうなるのか?
七瀬は初めて、仲間と出会う。               −「邂逅」
前作「家族八景」では家政婦をしながら家を転々としていたテレパスの七瀬は、
超能力者は自分だけなんだろうかという孤独や不安と戦っていた。
そんな彼女が家政婦をやめ、旅に出ることで、自らと同じ能力を持つ3歳のノリオ、
予知能力者の恒夫、他にも様々な能力を持つ超能力者に会い、仲間になっていく。
特にノリオには我が子のように愛情を注ぎ、心の声でコミュニケーションしながら、
ノリオの将来についても深く思いを巡らす七瀬。
しかし、超能力者を抹殺する組織の魔の手が、七瀬達にどんどんと迫ってきた・・・

前作とまるで違う雰囲気を漂わせる今作は、様々な超能力者が活躍する連作短編形式の長編。
一話一話、七瀬を中心に、いろんな能力者が威力を発揮していく、面白い展開で、
シリーズ中一番ベタなSFだと思う。

各短編では能力者はなかなか出てこないので、七瀬が危機に陥っても誰が助けてくれるのか、
そしてどんな能力で七瀬を助けてくれるのか、なかなかわからない。
でもそれがわかったときの意外性と、彼らの能力を使っての鮮やかな結末、
どの短編でもそれが痛快で面白かった。特に前半はそう思った。
悪の透視能力者と対決する話も、悪役のキャラが際だっていて緊迫感があったし、
船の話も解決が意外で、すごく面白かった。

出てくる能力者がとても魅力的。作品中で3歳から5歳になるノリオは、
とても5歳とは思えない高度な知能をもって、七瀬と心の声でずっと話している。
危険を察した時は「→」で伝え合ったり、二人だけの通信方法を持っていて、
遠くにいてもお互いを感じることができる。テレパスがはじめていい方に使われたというか、
本当の親子よりも親子らしくわかりあえている七瀬とノリオの関係はほほえましかった。

そして恒夫。恋した女性がテレパスだったら?それがわかってしまった彼は、
つい七瀬に対していやらしい想像をしてしまい、それを七瀬に知られてしまった自分を恥じ、
七瀬に会えなくなる。それでも七瀬を思う彼はけなげで切ないし、ちょっとかわいそうだ。
七瀬はそんな妄想には慣れてる、と言っても、彼にとってはそうもいかないよね・・・
と、超能力者だからこその設定もいろいろあって、それがまた面白い。

ヘンリーも七瀬を敬い付き従って、なんか飄々としていていい感じだし、
藤子は七瀬の心の友として、出番は少ないが強烈な存在感を放っている。
そして、能力者ではないけれど、ヘニーデ姫もとっても好きだ。
ものすごいテンションが高くて、ずーっといろんなことを際限なく考え続けていて、
エネルギーを放出しまくっている。美人で奔放で、そしてちょっと七瀬を心配している。
そんな彼女に七瀬は好感を持つが、私も彼女はとても好きだった。

後半、ヘニーデ姫が出てくるあたりから、七瀬が命をねらわれはじめ、
きなくさい雰囲気が漂ってくる。自分や大事な仲間を守るために犠牲を強いられる
残酷な一面もあるが、彼らは自分の力を最大限出して戦っていく。
突然バイオレンスアクションになってくるラストの1編、
急な展開に戸惑いつつも、目がはなせないのだった。特に恒夫の戦いは切ない・・・。

七瀬たち超能力者の、孤独な彼らがやっと仲間になって過ごせる、そのささやかな幸せを、
誰も奪わないで欲しい、そう切実に思った。特殊な能力を持ってるだけなのに。
でも私はそれをおそれないでいられるだろうか?心を読まれて、平然としていられるか?
それは私にもわからないし、誰にもわからない。

超能力者の絶対的孤独、自らの特殊な能力といかに折り合い、いかに生きていくか。
そんなSFの定番的な、切ないテーマが全編を貫きながらも、エンターテインメント性に
優れた、息もつかせぬ連作短編だ。短いが非常に濃厚な作品だった。

そして少し余談だが、
テレパスなおかげで夫婦生活に異様に詳しい七瀬だが、まだ自らは経験していない。
前作から男に襲われそうになったりという危機はあったが、この作品でも七瀬は
ノリオを育てるためにホステスとして夜の町で働いた先で危険な目に遭ったり、
ヘニーデ姫と一緒に男と遊んだりして、何度か貞操の危機に陥っている。
そこらへんもベタながらもお色気(死語)モード満載で面白いところでもあるんだけど、
それがまた次作に、ある意味つながっていくとはね・・・

あ、そうそう大事なことですが、解説に3部作ラストの「エディプスの恋人」

軽くネタバレされているので、ご注意ください。
私は知ってたからいいけど、これはどうかと思ったわ。
ま、読んでもさらっと忘れてしまえば、別に問題ないと思うけど・・・

さらに余談だが、これから始まるドラマは別もののようですね。
かなり設定が違ってます。
でも第一話予告では電車のシーンがあって、ちょっと面白そうでした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:28 | category: 作家別・た行(筒井康隆) |
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