本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ラギッド・ガール―廃園の天使鵺」飛浩隆
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
  • 発売元: 早川書房
  • スタジオ: 早川書房
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2006/10
  • 売上ランキング: 87239
  • おすすめ度 5.0


仮想現実に、人間の「情報的似姿」が訪問することができるようになった世界。
本人は現実世界で生きながら、主人の癖や個性をコピーした似姿は仮想現実「数値海岸」で
しばらく生活し、そして気が向いたときに似姿の体験をロードし、経験することが出来る。
区界と呼ばれる仮想現実世界はいろんな設定で星の数ほどあって、どこにでも行ける。
そんな世界の物語。そのシステムの初めと、そして<大断絶>が描かれる。
読んでいて私はふと自分の家の本棚を眺めた。

仮想現実を旅するのは読書と似ている。
私の家の本棚には、私が既に体験した本、していない本が大量にひしめいていて、
それぞれの世界を持っている。
そして私がページを開けたとき、その世界の住人は「生き」はじめる。私の中で。
私はその物語の主人公と一体になり、その架空の物語をしばし生きる。そして本を閉じる。
その本の人たちが、実はずっと生きていて、私の登場を待ってるのだとしたらどうだろう。
そして、私の似姿(コピー)がその世界に旅立てて、好き勝手できたらどうだろう。
そして、私とは何か、私の似姿とは何か、本の世界で主人公になりきって生きているとき
「私」は主人公とイコールなのかそれとも主人公含め彼らの世界全部が
私の心象世界の一部になるのか。

この三部作で構築されている世界は、現実と違う世界でしばし生きることを好む、
本を読む人たちの夢でもあると同時に、すごく不気味な世界にも感じる。
うまく言えないけど・・・。本の中の人々がずっと生きててひしめいているとしたら、
私は本棚が怖くなってしまうだろう。
そんなことをつらつらと考えてしまう読書だった。

仮想現実と現実世界、それが複雑に交錯して、一度読んだだけではなかなか全貌が把握できない、
私のキャパシティを遙かに超えた作品集。あっぷあっぷしながら、1編読んでは息をつき、
一日1編ペースでやっと読み終える。ふう、心地よい疲労感だ。
読み終えてもすぐに、1作目「グラン・ヴァカンス」も込みで再読したくなるくらい、
いろんなリンクが各短編で張られていて、年表とか相関図とか作りたい、
でも謎が多すぎて作れない、っていうかいっそ飛さんの似姿を乗っ取ってその思考回路をロードしたい、
そしてこの世界を完璧に理解してもっと戦慄したい。などと切実に思った。
わからないことがいっぱいあっても、私の戦慄は半端じゃなかった。
すごいわ、この三部作。


「夏の硝視体」
「グラン・ヴァカンス」の前日譚。大断絶から300年経過後の区界のある一日。
グラス・アイが発見され始めた頃に、ジュリーはジュールを誘わず海に行き、
そしてジョゼと出会う。まだジュリーはジョゼとは親しくなくて、
でもお互いが急にお互いを気にし始めている。そしてたくさんのグラス・アイが・・
二人の運命と、「グラン・ヴァカンス」を予告するような、短い短編だが、
ジョゼが背負い続けた、「経験していない過去」の残酷な映像が生々しく迫る。
そして、その過去がこの後の短編達とリンクしていて、ぎゃ、と思ったのだった。
そうだったのか、しかし怖い・・・・

「ラギッド・ガール」
著者ご本人が「今の飛の最高傑作」とあとがきで書かれていた表題作。
この「数値海岸」の社会ができる根本となる重要な短編で、確かに最高傑作かも。
この不快感と恐怖のレベルは相当高いし、さっき私が「本を読むこと」とこの世界を
関連づけて熱弁をふるったのも、正直この短編の影響だ。
でもこの作品が好きか?と聞かれたら、素直にうんと言えないのも、この不快感からくるものか。

これは現実世界の物語。このシリーズで初めて出てくる、現実だ。
阿形渓はひどく醜い女性だった。体中は皮膚病だらけ、ラギッド(ざらざら)女。
しかし、過去を全部ビデオテープに録画したみたいに全て記憶し、いつでも取り出せる
能力を持っている。それに目をつけた仮想現実研究の人々、「情報的似姿」を
作り上げようとしているチームは彼女を誘い、そして阿形はアンナと出会う。

醜い女と美しい女のコントラストが強烈で、自分を痛めつけて快感を得る人の辿る心理とかは
非常におぞましく思う。しかしこの「苦痛」を感じ続ける醜い女の思念が、数値海岸、
果てはこの世界を作り上げたのだろうなと、ふと思ったりもして、ぞっとした。
そして自分とは何か?確固としたものであるはずの「私」が、ほぐされていくような
感覚も恐ろしかった。
自分が自分かどうかわからない。こんな世界で生きていたら、おかしくなってしまうよ、私。

「クローゼット」
舞台は日本。自殺したルームメイトの謎を探るガウリ。自殺した彼はアガタ達と、数値海岸の
元を作るプロジェクトに参加していたが、ある時仮想現実にとんだまま、500回もの死を
体験してそのまま死んでしまった。自殺か?事故か?
数値海岸の「恐怖」の概念を仕事で作りながら、その謎を追うガウリ・・・

難しいながらもミステリ的な読み方もでき、単品で読んで面白いのだが。
「ラギッド・ガール」との関連も深いうえ、更にガウリの仕事が「区界に恐怖を持ち込む方法」って。
「グラン・ヴァカンス」をいやでも思い出す。そしてラストに判明した事実の衝撃、
でも私はその事実を既に知っていた。おののいた。
複雑な短編達をつなぐリンクとして重要な物語だと思う。

それにしても、500回もの死を経験するなんて。1回で勘弁して欲しいわ。

「魔述師」
仮想世界と現実世界が交差する凝った内容で、大断絶の経緯が描かれている。
現実世界ではAIの虐待に異を唱え、数値海岸自体を批判するグループのリーダーへの
インタビューが、仮想世界では、区界間を行き来できる「鯨」のメンテナンスをしている
区界にゲストとして出向いた少年が不思議な老人と出会い、そして少女と出会う物語。

大きな鯨が区界を行き交う。「グラン・ヴァカンス」でも鯨は印象的な登場をしていたけど、
空を舞う巨大な鯨、中に旅館やらカジノやらが入っている鯨を想像すると、
この殺伐とした世界に似合わない牧歌的な雰囲気で、想像すると頬がゆるんでしまった。
鯨とか蜘蛛とか、動物達(それもプログラムだが)には味があっていい。

現実世界で、AIの、人間からの虐待を主張し、過激に行動する女性の言動は、
私には共感できない部分もあった。虐待する人間がこなくなって千年経った区界の、
「グラン・ヴァカンス」を読んだからだと思う。人がいなくなっても生き続ける、
いつまでも生き続けるAI達。そんな世界が本当の優しさなのか、私にはわからない。
何故生きているのかという疑問を永遠に持ち続けるAI達。それも残酷なことだ。
などといろいろつらつら考えながら読んでいたけど、女性の秘密がわかると、
うわーとなってそれどころじゃなくなってしまった。
さらに区界での壮絶なラストシーンに頭真っ白。しばらく次の短編は読めなかった・・・
どの短編からも相当なショックをもらうので大変だ。

「蜘蛛の王」
「グラン・ヴァカンス」で登場したランゴーニの物語。
「天使」の正体も「魔述師」とこの作品でなんとなく示され(たような気がするのだが)、
「グラン・ヴァカンス」につながっていく作品だ。
この区界の設定も大きな樹木でできている世界で、樹木から生まれる人間(AI)達、とか、
蜘蛛を使って木を巡るとか、魅力的な設定で、そこでの壮絶な戦いは手に汗握った。
「父」と息子との倒錯した愛情が巡り巡ってという展開だが、
「父」がおみやげに持ってきた蜘蛛って・・・!と思わずページを戻したりして。
現実世界と仮想世界を行き来するものだから、仮想世界にゲストとして現れる人は、
結局誰なのか、それがわからないからもどかしく面白いのだ。

大きな機械的な、動かない口、その映像イメージが強く残り、夢に出そうだった。
おぞましく、そして美しい映像、いろんな残像がいつまでも残りそうな作品集。

だらだら書きつつも全然ちゃんと思ったことを書けていない気がする感想は
この辺で終わっておこう。しかし長いな。思い入れ強いな。
壮絶で美しく残酷なこの物語をあらわす言葉を私はなかなか持てない。
仮想現実といった物語設定で、使い古されたネタのようでいて、
読んだこともない斬新さや衝撃やショックをひたすら受け続ける、
ある意味忘れがたいシリーズになったことは確かである。

三部作の最後はいつ出ますか。早く読ませてください。お願いします。
| comments(2) | trackbacks(1) | 23:27 | category: 作家別・た行(飛浩隆) |
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| 読書狂日記 | 2008/09/21 6:16 PM |
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