本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ずっとお城で暮らしてる」シャーリィ・ジャクスン/市田泉訳
ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)
ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 693
  • 発売日: 2007/08
  • 売上ランキング: 71015
  • おすすめ度 4.0


あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。十八歳。お姉さんのコンスタンスと暮らしている。(略)
ほかの家族はみんな死んでしまった。
ブラックウッド家の二人の姉妹、メアリ・キャサリン(メリキャット)とコンスタンス(コニー)。
彼女達は村じゅうに嫌われている。メアリが買い物に出ると、村の子どもが歌を歌う。

メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット
メリキャット おやすみなさいと コニー姉さん
深さ十フィートの お墓の中で!


それはブラックウッド家の家族が全員、ある日突然死んでしまったから。
そして生き残りのコンスタンスが疑われているから。
家の中でひっそりと、生き残りのジュリアン叔父さんと3人で姉妹は暮らしている。
いろんなルールを作って、猫も一緒で、家族は幸せだった。
そう、従兄のチャールズがくるまでは・・・・
全編ぞくぞくしどおしの怖い本。夢中で読んだ。

主人公メアリ・キャサリンの一人称で語られる静かな暮らし。
自然と、メアリに感情移入して読んでいこうとするんだけど、彼女はそれを安易に受け付けない
突き放した感じもある。それでも私は彼女に侵食されていき、チャールズが現れたころ、
ふと疑問を持つ。「おかしいのはチャールズなのか、それとも私、メアリなのか?」と。
姉とずっと二人で暮らしてきたメアリの視界は少し歪んでいて、庭にお守りと称して
木に本をかけてみたり、そういうことで自分たちと世界を保とうと懸命で、
でも彼女に侵食された自分は、それを異様とも思わず読んでいて、それにふと、怖くなる。

壮絶な過去をもつ家族に対する、村の人たちの仕打ちも怖いし、特に後半は集団暴力みたいになって
とりつかれたかのような彼らの姿はおぞましく思うし、そこを怖がるのも作品のクライマックスかなと
思ったりもしたんだけど。

私がとにかく怖かったのは、少女という人格の頑なさというか、彼女達の閉じた世界の中の、
美しいおぞましさというか。
我儘で残酷な少女がそこには美しく住んでいて、誰の侵入も受け付けず、
ただ、静かに暮らしている。その美しさがもたらす怖さ。
結局、ひたすら、私は姉妹が怖かったのだった。

どんなに世界を侵食されようと、家を壊されようとも、彼女達はやっぱり二人で、
美しく慎ましやかにいつまでも生きていくのだ。その永遠を思うと、ぞっとした。

短くてすぐに読める本だけど、心の奥の方に澱のように何か黒い渦が残る、強烈な読後感だった。

私にはこんなに残酷で美しい少女時代はなかったけれど。今もないけれど。
誰にでもあるとは思えないけれど。でも、女ならなんか読んでしまう、そんな本な気がする。

「すべての善人に読まれるべき、本の形をした怪物である」  桜庭一樹
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:41 | category: 海外・作家別サ行(その他の作家) |
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