本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「モンティニーの狼男爵」佐藤亜紀
モンティニーの狼男爵 (光文社文庫)
モンティニーの狼男爵 (光文社文庫)
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 500
  • 発売日: 2001/10
  • 売上ランキング: 5869
  • おすすめ度 5.0


佐藤亜紀の恋愛小説。というだけでものすごく気になる本だった。
佐藤亜紀と恋愛小説。
今まで読んだ「ミノタウロス」や「バルタザールの遍歴」など、退廃的で救いがなくて
どこかカッコいい佐藤亜紀のイメージと、甘ったるい恋愛小説のイメージは
あまりにかけ離れていたから、その組み合わせにはいたく興味を持った。
しかし読んでみてなるほどと思った。
一筋縄ではいかないのだった。
舞台はフランス革命前のフランスの田舎町。
人嫌いの男爵、狼を狩るのが得意な男爵が、あるとき嫁をもらうことになった。
放蕩坊主の叔父に都会のパリに連れて行かれ、尼僧院で女に紹介される。
女はドニーズといい、そして男爵は彼女を一目で愛したのだった。
そうして、二人の田舎町での慎ましやかな生活が始まるかに見えた、のだが・・・

男爵の回想で描かれる物語、語りに雰囲気があって時代がかっていて、
フランス革命のきな臭いにおいも漂わせていたので、
革命の時代に翻弄された一組の夫婦の悲恋なんかが描かれるのかなと思った、
私の予想は外れた。そんな月並みな話のはずないじゃないか。
話はもっと単純で、そしてもっとロマンティックだった。

不器用な男が妻の不実に嘆き、妻を懸命に愛するあまりの狂気を描いた、とか書いたら
それはそれでこの本の紹介にはなってると思うんだけど、それだけではない、
なんとも不思議で少し滑稽な世界が展開されていく。
とても切ないんだけど、切ないんだけどね、でもだんだん、切なさを通り越して
じわじわとおかしくなってくる、笑ってしまう、そんな展開なのだ。
ふう、全部書いてしまいたいけれど、楽しんでもらいたいからそれはやめておく。

ドニーズという妻の中に、女の姿がデフォルメ気味に描かれているような気がした。
あっさりといい男(でも中身のない男)に惚れてしまうドニーズ、
妊娠したら「あなたの子どもなんて欲しくない」といい、しかし子どもが生まれたら
夫を顧みなくなるドニーズ。
子どもが生まれたら父親は女達に追い出されてしまって、そこは女の世界になる。
滑稽なくらい放っておかれる夫。そして子を亡くした時の夫の不用意な一言で、
決定的な断絶が訪れる。デフォルメされて荒唐無稽な展開ながらも、
そこには一種普遍的な夫婦の姿が描かれているような気がした。
私はまだ、知らない世界だけれど。

ベタな展開なのかおかしな展開なのかも判然としない、一筋縄ではいかない
不思議なストーリーの行き着く先はどうだったかというと。
この物語のラストのロマンチックさはそこらの恋愛小説を凌駕していた。
なんてステキなんだろう。私は単純に、ただ単純にうっとりとしてしまって、
そしてこんな夫婦もいいな、とただ単純に思った。
二人とも、とってもかわいい、と思った。
どんな夫でも結局は受け入れることができる妻、それはもう、理屈じゃなくて。

いい恋愛小説を読んだなあ、という至福で最後はいっぱいになる、
とてもステキな本でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:08 | category: 作家別・さ行(佐藤亜紀) |
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