本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「『吾輩は猫である』殺人事件」奥泉光
『吾輩は猫である』殺人事件 (新潮文庫)
『吾輩は猫である』殺人事件 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 発売日: 1999/03
  • 売上ランキング: 245775
  • おすすめ度 4.0


苦沙弥先生宅で飼われていた、日本一有名な猫。「吾輩は猫である。名前はまだない。」
酔っ払って甕にはまって死んだはずの吾輩は、ふと目が覚めると船の中だった。
そしてその船は上海へ着く。
なんとか上海の世界にも慣れ、パブリックガーデンで出会った猫たち、
現地の猫の虎君、仏蘭西生まれの伯爵、ドイツの猫の将軍、美しいマダム達と
仲良くしていたのだが、そこにニュースが飛び込んできた。
苦沙弥先生殺害さる!
飼い主の死を悲しみ、仲間に話した吾輩だが、そこで現れたのはイギリスからきた猫、
ホームズとワトソン。皆で苦沙弥先生の死の謎に迫っていくうちに、
彼ら猫たちは途方もない冒険に巻き込まれる・・・
これは「吾輩は猫である」の続編です。続編を勝手に奥泉氏が書いちゃった、そういう本です。
「吾輩は猫である」を読んですぐ読むことを激しく薦めます!
私ったら、こんなに露骨にタイトルにあるというのに、別もんの話だろう、と思い込み、
漱石を読まずに読み始めてしまったのです。
もちろん「吾輩は猫である」は昔読んでるのだけど、かなり昔だからほとんど記憶が薄れてて、
そこに出てくる登場人物たちの個性的なエピソードとか忘れてるわけで。

これはこれとして一つの小説で、独立して楽しめるくらいに解説はしてくれてるし、
これだけ読んでもとっても面白かった、んだけど、だからこそ悔やまれるのです。
きっと続けて読んだらもんのすごく面白かったんだろうなあ!と思うので。
あー悔しい。

まず文体が漱石そのまんまです。私の薄れた記憶だけど、きっとそのまんまです。
続きとして読んでも一切違和感ないはずです。
で、「吾輩は猫である」の登場人物たちが、事件の容疑者として浮かびあがってくる。
そして登場もする。この勝手に書いた続編に、完全に原本が吸収されて、
一つの作品となってしまってる、その手腕に本当に驚かされました。
原本のエピソードのかなりの部分が伏線になっていたりするのですから。

そしてまた、「夢十夜」の第一夜が重要な伏線になっていて、
これ多分、全文そのまんま出てきてるんちゃうかな。
高校の教科書そのままやったと思う・・・。
つまりあれです、奥泉氏はきっと漱石オタクです。
そのオタクぶりを遺憾なく発揮した作品。オタク万歳!
「鳥類学者のファンタジア」でもジャズオタクの片鱗を見せてくれましたけど、
何事もそうやって突き詰めて作品にしちゃうのは、すばらしいと思う。

そこにさらに、あのホームズそっくりな猫のホームズが、ワトソンそっくりな猫のワトソンが
出てきたりして、猫たちの推理はさながら安楽椅子探偵のようで興味深く、
漱石は絶対書かないであろう続編が出来上がっていって、これがまた面白い。
勝手気ままなやりたい放題は奥泉氏の個性をこれまた発揮しています。
しかしただの探偵モノだと思ったら大間違いで、船に乗り込んでの冒険(猫たちの)を経て、
話はとんでもない方向に飛んでいきます。そっちなのか!全く意表をつかれます。

私は幸か不幸か、同じ奥泉氏の「鳥類学者のファンタジア」を読んでいたので、
猫に関する予想はそれなりにしていたんだけど、この意表をついた感じが
きっと面白いと思うので、あえて語るのはよします。
ま、意表つきすぎて、推理小説としては「それ、ありかよ」って展開になってて、
個人的にはとっても好きでした。そして結局真相は闇の中?みたいな。好きだなあ。

吾輩はそんな中でも、恋する三毛子さん(これも原本から登場してるんですよ)への
愛に目覚めたり、相変わらずの好奇心で冒険を経て成長したりしていて、
最後のほうにはなんだかスケールが大きくなっちゃって驚いちゃうけど、
彼らちっぽけな猫たちの壮大な愛や友情には、ちょっとほろっときてしまいました。
吾輩、見栄っ張りでいろいろ考えすぎるけど、それを含めてかわいいし、
とってもいい奴なんだよなあ。好きだなあ。
各国の猫キャラ(上海だからできたことだよね)たちもとっても個性豊かで、
最後にはみんな大好きになってました。天敵の狗(いぬ)まで含めていい感じで。

なんか、常識と思っていた世界が覆されていく、
「吾輩は猫である」に親しんでいた自分の常識が覆される快感、を
味わわせてもらいました。
奇想天外な続編と思って、是非「吾輩は猫である」とセットで!
私も近いうちに原本をまた読もうかな。
| comments(2) | trackbacks(0) | 01:11 | category: 作家別・あ行(奥泉光) |
コメント
大好きな一冊です。
奥泉さんの漱石オタクは有名らしいですね。
ところで、犯人は…あれ、誰でしたっけ??
| ふゆき | 2008/08/13 11:39 PM |

ふゆきさん
そうそう、犯人は、・・・・あれ?ですよね(笑)
| ざれこ | 2008/08/27 12:16 AM |

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