本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「夜に猫が身をひそめるところ−ミルリトン探偵局シリーズ1」吉田音
夜に猫が身をひそめるところ Think―ミルリトン探偵局シリーズ〈1〉 (ちくま文庫)
夜に猫が身をひそめるところ Think―ミルリトン探偵局シリーズ〈1〉 (ちくま文庫)
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 924
  • 発売日: 2006/12
  • 売上ランキング: 293653
  • おすすめ度 4.0


クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘、吉田浩美夫妻の娘、吉田音ちゃんは15歳。
お隣は学者であり探偵の円田さん。彼の家にふらっとやってくる黒猫は、
何かいつも思慮深い顔をしているから、Think=シンク、と名づけられている。
そのシンクが、出て行っては妙なものを持って帰ってくるのだ。
ボタン16個とか、光沢ビス、と書かれた紙とか、「箱舟」という映画のチラシとか。
円田さんと音ちゃんは、シンクが持ってくる妙なものを見ては、
その由来を推理することにした。名づけて「ミルリトン探偵局」。
ミルリトンとは、音ちゃんのお母さん曰く、「この世で一番美味しいお菓子らしい」けど、
誰も食べたことのない幻の?お菓子の名前である。
美味しいかどうか食べてないから誰にもわからないミルリトンのように、
シンクの持ち物の謎は解かれないまま、空想の世界へ持ち込まれる・・・
すごく面白かった。好き好きこの本。ほんまに好きな一冊になりました。
クラフト・エヴィング商會のお仕事だけあって、文庫本だけど写真が満載。
今回のテーマは水、だなあ。川の写真がとてもステキで、写真だけぼうっと
眺めていてもとても幸せ、そういう本です。
シンクの持ち物も写っているけれど、そのたたずまいまでが、なんだかいい。
釘とかボタンとかなのに、こうやって撮られるととてもステキなものに見える。
装丁からまず楽しめる1冊です。

物語もステキで、現実の音ちゃんの世界と、空想の世界が交互に訪れて、
その空想の物語のなかに、シンクが持ってきた謎の持ち物がさりげなく出てくる、
そういう構成なんだけれど。
その、中に入る物語たちはどんどんファンタジーめいてきて、
もちろんそれがシンクの持ってきたものの真相ではない、だろうけど、
そう思えたらステキだなあと思える物語たちで。
最後の短編などはいしいしんじ「みずうみ」を思い出させるような、
相当ファンタジー色が強い物語だったし。

謎は謎のままでいたほうが面白い、解けないからこそ、推理は、想像は
ずっと終わらず、世界が広がっていく。
そういう方向で作られた本に思えて、そのスタンスがとても好きだった。
すごく夢があって、なんか最近忘れていたような、わくわくする感情を、
思い出させてくれるような気がした。

ホルン奏者が出てくる物語が良かったなあ。テレビを見たくてたまらなくて、
でも持ってないんだよね。テレビを欲しがる様子がとてもかわいいの。
そこでシンクの持ち物が生きてくるわけだけど。
オーケストラでひたすら出番を待つホルンの人、音楽に身を任せるうちに
見えてくる、別の景色・・・オーケストラの音と一体になっているような
その文章が心地よくて、すごく幸せな気持ちになれたわ。

とにかくステキな本なので一度手にとって欲しいところだけど、
この本自体にも大きな謎が仕込まれている。
15歳の吉田音ちゃんが、本当にこれを書いたのか?
私はいきなり「違う」と推理した。だって15歳の女の子が、
いきなり「月光仮面みたい」なんて比喩を使うと思えないからさあ。
ま、これはネットでググれば答えはわかるけれど、あえて答えないことにする。
解けない謎は解けなくていいのだ。
なんでも調べたらすぐわかっちゃうって、ある意味つまらない世の中になったもんだよね。

もうひとつ気になるのが、どこまで本当かというところ。
音ちゃんと円田さんは、本当にシンクの持ち物をあーだこーだ推理する
「ミルリトン探偵局」を実際にやってるのかな?
それもこれも全部創作なのかな?
私は、シンクは是非本当にいてほしいな、と思うし、是非なんか変なものを
持って帰ってきていて欲しいなあ!とすごく思うのだった。
| comments(0) | trackbacks(1) | 15:58 | category: 作家別・や行(吉田篤弘・音) |
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夜に猫が身をひそめるところ Think ミルリトン探偵局シリーズ1
 大好きなクラフト・エヴィング商會の最新文庫は、『夜に猫が身をひそめるところ Think ミルリトン探偵局シリーズ1』と『世界でいちばん幸せな屋上 Bolero ミルリトン探偵局シリーズ2』の同時刊行。  これまでも、ちくま文庫の『クラウド・コレクター〈手帖版〉』
| 読書狂日記 | 2008/08/08 11:52 PM |
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