本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「号泣する準備はできていた」江國香織
号泣する準備はできていた (新潮文庫)
号泣する準備はできていた (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 420
  • 発売日: 2006/06
  • 売上ランキング: 89160
  • おすすめ度 3.0


江國さんを読むのは久しぶり。直木賞受賞作品を読んでいた流れで久々に手にとった。
いくつもの本当に短い短編が収録されている、江國さんらしい短編集で、まとまりがよくて、
小説としてうまいし、受賞も納得、ではあるけれど、江國さんの代表作ではないなあ。
相変わらず作家の代表作には直木賞ってもらえないよなあ、と思ってしまった。
読んでだいぶ経つので、もうあまり印象がない。感想書けずにちょっと困っている。
なんかすごく不思議なのだけど、若い頃は江國さんの描く物語を読んでいて
すごく胸にしみるというか、とても好きだった記憶があるんだけど、
年をとって30代になってさあこれからより江國さんの世界に共感できるはず、と
思う頃になって、好き好き、と思わなくなってきた。不思議だ。

昔はわりとおしゃれな印象で、ピュアとか透明とかそういうイメージだったけど、
今読んだら全然そんなこと思わない。さらっと書かれた中にうごめいているどろっとしたもの、
生活の澱というかよどみというか、そういうのが底にたゆたっていて、
表面だけ美しい上澄みのような、そういう小説を書いてるんだな。って、
最近やっと気づいたような気がする。それは私が年を重ねた証拠でもあるのかな。
だから、素直に好きとは言えなくなってきたのかな、と思う。

初恋を描いた「じゃこじゃこのビスケット」、甘酸っぱい初恋の思い出かと思ったら
なんだか生々しい。男の子が無免許で運転して、二人で海まで行くけれど、
車のクーラーは壊れていて異様に暑く、海もきれいじゃなくて、二人の関係も
どうもならなくて、美しくない初恋の風景。確かに、ドラマみたいに美しい青春なんて
現実じゃないんだけど、あまりに現実すぎて寂しくなった。でもその生々しさが、
私たちの思い出ともつながっていくような、そんな短編だった。

他の短編は、夫婦生活の途中とか終わりかけとか、ただただ続いていく生活が
淡々と描かれていくような短編が多い。
ああ毎日こんな感じで過ぎていくんだなあ、というあきらめのようなものを持ちつつ、
でも少し諦めきれない程度には登場人物たちは男性であり女性であり、
それぞれの情熱はまだくすぶってはいる。でも生活は容赦なく淡々と続く。
だから、幸せな二人が描かれていても、不幸な二人が描かれていても、
妻が浮気し夫が浮気していても、修羅場でも諦めでも、
どんなテイストでも、なんとなく少し寂しく、哀しい。そういう物語たちだった。

「こまつま」なんて短編は日常のなかの日常、で、こまねずみみたいに働く妻、で
こまつま、なんて呼ばれている主婦が、デパートに行くだけの話。
主婦っぽいことをさんざんしながら、昔の男を少し思い出して、
少しステキなバーでお酒を飲んでいるそんな主婦の日常は、設定はすごく
生々しいのに、こんな主婦いないよね、っていう妙な違和感もあって。
おばちゃんはもっと開き直っているような気もするけど、私が大阪のおばちゃん、と
思っている人たちにも、こんな部分があるのかなあと思うと怖くもある。
でもどれだけかしましく図々しくなっても、やっぱりいつまでも女は女なんだろうな。
怖いな。なんか。

「そこなう」という話も印象的だった。長い間不倫をしていて、男がやっと
妻と別れて、嬉しいはずの二人の旅行で、些細な事実の発覚から決定的に何かが
そこなわれる話。ああ、確かに二人は元には戻れない、でも彼らはこれから、
きっと夫婦として生活をしていく。何かを失ったまま。すごく短い短編なのに、
先行きが見えてしまうその怖さをすごく思った。
些細なことで戻れなくなることっていうのは、確かにある。
あのとき、言わなければよかったのにね。みたいなことが。

なんつうか人間のつきあいというか結婚というか、長いこと続く関係性というのは
やっぱり怖いなあ。安心感もあるけれど、少しずつ発酵してどろどろとしていくような、
そういう感情もあると思う。仲が良かったり、愛し合ってたりすれば余計。
難しいな、幸せって。ずーっと新鮮な気持ちじゃいられないものね。

そういう、倦んだ人たちの姿が描かれている短編集だと思った。
そのわりには洗練されていてお洒落なのが、やっぱり最近少し違和感に思う。
江國さん、すごく好きだったし今も好きだけど、ちょっと読むのが怖くなった。
| comments(0) | trackbacks(0) | 19:47 | category: 作家別・あ行(江國香織) |
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