本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「後宮小説」酒見賢一
後宮小説 (新潮文庫)
後宮小説 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 500
  • 発売日: 1993/04
  • 売上ランキング: 28538
  • おすすめ度 4.5


第一回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、酒見賢一を世に送り出した作品。
これが第一回目の日本ファンタジーノベル大賞の受賞作だったことが、
その後のファンタジーノベル大賞の質の高さと幅広さ、を決定付けていると思う。
って解説にも書いていたしよく言われていることだけれど、読んで改めて思った。
ファンタジーノベル大賞作品には気に入った作品がたくさんあるし、
そこから輩出された作家さんでも好きな人はたくさんいる。森見登美彦とか・・・
酒見賢一のおかげ、そしてこの作品を選んだ選考委員のおかげでもある。
でも、この作品はすごい作品だけど、選ぶのはある意味勇気が要ったと思うわー。
さて後宮小説。素乾国の後宮に入り、正妃となった銀河の荒唐無稽な物語。
酒見氏のデビュー作だけれど、私は既に酒見氏のその後の小説、「泣き虫弱虫諸葛孔明」とか、
「陋巷に在り」とか読んでるから、中国史を題材に酒見氏が好き勝手やってることを知ってる。
だからさあ、最後までおかしいなあ、こんな国きいたことないなあと思いながらも、
この話が史実に基づいてるって思いこんでたんだけどさ・・・・すっかり騙されたわ。

酒見氏の文章はメタというか、司馬遼太郎がふざけて書いてます、的な書き方なので、
著者が調べたらこうだったとか、後世の学者がこう言ってるとか、遺跡を発掘した海外の研究者が
驚いたエピソードがある、といったことがつらつらと書かれてるわけです。参考文献とか・・・。
それがいつものスタイルなんだけど、今回、架空の国を作ったというのに、相変わらずそういうことを
がんがん書いてくれちゃってるので、もうすっかりだまされちゃうわけです。
漢文の文章を引用したりしちゃうのよ(あとがき読んでると文法間違ってるらしいけど、わかんないし)
そこまでやるか!ってのが見事でね。すごく面白かった。

で、史実を基にしていようが架空だろうが、むちゃくちゃなストーリー展開は
いつものことで、それがまた魅力でもあります。

その架空の、非常に中国に似た国では、腹上死した皇帝がいたらしい。
腹上死だから腹帝などとあとで呼ばれるようになった皇帝の話が最初に語られる。
私もその時点で嘘に気づけよ、ありえへんやろ、腹帝って。と思うけどまあ置いておいて。

腹上死といえば、余談だが、大学のとき、男友達が大食いの友達に、
「お前そんなに食ってたら腹上死するぞ」と大声で言ってしまい、
伝説をひとつ作っていた。あまり知らない言葉を使うのはやめたほうがいい。

ま、腹上死の話はそのくらいにして。
で、その国では、新帝を擁立するにあたり、後宮のメンバーも新しく集めることになった。
一農村に住んでいる銀河という変な名前の少女は、
後宮では「三食昼寝つきで退屈しない」と聞き、後宮に志願。
お行儀を一から教育されてもちっとも直らないまま、後宮の入り口の変なトンネルをくぐり、仮宮へ。
個性的な同部屋の女たちとああだこうだ喧嘩しながら過ごすが、やがて女大学に入り、
そこで彼女たちは房中術を学ぶことになる。
房中術とは、後宮の女性が身につけておかねばならない、性の秘儀の数々であった。
呑気に銀河たちがそんな授業を受けている間に、あるチンピラが退屈しのぎに乱を起こして、
都にだらだらと押し寄せてきていた・・・・。後宮の運命、銀河の運命やいかに。

あまりにエロすぎる題材なのだが酒見賢一にかかるとこれがちっともエロくない。
女大学のあたり、同居人たちで自習をしてるシーンとかえらいことになってるけどさ、とにかく笑える。

角先生の教えは後宮哲学といえるようなもの。真理は女の子宮から生まれる。そう先生は、銀河に教える。
それが房中術の極みであると。なんかそういう教えが一本とおってるから、エロさがないのかもしれないな。
子どもを産み、真理を作るための崇高な儀式としての性の奥義なのだから。
なんか女として、そういうテーマの本を読むのはうれしいし、つい崇高な気持ちにもなってしまう。
ま、子ども産めるかどうかは置いておいてね。

何事も問い詰めずにはいられない、あっけらかんとした性格の銀河が後宮なんていう
どろどろした世界に入ることで起こるギャップがまた面白いなあと読む。
何かに似てるなーと思ったら今年の大河ドラマ「篤姫」と通じるところがあるなあ。

皇帝の出現もおお、って感じで私は驚いたし(自分、ちょっとは気づけよ、とまた突っ込みはしたが)、
帝と、まだ子どもも産める体ではない銀河とのちょっとした恋物語も目が離せず、
ラストまでひっぱってくれた。やっぱり女は強いな、とうれしくなる作品だ。

チンピラが乱を起こすんだけどその描写も興味深い。退屈だから、と蜂起してしまうチンピラ、
そしてその参謀の、渾沌というあだなの男。彼は本当に勘で、行き当たりばったりで行動していて
本当に混沌とした人物で、むちゃくちゃだけど、でも変に魅力的でもあった。
でもさあ、戦争なんてしょせん、つまんない動機ではじまっちゃうのかもしれないなあ、
なんかそんな皮肉めいたものも感じたりした。

酒見氏のおもしろエキスがぎゅっと詰まったような痛快な作品。入門編にすごくオススメ。
アニメ化されてるってんだから驚き。房中術のくだりは全部カットされて、
違う話になってんだろうなーと思う(子どもに聞かせられる話じゃないよ!)けど、
銀河の大活躍を映像で見るのも楽しそうだなあ。

雲のように風のように
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| comments(6) | trackbacks(4) | 21:04 | category: 作家別・さ行(酒見賢一) |
コメント
アニメ化されてるんですか?びっくり!!
しかも、さわやかなタイトル(笑)。
| くまま | 2008/07/03 8:15 AM |

あ、「雲のように風のように」だー。なつかしい。
小学校の頃に観て、妙に好きだったのですが、
どういう内容だったのかを理解したのはつい最近のことです(笑)
子供ながらにコリューンが好きでした。
ついでに言うと、ジブリアニメだと思ってました。

DVD出てますよ!ぜひ!(回し者ではありません笑)
| みさっち | 2008/07/03 11:25 AM |

こちらでははじめまして。
小学生の頃「雲のように風のように」を見ておもしろかったので
「後宮小説」も読んだんですが、小学生には刺激的過ぎました(汗)
しかも小学校の図書室に置く本ではないような気が・・・。
アニメはさわやかで同じくジブリアニメだと思ってました。
| コマメ | 2008/07/03 4:19 PM |

くままさん
そう、爽やかにアニメ化されてるようですよ!(笑)

みさっちさん
ジブリっぽいですよねえ確かに。コリューンは読んでてもステキ、と思いましたからきっとアニメでもステキなはずですわ。DVD借りてみようかなあ(買わないのか。笑)

コマメさん
あちゃー、小学生でこれ読んじゃいましたか・・・・(笑)アニメ化でいくら内容をソフトにするといっても、つい本も読んでしまう小学生にも配慮してほしいところですよね!っていうか置いてある図書室がちょっとすごいなあ・・・。
| ざれこ | 2008/07/07 10:27 PM |

こんにちは。
アニメでは「エロ」部分はカットされて、女性の哲学的な部分が描かれていて、新皇帝(コリューンでしたっけ?)の妃選びなどが伏線で描かれていましたね。
なんか銀河の奔放な性格の印象が強すぎて、「エロ」部分がだいぶ薄い。
もう一度観てみようかな。
| 李博 | 2008/07/12 3:59 PM |

第24回受賞作は虫に虐げられる人間のはなし。

最近、ファンタジー大賞の作品にはまってしまって、たどり着きました。
第1回受賞作ですか!。この作品から始まったんですね。
書評を読ませて頂きましたが、エロとかヌキにして面白そうです。
ファンタジーって世界は広いですね。

そもそもはまったきっかけになった作品が、関俊介さん。
ワーカー改め「絶対服従者」。
虫たちの気持ち悪いファンタジーで何とも・・・。
ちなみにあんまり作者情報がないのですが、妙に詳しいサイトが
見つかっちゃいました。
http://www.birthday-energy.co.jp/
結構ご苦労されたみたいですね。
妙に動き回るとダメそうなので、作家一筋で極められるのか
試されるそうです。
ちなみに索引を見たら、いろんな作家さんの記事にも行き着きました。
それらも結構興味深いかも。
| ふたば | 2013/01/30 11:25 AM |

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